オンライン吃音相談|対面との差・初回は対面か・選ぶ前の7つの確認点

オンライン吃音相談|対面との差・初回は対面か・選ぶ前の7つの確認点
目次

「近くに吃音を診てくれるところが無いので、オンラインで相談できないか」「画面越しでも、対面と同じことをしてもらえるのか」「申し込みのページには『オンライン対応』とあるけれど、誰が出てくるのか、いくらかかるのか、初回だけでも通わなければいけないのか」——調べていくと出てくるのは、それぞれの窓口が自分の案内を出しているページばかりで、利用した人の感想も、横に並べて見比べられる場所も、なかなか見つかりません。お金を払う前に、何を基準に決めればいいのかが分からないまま止まってしまいがちです。

この記事は、売り物を持たない立場から、その判断材料を並べます。ビデオ通話で吃音の治療を行った研究を集めたポートランド州立大学の系統的レビュー(条件を決めて研究を集め、まとめて評価した報告)、遠隔と対面を比べた無作為化比較試験(参加者をくじ引きのように振り分けて比べた試験)のメタ分析(複数の試験の結果を統計的に束ねたもの)、遠隔と対面の両方を受けた当事者に聞き取ったプレトリア大学の研究、ドイツの診療ガイドライン、日本言語聴覚士協会と吃音ポータルサイトの資料をもとに、オンラインで「できること」と「できないこと」を分けます。そのあいだに、オンラインや電話で相談した保護者3人と当事者2人の記録を置き、最後に、申し込む前に自分で確かめられる7つの項目にまとめます。

ソンタクマン(toVoice 運営)
吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。特定のサービスや相談室をおすすめするものでもなく、個々の窓口の評判も扱いません。気になる症状があるときは、言語聴覚士やことばの教室、お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。

まず結論から

  • ビデオ通話で吃音の治療を行った研究を、条件を決めて集めて整理した系統的レビューは、ライブ配信のビデオによる遠隔を「有望な届け方」としています。ただし、最初の評価と診断まで遠隔でできるかどうかは、さらに研究が必要だとも結んでいます。
  • 遠隔と対面を、同じ内容の治療で比べた試験だけを束ねたメタ分析では、吃音のある人のどもった音節の割合に、治療の直後から18か月後までどの時点でもはっきりした差は見られませんでした。ただし束ねられた試験は少なく、生活の質・満足度・費用の証拠は乏しいと、同じ研究が断っています。
  • 遠隔の利用を左右する要因を整理したレビューは、遠隔を対面の置き換えではなく補う方法と位置づけ、評価と診断のために最初の回は対面を勧め、6歳より上の子どもに向くとしています。
  • 画面の向こうにいるのが誰かで、受け取れるものは変わります。言語聴覚士は、なめらかに話すことが難しい吃音を「ことばの障害」として守備範囲に含める国家資格の専門職ですが、全員が吃音の指導や支援を行えるわけではないので、あらかじめ病院・日本言語聴覚士協会・都道府県の言語聴覚士会に確かめることが勧められています。
  • 「治る」を約束しながら治療の目標と方法を分かる形で説明しない療法は、ドイツの診療ガイドラインが「行うべきでない」に挙げているものの一つです。

ただし、ここに挙げた研究の多くは海外で行われたもので、通信の環境や費用のかかり方、保険の仕組みは国によって違います。遠隔を受けた当事者に聞き取った研究も、自ら、人数が少なく一つの施設の利用者に限られると断っています。この記事は、どの窓口が良いかを判定するものではなく、自分で確かめるための物差しを渡すものです。

画面の向こうにいるのは誰か——3つの立場と、公的か自費か

「オンライン吃音相談」という同じ看板でも、出てくる人の立場は一つではありません。吃音ポータルサイトは、大人の吃音の相談や支援を行う専門機関として、言語聴覚士・セルフヘルプグループ(当事者どうしの自助グループ)・心理カウンセラーなどの3つを挙げています。オンラインの窓口を見るときも、まずこの3つのどれにあたるかから確かめると、そこで受け取れるものの見当がつきます。

