吃音の病院を茨城で探すには|何科・言語聴覚士・つくばの窓口

目次

「茨城県内に、吃音を診てもらえる病院はあるのか」「そもそも何科にかかればいいのか」「つくばには吃音に詳しい人がいると聞いたけれど、そこで診てもらえるのか」——調べ始めても出てくるのは、診療科の一覧を並べた病院のデータベースばかりです。県の名前を添えても結果は同じで、そこに「吃音を診ます」と書いてあるページはなかなか見つかりません。水戸からも、つくばからも、県北や鹿行から出るとなればなおさら、最初の一本の電話は遠くなります。

この記事は、国立障害者リハビリテーションセンター(幼児吃音臨床ガイドラインを作った研究班と、発達障害者支援センターの全国一覧を公開している発達障害情報・支援センター)、日本言語聴覚士協会、全国言友会連絡協議会、日本吃音・流暢性障害学会、金沢大学の研究室が公開している吃音ポータルサイトの資料から、茨城で辿れる入口を順番に並べます。何科にかかるのか、看板が無い病院をどう探すのか、電話で何を聞くのか。そして、茨城県言語聴覚士会・茨城言友会・県内に2か所ある公的な相談窓口という、公開資料に実際に名前が書かれている行き先を挙げます。書かれていないことは「書かれていない」と言います。個別の病院名は挙げません。

ソンタクマン(toVoice 運営)
吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。特定の団体や施設をおすすめするものでもありません。ここに挙げた名前・所在地・日程は、いずれも公開資料を取得した時点の記載です。出かける前、電話をかける前に、必ず各団体・施設の案内でご確認ください。

まず結論から

  • 「吃音外来」という看板で探すと、茨城では行き先が見つかりにくくなります。吃音は、日本言語聴覚士協会が「ことばの障害」に含めている問題で、言語聴覚士(聞こえ・ことば・飲み込みの困りごとを扱う国家資格の専門職)は主に病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などのリハビリテーションのスタッフとして勤務している場合が多い、とされています。つまり看板が無くても、吃音を診る人のいる病院はありえます。
  • ただし、全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではありませんだから病院等に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会・各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内されています。茨城でその「都道府県の言語聴覚士会」にあたるのは、協会の一覧にある茨城県言語聴覚士会です。
  • 就学前の子どもは、吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する発達や言語の相談室、地域の児童発達支援センターが窓口として挙げられています。近隣の施設が分からない場合は地元の保健センターか各都道府県の言語聴覚士会に問い合わせ、それでも見つからなければ日本言語聴覚士協会に問い合わせる、という順番が示されています。就学後の子どもと中高生は、通っている学校か地域の教育委員会に相談すると、その地域の学校にある「ことばの教室」を紹介してもらえます。
  • 公的な相談窓口は、発達障害者支援センターの全国一覧の茨城県の欄に2か所載っています——茨城県発達障害者支援センター「あい」(東茨城郡茨城町小堤285番地5・社会福祉法人 梅の里内)と、「COLORSつくば」(つくば市高崎802-1・社会福祉法人同仁会 つくば同仁会子どもセンター内)です(2026年8月30日取得時点)。当事者と保護者の会は、全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の関東ブロックに茨城言友会が載っています。
  • つくばは研究と学びの土地ですが、それと診てもらえることは別です。日本吃音・流暢性障害学会の第11回大会は2023年10月21日・22日につくばカピオ(つくば市竹園1-10-1)で開かれました。ただしこの学会は、研究の発展と、研究・医療・福祉・当事者の活動に関わる者同士の交流を目的とする団体で、診療をする場所ではありません。

ただし、ここに挙げた名前・所在地・日程は、いずれも各サイトを取得した時点(2026年8月)の記載です。一覧に名前が載っていることは、いま受け付けているか、いま活動しているか、吃音を診ているかを保証しません。行くと決めたら、必ずその団体・施設の案内を開き直し、「吃音を診ていますか」を先に確かめてください。

茨城に「吃音外来」はあるのか——看板で探すと、見つからない

県内の病院の名前を一つずつ確かめていくと、途中で気づくことがあります。病院のデータベースには診療科は載っていても、その病院が吃音を診るかどうかは書かれていません。厚生労働省が運営する公的な医療機関の案内も、利用者の評判を集めたサイトも、載せているのは科の名前までです。だから「載っていた=診てもらえる」でも「載っていない=診ていない」でもない。ここが、地名を添えて病院を探す人がいちばん時間を失うところです。

看板の有無と、実際に相談できるかどうかは別。それがどれくらい人生の長さを変えるかを、ある成人当事者が書き残しています。

30代前半のときに通える範囲の病院へ吃音外来が開設したと書いている成人当事者(note・名義「吃音楽」。氏名と住んでいる地域は公開されておらず、茨城の方の記録ではありません)

だが30代前半の時に自分の通える範囲の病院に吃音外来が開設する! という奇跡は起こった!