  • 言語聴覚士 — 聞こえやことばの障害、飲み込みの障害のある人を支援する国家資格の専門職で、検査・訓練・指導・援助を行います。日本言語聴覚士協会は、なめらかに話すことが難しい吃音も「ことばの障害」に含まれると明記しています。ただし扱う業務が幅広いため、全員が吃音の指導や支援を行えるわけではなく、希望する場合はあらかじめ病院に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会や各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内されています。見分け方の詳細は「吃音と言語聴覚士」へ。
  • 心理カウンセラー — 数は少ないものの、臨床心理士などで吃音のある人の心理療法を行っている人もいるとされ、その多くは、話し方そのものへの直接の働きかけというより、吃音に伴う不安や劣等感といった心理的な問題を軽くすることを目指しているとされています。指導・支援法には人ごとに合う・合わないがあるので、心理療法を検討するときは、どのような方法にもとづいているかを確かめる必要がある、と同じ資料は書いています。
  • 当事者の団体 — 言友会や日本吃音臨床研究会のようなセルフヘルプグループは当事者の集まりなので、言語聴覚士のような学術的な知識や、改善のための専門的な指導や支援が受けられるわけではありません。その代わり、同じ問題を持つ仲間と出会い、当事者どうしでないと感じられない連帯感の中で悩みを聞いてもらったり、同じ立場からの具体的な助言をもらったりできる、ここでしか得られないものがあるとされています。

もう一つの分かれ目は、公的な福祉サービスか、自費のサービスかです。手元の資料に、条件が公開されている実例が一つあります。名古屋市の特定非営利活動法人つばさ吃音相談室は、公式サイトで、支援サービスが大きく2つに分かれると説明しています。一つは児童福祉法に定める「児童発達支援」と「放課後等デイサービス」を提供する公的な福祉サービスで、受給者証(福祉サービスを利用するために取得する証)を取得することで一定の費用負担で支援が受けられ、対象は未就学児から高校生、通所による利用で、オンラインによる利用はできません。もう一つはオンラインによる支援サービスで、こちらは公的な福祉サービスではなく、受給者証がなくても利用でき、子どもから大人まで誰でも使えるとされています。⚠ これは一つの相談室の、取得時点(2026年8月)の案内であって、この記事がその相談室を勧めているわけではありません。ここで見てほしいのは、「オンライン」の側は公的な福祉サービスの枠の外にある、という同じ事業者の中での線の引き方です。窓口によって、制度の内側か外側かが違う——それを申し込む前に確かめる、という話に、この記事の最後でもう一度戻ります。

相談先の全体の見取り図——医療機関・言語聴覚士・ことばの教室・発達障害者支援センター・自助グループの5つの入口——は「吃音の相談先」にまとめてあります。ここから先は、オンラインや電話で実際に相談した人の記録から、画面越しに「できたこと」と「できなかったこと」を一つずつ見ていきます。

本人が画面に出なくても、相談は成り立つのか

3歳の子どもを画面の前に座らせて、いつもどおり話をさせるのは難しいものです。だから幼い子の場合、オンラインの相談は「親だけが話す」形になりがちです。それで何が持ち帰れるのでしょうか。2歳半から吃音のある次男について、オンラインで言語聴覚士に相談した母親の記録があります。

3歳の息子の母(30代・2人の兄弟の母/個人ブログ note)

外ではとてもおとなしくて、ほとんど話さないのに、家に帰るとマシンガンのようにしゃべりつづける。そのギャップがずっと気になっていたこと。

言語聴覚士の先生は、私の話を聞いたあと、静かにこう言いました。

「おそらく、お子さんは自分の吃音を自覚していると思いますよ」

……え? 自覚? 頭の上に「?」が10個ほど浮かぶとは、こういう感覚のことかもしれません。

次男は2歳半のころから吃音があり、母親はそのことに「触れないように」してきました。意識させたら悪化する気がして、口にしたら確定してしまう気がして、と本人は書いています。オンラインで言語聴覚士に相談した日、母親が話したのは、外ではおとなしいのに家ではしゃべり続けるという、ずっと気になっていた落差でした。それを聞いた言語聴覚士が返したのが、上の一言です。母親は半信半疑で、3歳になったばかりの子が自覚しているとは思えなかったと続けます。その夜、はじめて息子に吃音の話をしてみると、息子は「ぼくだけ なっちゃうの」と答えました。この日を境に、母親は専門家のもとで、息子の観察や表情の変化、声のかけ方を学び始めています。画面に出ていたのは母親だけでした。持ち帰ったのは診断ではなく、家での様子の読み方と、その後の学びの入口です。親と協働することを、支援する側がどう感じているかは、研究が別に調べています。

出典: 「ぼくだけ なっちゃうの」3歳の息子と、はじめて吃音について話した日のこと(note)(台帳: V0279)

親だけが話す相談で受け取れるのは、見立てと接し方であって、診断ではありません。ビデオ通話による吃音の治療の研究を集めた系統的レビュー(条件を決めて研究を集め、まとめて評価した報告)は、遠隔を有望な届け方としたうえで、最初の評価と診断を遠隔で行えるかどうかを判断するには、さらに研究が必要だと結論しています。だからこの母親が持ち帰ったものは、「うちの子は吃音かどうか」の答えではなく、「本人が自覚しているかもしれない」という見方と、それを確かめる会話の糸口だった、と読むのが実際に近いところです。

本人が同席しない初回相談を、案内に明記している窓口もあります。上で挙げた相談室は、初回相談について、1時間程度・費用は無料・受給者証は不要で、子ども本人が同席しなくても相談でき、症状はあらかじめ録画した動画などで確認することも可能だとし、対面のほかオンラインでも受けられるが電話による相談には応じていない、と書いています。⚠ これは一つの相談室の条件で、どこでも同じではありません。「本人が出なくてもいいか」「録画で代えられるか」は、窓口ごとに確かめる項目です。家で撮った動画を相談に持っていく考え方は、「吃音の動画」で扱っています。

親への指導という仕事そのものを、支援する側がどう感じているかも調べられています。言語聴覚士が吃音の支援について感じている力量を、13件の研究を集めて整理した系統的レビューでは、自分の力量の感じ方は評価より治療のほうが低く、そのうち治療のなかで家族と協働することへの自信は、治療そのものよりも評価よりもかなり低く評定されていたという調査が引かれています。吃音のある人をより多く担当している人、吃音についての継続的な専門教育を受けている人ほど自信が高い、ともまとめられています。親だけの相談を申し込むなら、「親への指導を普段からしているか」「吃音のある子どもをよく担当しているか」を聞く意味は、ここにあります。

遠方から、初回もオンラインで始めた家庭

研究は「最初の回は対面」を勧めます。けれど実際には、近くに相談先が無くて、初回からオンラインで始めた家庭があります。福岡県で、東京の相談室につながった母親の記録です。

福岡県に住む母の声(仮名・専業主婦。次男は2歳8か月で吃音が始まり、取材時は7歳/Benesse「たまひよ」の体験記)

東京の相談室だし不安もありましたが、すがる思いで連絡をしてみたところ、運よくオンラインで面談をしてもらえることに。康太の症状などを相談したところ、オンラインでリッカムプログラムに取り組んでみることになりました