開設!?!?!?!? 吃音で医療(専門家)にかかれる!?!?!?!?

それから人生で初めて「言語聴覚士」という専門職に吃音のことを相談した 相談することができた。相談できる相手がいることが嬉しかった

三十年を超えて、この人は一度も専門職に吃音のことを話していませんでした。話せなかったのは制度の外にいたからではありません。本人は、成人でも百人に一人にあるとされる発話障害でありながら、自分は三十年以上医療にかかれなかった、吃音で医療にかかることがハードルの高いことだと改めて実感した、と書いています。転機は自分が変わったことではなく、通える距離の病院に外来ができたことでした。そして本人は、通院して完治したわけではないとも書き添えています。それでも、相談できる専門家が近くにいるということがこんなにも安心感につながるのかと実感した、と続きます。距離が変わっただけで、三十年が動いた。公的な資料も、この距離の問題を正面から認めています。

出典: 吃音外来を「ありがたい」と思った違和感の正体(note)(台帳: V0170)

国立障害者リハビリテーションセンターが発行する広報誌は、日本の現状をこう書いています。世界的には2000年前後から研究が急速に進んで先進国では幼児の吃音は早期治療が標準になっているのに、日本では、吃音になる幼児の十分の一だけが医療機関を受診するとしても全員を診られるだけの人数の専門家がいない。幼児の吃音についてはすでに医療崩壊状態と言ってもいいくらいだ、と。相談できる人が近くにいないのは、茨城だけの事情ではないということです。

そのうえで、大人が茨城で探すときの道筋は次のようになります。吃音は日本言語聴覚士協会が「ことばの障害」に含めている問題で、言語聴覚士は主に病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などのリハビリテーションのスタッフとして勤務している場合が多いとされています。ただし、言語聴覚士の取り扱う業務は多岐にわたるため、必ずしも全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではありません。そこで吃音ポータルサイトは、あらかじめ病院等に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会・各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内しています。茨城では、協会の都道府県士会一覧に載っている茨城県言語聴覚士会がその宛先です。何科にかかるかという一般論は「吃音は何科・どの病院?」に、どの言語聴覚士を選ぶかは吃音と言語聴覚士の記事にまとめています。

名前のついた専門外来として、この記事の資料にあるのは県外の病院です。埼玉県所沢市にある国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来は、18歳以上の方(ただし高校生は「小児吃音外来」で対応)の吃音の相談を受けており、初診日には問診票の記入と診察、吃音の検査を行うと案内されています。初診専用の外来で、予約センターで予約を取ってから受診する完全予約制です。同じページには、現在、受診希望の方が多く予約が取りにくくなっております、とも書かれています。県外の外来は、最初の一本の電話の先ではなく、地元で経過を見てもらったあとに紹介してもらう先として置くほうが無理がありません(その理由は後の「茨城で、最初の一本の電話をどこにかけ、何を聞くか」で扱います)。大学病院の外来がどんな入口の形をしているかは九州大学の吃音外来の記事に、通える範囲に無いときの選択肢は「吃音の相談先が近くにない」オンライン吃音相談の記事にあります。

子どもの場合——最初の電話は、病院ではなく市の窓口から

子どもの吃音で保護者がぶつかるのは「窓口が無い」ことではなく、「どの窓口が自分の子の入口なのか分からない」ことです。市役所、保健センター、園、小児科、耳鼻咽喉科、小学校。名前はどれも聞いたことがあるのに、どこから始めればいいのかが見えません。実際にその順番を辿った保護者の記録を見ると、最初の一本は病院ではありませんでした。

二歳半で息子の吃音に気づいた保護者(個人ブログ「うさ子の記録」・名義「うさ子」。住んでいる地域は公開されておらず、茨城の方の記録ではありません)