次男の吃音は2歳8か月の日に始まり、幼稚園の先生と保健師に相談しても具体的な治療の情報は得られず、調べた療育や言語聴覚士のいる小児科は遠方か予約がいっぱいでした。動き直したのは、年長の11月に本人が「どうして僕はみんなみたいにしゃべれないの?」と口にした日です。SNSで吃音のハッシュタグを辿って東京の言語聴覚士の相談室に行き着き、連絡をしたところ、初回の面談がオンラインで実現しています。そこで決まったのがリッカムプログラム——就学前の子どもを対象に、親が家庭で絵カードや絵本を題材に子どもに話をさせ、言えたことを言葉で返していく練習法です。母親は毎朝、幼稚園のしたくを済ませてから練習を録音し、オンラインで共有し、遠方であることから、言語聴覚士がその録音を聞いたうえで月に2回、オンラインの打ち合わせで母親に助言を返す形で続けた、と書いています。指導した言語聴覚士自身も記事の末尾で、正規のルールでは毎週子どもが同席する面談が要るが、相談室の予約の確保が難しく家庭の負担も考えて、録音を送ってもらう月2回の形にした、と書き添えています。ここで起きているのは、「初回は対面」を飛ばした例であると同時に、研究がまだ調べていない形での継続でもあります。

出典: 「どうして僕はうまくしゃべれないの?」ある日突然、3才の息子に吃音の症状が…。誰にも相談できずに悩み続けた日々【体験記】(たまひよ)(台帳: V0006)

親が家庭で行うこの練習法は、遠隔での提供が実際に研究されている方法の一つです。ビデオ通話による吃音治療の系統的レビューが集めた7件の研究では、大学の研究者や教育者が80人の吃音のある人に遠隔でサービスを届けており、提供された治療にはキャンパーダウン・プログラム、リッカム・プログラム、統合的なアプローチが含まれていました。遠隔の利用を左右する要因を整理した別のレビューも、地理的な距離による受診のしにくさは遠隔で取り除きうること、利用者が自分の生活の都合に合わせて発話の記録を送れる柔軟さがあること、その結果として親と子どもが仕事や学校を休む時間が減り、放課後や勤務時間のあとに治療の予定を続けられることを挙げています。毎朝の練習を録音して送る——上の母親がしていたことは、このレビューが「柔軟さ」と呼んでいるものそのものです。

ただし、二つ注意があります。一つは年齢です。同じレビューは、遠隔は6歳より上の子どもに向いていて、年齢は考慮しなければならない重要な要因だと述べ、声が小さく内気な子どもとは専門家との関係を作りにくいこと、家でくつろいでいる子どもの注意を引くのが非常に難しいことを、否定的な結果として並べています。上の子どもは年長でしたから、この線の近くにいます。もう一つは、録音を送って月2回の面談という形が、研究が比べた形とは違うことです。遠隔と対面を比べたメタ分析は、両群が強度・量・頻度・内容の点で同じかほぼ同じ治療を受けた試験だけを組み入れ、記録を送っておいて後で見るような非同時のやり方(アプリや遠隔モニタリング機器を含む)は除外しています。その結果は病院内で提供される言語療法や非同時の遠隔には一般化できない、と原典自身が限界に挙げています。「オンラインでも同じ」という研究の結果は、生中継のビデオで同じ頻度の治療を受けた場合の話です。録音を送る形が悪いという意味ではなく、それについては「まだ比べられていない」というのが正確なところです。

電話で相談したら、「連れてきてください」になった

離れたところから最初にかけるのは、たいてい電話です。その電話が、そのまま画面越しの相談になるとは限りません。3歳の娘の吃音が目立ってきたとき、こども相談室に電話をかけた母親の記録です。

3歳から吃音のある娘の母(元看護師/個人ブログ note。娘は執筆時に小学3年生)

Limo娘(3歳)の吃音が著明になったとき、心配になったLimo家。

こども相談室に電話相談をしたところ、小児の成長発達を専門としている医師や臨床心理士に見てもらえる機会があるとのことで、連れて行きました。

親子の関わり、娘単独の観察、親の面接など、

45分くらいの診察?を受けた結果。

『問題なし。発達は順調です。吃音は様子をみましょう』

以上。

専門家がそういうなら、安心して、様子をみることにした。

電話の相談が返してきたのは、答えではなく「見てもらえる機会」でした。母親は娘を連れて行き、医師と臨床心理士(心の専門職)の前で45分。中身は、親子のやりとりを見ること、娘ひとりの様子を見ること、親への面接でした。結果は「問題なし。様子をみましょう」。専門家がそう言うなら、と母親は様子を見ることにしています。娘の吃音はその後も、小学校に入っても消えず、2年生のころには話し方を真似する友だちが現れて「なんで自分は他の子のように、喋ることができないんだろう?」と娘が口にするようになった、と記録は続きます。3歳のときの評価は、電話では済まず対面で行われ、しかも「様子を見る」で終わった——この二つのことが、ここに一緒に書かれています。評価と診断のために初回は対面が勧められる、というレビューの整理は、この母親の経験した順路そのものです。

出典: 【小3娘】吃音(どもり)改善しなくても、楽しく生きています。(note)(台帳: V0347)

なぜ最初の評価は対面なのか。ドイツの診療ガイドラインは、客観的な評価のために、300音節(音のまとまりの単位)以上の連続した発話サンプルを複数、音声または映像で記録し、どもった音節の割合・いちばん長いどもりの持続時間・体の動きを伴う症状で分析して重さを分類するとしています。録画そのものは家でもできます。しかし、隠れた吃音が疑われるときには、話をさえぎる・速く話すよう求めるといった負荷をかけて症状を引き出すことも、同じガイドラインは評価の手順に含めています。遠隔の要因を整理したレビューも、専門家が話し方を正確に判断するには音声と映像の質が重要で、呼吸のような細かい様子は遠隔では判断しにくいと述べています。上の母親が受けた「親子の関わり・娘単独の観察・親の面接」という45分は、画面越しには収まりにくい種類の観察でした。

そして「様子をみましょう」にも、期限があります。同じガイドラインは、3〜6歳の子どもは吃音が始まってから6〜12か月のあいだ経過を見て、その期間を過ぎても続いていれば治療を始めるとし、持続しやすい手がかりがいくつも重なっている・言葉を思うように出せない状態や努力を伴う症状が長く続いている・症状が親や子にとって負担で話す場面を避けるようになっている、という場合にはすぐに始めるべきだと書いています。完全な回復は保証できない、とも明記しています。小学校に入っても続いていた上の娘は、この整理では「様子を見る」期間を過ぎています。初回を対面で受けたあと、続きをどこで受けるか——オンラインが選択肢に入るのは、この段階からです。

対面で診察を受けたあとの更新は、オンライン診療で済んだ

「最初は対面、続きは遠隔」は、研究の提言であると同時に、日本の医療の中で実際に起きていることでもあります。愛媛県の77歳の当事者が、障害者手帳の一つである精神障害者保健福祉手帳を取り、更新するまでを、日付つきで書き残しています。

77歳の当事者(愛媛言友会の会員/団体の公式サイト「吃音当事者からのメッセージ」に載った発表原稿)

2025年の3月15日に更新手続きをオンライン診療で依頼しました。3月25日に医療秘書さんからLINEがあり4月2日の15:30からオンライン診療予定で、診療日までに保険証のコピーとオンライン診療の同意書を送付するよう依頼がありました。3月26日に送付し、4月2日15:30から更新用オンライン診療を受け4月7日に診断書を受領しました。翌4月8日に新居浜市役所で更新手続き終了しました。

手帳を取ろうと思ったのは、同じ会にすでに持っている人が数人いて、自分もアルバイト先を退職する予定だったから、と本人は書いています。最初の手続きは2022年の秋で、問診票と診断書の用紙がメッセージアプリで送られてきて、記入して送り返すと初診日が決まり、診断書が書けるのは初診日から半年後だったため、2023年4月に対面で診察を受けて診断書をもらい、市役所で申請して、同年7月に3級を受け取っています。上の一節はその2年後、期限が来た手帳の更新です。依頼から診察まではメッセージアプリ、診察はオンライン、同意書と保険証のコピーは事前に送付、診断書は5日後に受領——対面で一度診てもらった相手との、続きの手続きです。記録はこのあと、鉄道運賃の割引や美術館の入場料、健康保険の負担割合が変わったことへと続きます。対面で始めて遠隔で続けるという組み合わせは、遠隔を受けた当事者自身が勧めている形でもあります。