「まま、あ・あ・あ・あのね!」という感じで話すことが増えてきました。元々吃音というのを知っていたのもあり、早めに何かできることがあればと思い、すぐに市の子育て相談へ電話をしてみました。

保健師と話すことができ、住んでるところから一番近い子どもの言語訓練をしてくれる病院を紹介してくれました。

病院へ連絡し吃音のための言語訓練について相談したいことを伝えると、まずは耳鼻咽喉科へ受診というかたちで予約となりました。

三行のあいだに、窓口が三つ移っています。市の子育て相談、保健師、そして病院。保護者は病院の名前を自分で探し当てたのではなく、電話の向こうにいた保健師から一番近い場所を教えてもらっています。診療科が耳鼻咽喉科だったことも、本人が選んだのではなく病院側が決めた入口でした。この記録では、その先で年配の医師から、二歳半という時期はまだ言語訓練をするには早すぎるが受けたければ受けることも可能だと言われ、この年頃の吃音であれば一時的なものかもしれないので様子見でもいいと思うと伝えられます。保護者は様子見をする判断をし、三歳半で、吃音が治ることも悪化することもないまま、言語訓練に通うことに決めました。公的な資料は、この「様子見」の期間に何をするのかまで書いています。

出典: 吃音症(どもり症)の我が子との関わり方~現在の様子(うさ子の記録)(台帳: V0284)

幼児吃音臨床ガイドラインは、相談先の種類をこう挙げています。幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する発達や言語の相談室。そして地域の児童発達支援センター(就学前の子どもの発達を支援する施設)には言語聴覚士が在籍する場合が多く、吃音の相談窓口となっている、とされています。就学後は小学校の通級指導教室である「ことばの教室」——在籍する学級とは別に、ことばの指導を受けに通う教室です——などが指導にあたり、就学前相談を受けている地域もあります。保健センター等でも相談対応をしているところがあり、地域の言語聴覚士の相談窓口を把握している場合もある、とも書かれています。

そのうえで順番が示されています。治療あるいは相談できる近隣の施設が分からない場合は、地元の保健センターに問い合わせるか、各都道府県の言語聴覚士会に問い合わせるとよい。これらに問い合わせても近隣の相談機関が見つからない場合は、日本言語聴覚士協会に問い合わせることを勧める——というのが、ガイドラインの示す三段の手順です。茨城では、最初の二つが地元の保健センターと茨城県言語聴覚士会にあたります。公立学校の言語障害通級指導教室(ことばの教室)がどの小学校にあるか、また幼児の吃音の相談に対応しているかどうかについては、地元の小学校あるいは各地域の教育委員会に問い合わせるとよい、とも書かれています。子どもの吃音を診る外来で初診に何が行われるかは子どもの吃音外来の記事にまとめました。

「様子を見ましょう」と言われて終わったときのために、ガイドラインが経過観察の中身を書いていることも知っておいてください。積極的な介入を始めるまでのあいだは、保護者が過度に心配することがないように資料を提供しながら、適切な吃音の知識や家庭・集団での望ましい関わり方を伝え、定期的な面談で経過を見る。その期間は家庭での日々の吃音症状を記録してもらい、面談ではその記録をもとに症状の変化を評価する。1年経過する中で悪化が認められる場合は言語聴覚士につなぐ——それが中身です。同じガイドラインは、「様子を見ましょう」というだけでなく、積極的な助言指導を受けられる専門機関につなげることが大切だ、とも書いています。

「電話で聞いてください」と言われても——その電話がいちばん難しい

ここまで並べてきた探し方は、どれも最後は一本の電話に着地します。ところが吃音のある人にとって、電話はいちばん通りにくい入口です。相手の顔が見えず、待ってもらえるかどうかも分からず、名乗るところから始まる。相談先を探す段階でいちばん重い関門が、相談する方法そのものだという逆転が起きます。

首都圏で吃音外来のある病院を探して初診を受けた20代会社員(個人ブログ・名義 Kate。東京在住と書いており、茨城の方の記録ではありません)

多くの病院は、電話で予約を受け付けています。 吃音持ちの人にとって、電話はなるべく避けたい気持ちはわかります。私もできるだけ電話は避けています。

北里大学病院の吃音外来は、メールでの受付に対応しています。 (⇒とてもありがたい!!!)