出典: 吃音当事者からのメッセージ(愛媛言友会 公式サイト)(台帳: V0223)

遠隔と対面の両方で吃音の言語療法を受けた12歳以上の当事者11人に聞き取ったプレトリア大学の研究は、対面と遠隔を組み合わせるやり方が関わりと効果を最も高めうるとし、遠隔は当事者が好む混合の形に組み込まれるべきだと結論しています。⚠ これは著者らの提言で、混合の形を他の形と比べて測った結果ではありません。遠隔の要因を整理したレビューも、遠隔は吃音の治療を補う方法として使えるが対面の受診の置き換えとは考えられない、と述べています。

研究が勧めている順番を4段階で示した流れ図。1 まず対面で評価と診断を受ける——評価と診断のために初回は対面が勧められており、最初の評価まで遠隔でできるかは、まだ確かめられていない。2 年齢と通信の環境を確かめる——遠隔は6歳より上の子どもに向き、家でくつろいだ子の注意は引きにくく、声の小さい内気な子とは関係を作りにくい。3 続きを遠隔に切り替える——生中継(ビデオか電話)で同じ内容・頻度なら、どもった音節の割合に差は見られなかったが、記録を送る形は比べられていない。4 対面と遠隔を組み合わせて続ける——両方を受けた11人への聞き取りが勧める形で、他の形と比べて測った結果ではない。
図1: 研究が勧めている順番。診療の手順ではありません。出典: McGill, Noureal & Siegel (2019) Telemed J E Health. / Bayati & Ayatollahi (2021) Healthc Inform Res. / Scott, Clark, Cardona et al. (2025) J Telemed Telecare. / Hoosain et al. (2025) S Afr J Commun Disord.

続きを遠隔にしたとき、受ける側の負担がどう変わるかも測られています。遠隔と対面を比べたメタ分析が束ねた試験のうち、大人を対象にした試験では、遠隔での治療のほうが「とても便利だ」と表現される頻度がはっきり高く、ごく幼い子どもの試験では、子どもの流暢さに対する親の満足度に9か月後も18か月後も差がありませんでした。一方で、吃音を扱った二つの試験はどちらも生活の質を測っていません。便利さと満足度は測られ、生活の質はまだ測られていない——そこまでが、いま言えることです。上の記録が扱っている診断書の話そのものは、「吃音の診断書はもらえる?」にまとめています。

「治る」と言われた先に、高額な教室があった

オンラインでも対面でも、申し込みの手前でいちばん効いてくるのは「治る」という言葉です。困っているときほど、その言葉の先に行ってしまう。社会人1年目、会社の電話に追い詰められていた時期の当事者の手記です。

当事者本人(大阪・主婦・28歳/日本吃音臨床研究会の会報に掲載された、ことば文学賞の最優秀作)

それから、私はこのままだと会社にいられなくなると思って、吃音を治しに「話し方教室」へ行きました。母も賛成してくれていましたが。かなりの高額な為に心配もしていました。ですが、1年程たっても効果はありません。ここでは吃音は治らないと見切りをつけ、次に私が行ったのが大阪吃音教室でした。「吃音と上手くつきあおう」というのがどんなのか知りたかったのです。

そこではみんなが堂々と楽しそうにどもっていて、前の「話し方教室」のようにどもったら注意されていた世界とは全く違っていました。

就職して1か月、電話の取り次ぎで会社名が言えず、家に帰っては受話器を持って発声練習をしていた時期のことです。その前、就職活動のころには、「気」や「念力」をかけたメダルを持っていると吃音も治ると言われ、母親が遠い地方までそれをもらいに行ってくれた、とも書かれています。次に行ったのが、上の「話し方教室」でした。母親は賛成しながら、高額であることを心配していた。1年ほど通って、本人の受け止めでは効果はなく、見切りをつけて向かったのが当事者の集まりである大阪吃音教室です。そこで見たのは、どもったら注意される世界ではなく、みんなが堂々とどもっている場でした。その日以来、吃音の相談は教室でするようになり、母親にはしなくなった、と手記は続きます。「話し方教室」がどんな方法で何をしていたかは、この手記には書かれていません。ただ、「治す」を掲げ、どもったら注意する、という二つは書かれています。ガイドラインが「行うべきでない」に挙げているものと、この二つは重なります。

出典: 第7回ことば文学賞受賞作品(吃音と上手につきあうための吃音相談室・日本吃音臨床研究会)(台帳: V0164)

ドイツの診療ガイドラインは、行うべきでない治療を列挙しています。薬による治療は強い否定的な根拠により行うべきでないとされ、リズムに乗せた話し方や呼吸の調整を唯一あるいは主な要素とすること、催眠、そして分かる形の考え方を持たない吃音療法は、行うべきでない(ただし根拠は強くない)とされています。さらに避けるべき手続きとして、日常生活へ持ち出す手立てを含まない、再発への対処を含まない、短期の成功はあるが長期の観察研究が無い、呼吸の変更や弛緩法だけに頼る、吃音の原因や再発の責任を本人や家族に負わせる、そして「治る」を約束し治療の目標と方法を分かる形で説明しない、という6つを挙げています。オンラインの窓口の案内文を読むときの物差しは、ここにあります。「治ります」と書いてあるかどうかではなく、目標と方法が分かる形で書いてあるか、再発したときの対処に触れているか、本人や家族に責任を置いていないかを見る、ということです。

ドイツの診療ガイドラインが「行うべきでない」としたものを、治療法と手続きの2つに分けて並べた図。治療法としては、薬による治療(強い否定的な根拠)、リズムに乗せた話し方や呼吸の調整を唯一あるいは主な要素とすること、催眠、分かる形の考え方を持たない吃音療法の4つ。避けるべき手続きとしては、日常生活へ持ち出す手立てを含まない、再発への対処を含まない、短期の成功はあるが長期の観察研究が無い、呼吸の変更や弛緩法だけに頼る、原因や再発の責任を本人や家族に負わせる、「治る」を約束し治療の目標と方法を分かる形で説明しない、の6つ。
図2: 案内文を読むときの物差しになる、ガイドラインの「行うべきでない」の一覧。薬による治療だけが強い否定的な根拠にもとづき、ほかは弱い根拠にもとづくものです。出典: Neumann, Euler, Bosshardt, Cook, Sandrieser & Sommer (2017) The Pathogenesis, Assessment and Treatment of Speech Fluency Disorders. Dtsch Arztebl Int.

機器やアプリについても、同じガイドラインは位置づけを書いています。話す速さの目安を与える装置や、自分の声を遅らせたり周波数を変えて返す装置・ソフトは、使っている間は吃音を無くすことができるが、日常的な治療の構成要素としては推奨できず、話し方の流暢さを改善するソフトウェアは、推奨された吃音療法の枠内で、療法士の監督のもとでのみ使うべきだとしています。「アプリだけで」「機器だけで」という案内は、この整理とは形が合いません。当事者の集まりで得られるものと得られないものについては、専門的な指導や支援が受けられるわけではないが、当事者どうしでしか得られないものがある、という線引きが公的な資料にあります。上の手記の人が最後に見つけたのは、その後者でした。

対面と比べた研究が言えていること、言えていないこと

ここまでの5人の記録を、研究の側から確かめておきます。遠隔と対面の言語聴覚療法を、参加者をくじ引きのように振り分けて比べた試験(無作為化比較試験)だけに絞って評価した2025年の系統的レビューとメタ分析(複数の試験の結果を統計的に束ねたもの)は、9件の試験を集め、うち吃音を扱ったのは2件でした。参加者は14〜69人、追跡は1週間から18か月で、8件がビデオ、1件が電話による遠隔でした。吃音のある人のどもった音節の割合は、治療の直後・6〜9か月後・18か月後のどの時点でも、遠隔と対面のあいだにはっきりした差がありませんでした。ただし原典は、無作為化比較試験の数が少ないこと、生活の質・満足度・費用についての証拠が乏しいことを最大の限界に挙げています。1回の相談時間や治療完了までの時間の数値と図は、「吃音の相談先が近くにない」に置いてあります。