この人が病院を選んだ基準は、腕でも評判でもありませんでした。挙げているのは、初診の予約が電話ではなくメールで受け付けられること、自宅からそこまで遠くなかったこと、言語聴覚士が複数人在籍していること、対応している時間帯が長いこと。首都圏で吃音外来に対応している病院を調べて、大きい病院は2件だったとも書いています。受診した日の料金は8,810円で、内訳は治療費3,310円と保険外料金5,500円。他の病院からの紹介状が無く受診したため、別途保険適用外の5,500円がかかったと記し、紹介状があれば治療費のみでの診察が可能だ、5,500円は初回のみだ、と続けています。そして記事の最後に、吃音外来を受け付けている病院は少ない、地方はもっと少ない、と書いています。金額も予約の方法も、この人が受けた一つの施設の一回分の記録であって、どこでも同じではありません。

出典: 【吃音治療】北里大学病院に行ってきました|予約方法や実際のトレーニングの流れについて解説(Kateブログ)(台帳: V0359)

予約の入口の形が施設ごとに違うことは、公的な資料からも読み取れます。国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来は、予約センターで予約を取った上で受診する形で、初診日には問診票の記入と診察、吃音の検査を行うと案内されています。問診票は書式が公開されていて、印刷して受診日の前に記入を済ませて持参できること、印刷できない場合は当日その場で記載することになり30分程度かかることも書かれています。つまり、話す量を減らす方法は用意されている場合があります。書けるものは先に書いて持っていく、という進め方です。

紹介状についても同じことが言えます。国立障害者リハビリテーションセンター病院の案内には、紹介状をお持ちの場合はそちらもお持ちください、と書かれています。紹介状は地元でかかった医師から次の医師へ渡してもらう書類なので、茨城で最初に相談した医療機関が出し先になります。幼児吃音臨床ガイドラインが提案している分担——慣れていない施設が大まかな重症度の判断と数か月ごとの経過観察を担い、重い場合に対応できる施設と分ける——も、地元から専門施設へつなぐ形を前提にしています。電話が苦しいなら、まず一番近い窓口に一度かかっておくことが、その先の橋渡しを用意することにもなります。オンラインで受けられる相談の範囲はオンライン吃音相談の記事にまとめました。そして、つながった電話で何を聞けばいいのかは、この記事の後半(「茨城で、最初の一本の電話をどこにかけ、何を聞くか」)に三つだけ挙げてあります。

つくばで探すと何が出てくるか——研究の土地と、診てもらう場所は別

茨城で吃音の行き先を探していると、どこかで「つくば」に行き当たります。実際、つくばは吃音をめぐる集まりが何度も開かれてきた土地です。日本吃音・流暢性障害学会の第11回大会は、2023年10月21日・22日に、つくばカピオ(茨城県つくば市竹園1-10-1)で開かれました。同じ2日間には、吃音のある若者が接客する「注文に時間がかかるカフェ」も、学会の主催でつくば市で開かれています。

ただし、ここを取り違えないでください。この学会は、吃音及び流暢性障害(クラタリングなど)の研究の発展と、これらの障害の研究や医療・福祉・セルフヘルプグループ活動などに関わる者同士の相互交流を図ることを目的とした学会です。掲げている目的は、研究を通じて臨床の進歩・発展を図り、吃音・流暢性障害のある人々の生活の質の向上を目指すことで、事業は学術集会の開催、研究・調査と知識の普及、国内外の関連団体相互の連携の促進、機関誌の発行です。研究や交流の団体であって、診療を行う機関ではありません。大会が開かれた土地だからといって、そこに吃音の外来があることにはなりません。学会と当事者の団体の違いは吃音学会の記事に、筑波大学が吃音について何を調べてきたかは筑波大学の吃音研究の記事にまとめています(そちらでも、参照した範囲に一般の方向けの相談窓口の案内は見つかっていません)。

一方で、つくばに「相談できる公的な窓口」があるのは事実です。国立障害者リハビリテーションセンターが公開している発達障害者支援センターの全国一覧では、茨城県の欄に2か所が並んでいます。茨城県発達障害者支援センター「あい」(〒311-3131 東茨城郡茨城町小堤285番地5・社会福祉法人 梅の里内)と、茨城県発達障害者支援センター「COLORSつくば」(〒300-1245 つくば市高崎802-1・社会福祉法人同仁会 つくば同仁会子どもセンター内)です(2026年8月30日取得時点)。同じ関東ブロックで、栃木県・群馬県のように県の窓口が1か所だけの県がある中で、茨城県は県内に2か所を持っています。一覧の冒頭には、人口規模・面積・交通アクセス・既存の地域資源の有無や自治体内の支援体制の整備状況などによってセンターの事業内容は異なるので、初めて利用する方・支援内容を詳しく知りたい方は、まず住んでいる地域を担当している発達障害者支援センターに問い合わせるように、と書かれています。

ただし、この窓口にも読み方があります。ガイドラインは、発達性吃音は発達障害者支援法に規定される発達障害であるので全国の発達障害者支援センターに相談することも可能だが、必ずしも吃音に関する情報が集約されていないことがある、と断っています。吃音に他の発達障害の併存が疑われた場合は、発達障害者支援センターで適切な相談・医療機関を紹介してもらえるはずである、とも書かれています。学校以外で吃音の相談を受け入れている専門機関については各都道府県にある言語聴覚士会や発達障害者支援センターなどに問い合わせてみるとよい、という案内は、国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターも出しています。

もうひとつ、茨城がすでに関わっている調べものがあります。3歳児健診の場を使って日本の3歳児の吃音を調べた研究では、著者5人の所属機関がある福岡・石川・茨城・神奈川・徳島の5県の市町村の保健センターに協力が依頼され、15か所の健診会場が加わって、2016年7月から2018年2月まで調査が行われました。解析の対象になった1,988人のうち、健診の時点で吃音がある子は約6.5%、過去にあった子を含めた3歳までの累積では約8.9%と推定されています。つまり茨城でも、3歳児健診は吃音が拾われる場になっています。子どもの入口として保健センターが先に来るのは、この意味でも理にかなっています。

茨城で、最初の一本の電話をどこにかけ、何を聞くか

ここまでの入口を、「最初にかける先」の形に並べ直します。固有の施設名を先に探すのではなく、種類から辿る順番です。窓口の名前や日程は変わりやすいので、名前を覚えるより辿り方を持っておくほうが長持ちします。

  1. 大人のこと— 病院に直接問い合わせるか、茨城県言語聴覚士会・日本言語聴覚士協会に尋ねます。「吃音外来」の看板が無くても、リハビリテーション科や耳鼻咽喉科に吃音を診る言語聴覚士がいることはあります。
  2. 就学前の子どものこと— 言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する相談室、地域の児童発達支援センターが挙げられています。近隣が分からなければ、地元の保健センター → 茨城県言語聴覚士会 → 日本言語聴覚士協会の順です。
  3. 小学生・中学生・高校生のこと— 通っている学校か、地域の教育委員会。その地域の学校に設置されている「ことばの教室」などを紹介してもらえます。どの小学校にあるかも、地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせます。中学校にも「ことばの教室」は少しずつ設置されてきている、とされています。
  4. 公的な相談窓口— 発達障害者支援センターの全国一覧の茨城県の欄にある2か所(茨城町と、つくば市)。まず住んでいる地域を担当しているセンターへ、と一覧の冒頭に書かれています。
  5. 当事者と保護者の会— 全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の関東ブロックに茨城言友会が載っています。全国組織は、お子さんの吃音への対応方法の確認や医療機関の紹介といった個別の相談には原則として応じることができないとし、希望する場合は近くの加盟団体まで連絡してほしいと明記しているので、連絡先は茨城の団体のほうです。例会の日時や会場はこの記事の資料に無いので、団体の案内で確かめてください。

そして、電話がつながったときに何を聞くか。聞くべきことは三つに絞れます。吃音を診ていますか。言語聴覚士はいますか。何歳から診てもらえますか。一つめが要るのは、全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではないからです。三つめが要るのは、年齢で受け入れ先が分かれるからで、たとえば国立障害者リハビリテーションセンター病院では18歳以上が成人の外来、高校生は小児の外来という線引きになっています。

茨城で吃音のことを相談するときに、公的な資料が示している入口を順に並べた流れ図。1 茨城で吃音のことを相談したい(窓口の名前より、種類から辿る)。2 就学前の子どもか。はいなら 3 言語聴覚士のいる病院や児童発達支援センターなどへ。分からなければ、地元の保健センター→茨城県言語聴覚士会→日本言語聴覚士協会の順。いいえなら 4 小学生・中学生・高校生か。はいなら 5 通っている学校か、地域の教育委員会へ。その地域の学校にある「ことばの教室」などを紹介してもらえる。いいえ(大人)なら 6 茨城県言語聴覚士会か、病院へ直接。全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではない。7 公的な窓口は県内に2か所。まず住んでいる地域を担当するセンターへ。茨城県の欄は「あい」と「COLORSつくば」。8 同じ立場の人と話せる場は、加盟団体一覧の関東ブロックに茨城言友会。個別の相談は地域の団体へ。9 どの窓口でも、先に「吃音を診ていますか」と聞く。あらかじめ病院等に直接問い合わせるか、言語聴覚士会に尋ねるよう案内されている
図1: 年齢と用件で、最初に開ける入口が変わる。出典: 幼児吃音臨床ガイドライン(第1版)2021 Q23/国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「ライフステージ別Q&A Q5」/吃音ポータルサイト「成人の方 ─ 相談や支援」/日本言語聴覚士協会「都道府県士会一覧」/発達障害者支援センター・一覧/全国言友会連絡協議会「加盟団体一覧」.

なぜ窓口ごとに答えが違うのか、という疑問にもガイドラインが答えています。現時点では吃音の専門家の認証システムや登録システムは日本にはなく、相談に対応している施設の種類は多いものの、吃音に対応している(あるいはしていない)ことを明示していない場合もしばしばあって分かりにくい。このため、上に挙げた問い合わせ先でも必ずしも把握しきれていない場合があり、課題となっている——そう書かれています。相談対応機関の多くは治療には対応できないことも多いことに留意する必要がある、という注意もあります。「茨城には無い」と見える理由の一部は、この分かりにくさのほうにあります。

さらにガイドラインは、専門家の不足を前提にした分担の形まで提案しています。吃音を専門としていない施設での経過観察はしばしば放置も同然となる場合があり、その間は保護者の不安が解消されず、重症化したり、治療を受けないままに就学することになってしまう可能性も無視できない。一方で、吃音の専門家がいる機関では症状の軽重に関わらず多くの患児が来るため、初診までに数か月の待機になってしまうことが多い。だから、治療対応に慣れていない施設でも大まかな重症度の判断と軽度の場合の比較的低頻度(数か月ごと)の経過観察ができるように情報を提供し、重度の症例にも対応できる施設とそうでない施設を分けて分担体制を構築する——というのがその中身です。地元で経過を見てもらいながら記録をつけ、必要になったときに専門の施設へつないでもらう。県外の外来は、最初の一本の電話の先ではなく、その先に置くほうがこの分担に沿います。

電話をかけ直すたびに、始まった時期から今までを全部話し直すことになったら、それだけで気力が尽きます。専門家の合意で作られた評価の指針は、年齢を問わず包括的な評価に共通する中核領域として、背景の情報、ことばと言語と気質の発達、話し方の流暢さと吃音の出方、本人の反応、周囲の反応、生活への支障の六つを挙げています。相談を受ける側が見ようとしているのがこの六つなら、いつごろ始まったか、これまでどこに相談して何と言われたか、どんな場面でどのくらい出るかを、この順に一枚にまとめておけば、何回目の電話でも最初から話し直さずに済みます。ガイドラインも、経過観察のあいだは家庭での日々の吃音症状を記録してもらい、面談ではその記録をもとに変化を評価する、としています。何を持っていくかの詳しい話は吃音の相談先の記事にまとめています。

茨城で病院を探すときに陥りがちな3つの落とし穴

落とし穴1 − 病院のデータベースに載っていることを、吃音を診る証拠だと思ってしまう

県名と病院名で辿れるページには、診療科の一覧や所在地は載っていても、その病院が吃音を扱うかどうかは書かれていません。公的な医療機関の情報でも、口コミを集めたサイトでも同じです。判断材料になるのは、吃音は言語聴覚士が扱う「ことばの障害」に含まれること、その言語聴覚士は病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などに勤務していることが多いこと、そして全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではないことの三つです。だから確かめ方は一つしかありません。電話をかけて「吃音を診ていますか」と先に聞くことです。

落とし穴2 − 「つくばに詳しい人がいる」と聞いて、診てもらえる場所だと思って向かう

つくばは、吃音の学会の大会が開かれた土地です。ただしその学会は、研究の発展と、研究や医療・福祉・セルフヘルプグループ活動などに関わる者同士の交流を目的とする団体で、診療機関ではありません。研究が行われていることと、そこで診察や訓練を受けられることは別のことです。つくば市にあって相談を受け付けていると資料に書かれているのは、発達障害者支援センターの全国一覧に載る「COLORSつくば」です。ただしそちらも、発達障害者支援センターには必ずしも吃音に関する情報が集約されていないことがある、とガイドラインが断っています。

落とし穴3 − 一つの窓口で「うちではない」と言われて、そこで止まる

窓口ごとに答えが違うのは、その人が不親切だからではありません。吃音に対応しているかどうかを明示していない施設が多く、問い合わせ先でも必ずしも把握しきれていない場合がある、とガイドライン自身が書いています。「うちではない」は、その窓口の対象ではなかったという意味であって、相談できないという意味ではありません。断られた先で「どこなら受けてもらえますか」と聞き、次の一本へ進んでください。教育委員会はことばの教室を、言語聴覚士会は専門機関や近くの自助グループを紹介する役割を持っています。まずは気づいたことを書き留めることから小さく始め、言語聴覚士やことばの教室に相談できる場合はそちらが確実です。

よくある質問

茨城県内で吃音を診てもらえる病院はどこですか?

この記事の資料には、茨城県内の医療機関の名前は書かれていません。案内されている探し方は、病院等に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会・各都道府県の言語聴覚士会に尋ねることで、茨城では協会の一覧にある茨城県言語聴覚士会がそれにあたります。幼児については、近隣の施設が分からない場合は地元の保健センターか各都道府県の言語聴覚士会に問い合わせるとよい、と幼児吃音臨床ガイドラインが案内しています。全ての言語聴覚士が吃音を扱えるわけではないので、「吃音を診ていますか」を先に聞くことが勧められています。

吃音は何科にかかればいいですか?

「吃音科」という科はありません。言語聴覚士は、主に病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などのリハビリテーションのスタッフとして勤務している場合が多いとされています。実際の入口は施設が決めることもあり、ある保護者の記録では、病院に言語訓練の相談をしたいと伝えたところ、まず耳鼻咽喉科の受診という形で予約になっています。科の名前で探すより、その施設に吃音を診る言語聴覚士がいるかどうかを先に確かめるほうが確実です。考え方の全体は「吃音は何科・どの病院?」にまとめています。

つくばには吃音の専門の病院がありますか?

この記事の資料には、つくば市の医療機関で吃音を診ていると書かれたものはありません。つくばで確認できるのは、日本吃音・流暢性障害学会の第11回大会が2023年10月21日・22日につくばカピオで開かれたことと、発達障害者支援センターの全国一覧の茨城県の欄に「COLORSつくば」(つくば市高崎802-1)が載っていることです。学会は研究と交流を目的とする団体で、診療機関ではありません。研究が行われていることと診療が受けられることは別なので、受診先は上に挙げた手順で探してください。

茨城言友会には、どうやって連絡すればいいですか?

全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の関東ブロックに、茨城言友会が載っています。全国組織は、お子さんの吃音への対応方法の確認や医療機関の紹介といった個別の相談には原則として応じることができないと明記し、希望する場合は近くの加盟団体まで連絡してほしいとしています。したがって連絡先は茨城の団体のほうです。近くの自助グループの情報は、ホームページで調べるか言語聴覚士会に問い合わせると分かる、とも案内されています。例会の日時や会場はこの記事の資料に無いので、団体の案内で確かめてください。

紹介状は必要ですか。どこでもらえばいいですか?

必要かどうかは施設によって違います。国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来の案内には、紹介状をお持ちの場合はそちらもお持ちください、と書かれています。紹介状は、地元でかかった医師から次の医師へ渡してもらう書類なので、茨城で最初に相談した医療機関が出し先になります。幼児吃音臨床ガイドラインは、慣れていない施設でも大まかな重症度の判断と数か月ごとの経過観察ができるようにし、重い場合に対応できる施設と分担する体制を提案しています。地元で経過を見てもらい、必要になったときに紹介してもらう——という順番が、この分担に沿った進め方です。

まとめ

  • 病院のデータベースに載っているかどうかは、その病院が吃音を診る証拠にならない。吃音は言語聴覚士が扱う「ことばの障害」に含まれ、言語聴覚士はリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などに勤務していることが多いが、全ての言語聴覚士が吃音を扱えるわけではない。確かめ方は「吃音を診ていますか」を先に聞くこと。
  • 大人の宛先は、病院への直接の問い合わせと、茨城県言語聴覚士会・日本言語聴覚士協会。名前のついた専門外来として資料にあるのは県外(埼玉県所沢市)で、18歳以上が対象・完全予約制・予約が取りにくいと案内されている。
  • 就学前の子どもは、言語聴覚士のいる病院や児童発達支援センターなどが窓口で、分からなければ地元の保健センター → 茨城県言語聴覚士会 → 日本言語聴覚士協会の順。就学後と中高生は、学校か地域の教育委員会から「ことばの教室」へ。「様子を見ましょう」で終わらせず、記録をつけながら経過を見てもらう。
  • つくばは学会の大会が開かれた土地だが、その学会は研究と交流の団体であって診療機関ではない。つくば市にある窓口として資料に載っているのは、発達障害者支援センターの「COLORSつくば」。
  • 公的な窓口は県内に2か所(茨城町の「あい」と、つくば市の「COLORSつくば」)。当事者と保護者の会は、全国言友会連絡協議会の一覧の関東ブロックに載る茨城言友会で、全国組織は個別相談に応じられないため連絡先は地域の団体。
  • 窓口ごとに答えが違うのは、吃音に対応しているかを明示していない施設が多く、問い合わせ先でも把握しきれていないことがあるから。近くに相談できる人がいないのは茨城だけの事情ではなく、国の広報誌も専門家の不足を認めている。経緯を一枚にまとめて次の窓口へ進む。一覧に載っていることは、いま受け付けていることと別。行く前に必ず案内を開き直す。

参考文献

  1. 吃音ポータルサイト「成人の方 ─ 相談や支援」(金沢大学 小林宏明研究室)
  2. 一般社団法人 日本言語聴覚士協会「言語聴覚士に相談する」
  3. 一般社団法人 日本言語聴覚士協会「都道府県士会一覧」(2026年8月30日取得)
  4. 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害者支援センター・一覧」(2026年8月30日取得)
  5. 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「ライフステージ別Q&A Q5.どもっている高校生のDくん」
  6. 幼児吃音臨床ガイドライン(第1版)2021(AMED 研究班「発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」・国立障害者リハビリテーションセンター)序章・Q17・Q23・Q24
  7. 特定非営利活動法人 全国言友会連絡協議会「加盟団体一覧」(2026年8月30日閲覧)
  8. 国立障害者リハビリテーションセンター病院「成人吃音相談外来」(2026年8月30日取得)
  9. 国立障害者リハビリテーションセンター リハニュース No.370 特集「幼児吃音臨床ガイドライン」の作成と公開(2022)
  10. 日本吃音・流暢性障害学会「日本吃音・流暢性障害学会とは(学会概要・目的)」(jssfd.org)
  11. 日本吃音・流暢性障害学会「これまで開催された大会・研修会」(jssfd.org)
  12. 注文に時間がかかるカフェ|Slow Order Cafe 公式サイト(2026年8月4日取得)
  13. Brundage et al. (2021) Consensus Guidelines for the Assessments of Individuals Who Stutter Across the Lifespan. Am J Speech Lang Pathol.
  14. Sakai, Miyamoto, Hara, Kikuchi, Kobayashi et al. (2025) Multiple-Community-Based Epidemiological Study of Stuttering among 3-Year-Old Children in Japan. Folia Phoniatr Logop.(国立障害者リハビリテーションセンター研究所・筑波大学人間系・北里大学・九州大学・金沢大学ほか)

当事者の記録の出典: V0170(note「吃音外来を「ありがたい」と思った違和感の正体」。30代前半のときに通える範囲の病院に吃音外来が開設したと本人が書いている一次発信。氏名・居住地は非公開)/V0284(個人ブログ「うさ子の記録」。二歳半で息子の吃音に気づいた保護者の記録。氏名・居住地は非公開)/V0359(Kateブログ。首都圏で吃音外来を探し、初診を受けた20代会社員の記録。東京在住と本人が書いています)。いずれも茨城県にお住まいの方の記録ではありません。引用は原文どおりで、表記も変えていません。話者の情報は台帳の事実シートに記載のある範囲にとどめています。

更新履歴: 2026-09-11 公開