受けた人がどう感じたかは、プレトリア大学のクリニックで遠隔と対面の両方を受けた11人に聞き取った研究が扱っています。11人のうち10人(91%)が、予定を自分の都合に合わせやすいこと・日々の生活に組み込みやすいこと・移動の時間が減ることを利点に挙げ、4人(36%)は自宅という慣れた場所で受けられることが良い経験につながったと答えています。受けた支援の質は11人全員が肯定的に評価しており、その受け止めを左右した要素として、担当の言語療法士との関係、オンラインでの進め方の組み立て方、そして担当者が機器を扱えることの3つが挙がっています。一方で、8人(73%)は通信の不安定さによる遅延や音と映像の乱れを経験し、5人(45%)は電力の供給が止まってセッションが中断されています。どちらを好むかでは、対面と答えた人が5人(46%)で最も多く、遠隔が3人、どちらでもよいが3人でしたが、評定尺度の上では二つの届け方の好みに大きな差は無く、参加者全員が遠隔を他の吃音のある人にも勧めると答えました。⚠ 通信や電力の事情は南アフリカでの観察で、日本の事情にそのまま当てはめることはできません。自己申告に頼っていること、人数が少ないこと、一つの施設の利用者に限られることも、原典自身が限界に挙げています。

遠隔と対面の両方で吃音の言語療法を受けた11人が挙げた、良かったこと3つと困ったこと4つを人数で並べた図。良かったこととして、予定の融通や生活への組み込みが10人(91%)、移動の費用が減ったことが8人(73%)、自宅という慣れた場所で受けられたことが4人(36%)。困ったこととして、通信不良による遅延や音と映像の乱れが8人(73%)、停電によるセッションの中断が5人(45%)、間の遅れや視線が無いなどの意思疎通の制約が5人(45%)、データ通信で費用が増えたことが3人(27%)。いずれも複数回答。
図3: 遠隔と対面の両方を受けた11人が挙げた、良かったことと困ったこと。9人(82%)は、こうした通信や電力の不具合が参加そのものを妨げることはなかったとも答えています。出典: Hoosain, Abdoola, Krüger & Pillay (2025) How I experienced tele-intervention: Qualitative insights from persons who stutter. S Afr J Commun Disord.

それでも、この研究から日本の窓口を見るときに持ち帰れるものが一つあります。質の受け止めを決めていたのは、方法の名前ではなく、担当者との関係と、オンラインの進め方の組み立てと、機器を扱えるかどうかだった、ということです。遠隔の要因を整理したレビューも、音声と映像の質が低いと言語聴覚士の説明や練習の指示が伝わらず、回線が遅いために保護者の不満が出た研究があったことを挙げています。「オンライン対応」とだけ書いてある窓口に、初回にどんな機材で、どんな流れで進めるのかを聞くことは、この研究の結果を自分の側で確かめる行為になります。

申し込む前に確かめる7つのこと——利用した人の感想が見つからないとき

利用した人の感想を探しても見つからないとき、代わりに自分で確かめられる項目があります。ここまでの研究と資料から、問い合わせのときに聞く言葉の形で並べます。

  1. 誰が対応するのか。 言語聴覚士か、臨床心理士などの心理職か、当事者か。言語聴覚士なら、吃音を扱っているか、吃音のある人をよく担当しているかまで聞く——全員が吃音の指導や支援を行えるわけではなく、吃音のある人を多く担当している人ほど、自分の力量を高く感じているからです。心理療法なら、どのような方法にもとづいているかを確かめる。
  2. 公的な福祉サービスか、自費のサービスか。 同じ事業者の中でも、受給者証を使う通所の公的サービスと、公的でないオンライン支援が分かれている実例があります。受給者証が要るか、対象年齢はどこまでか、そのサービスは制度の内側か外側かを聞く。
  3. 初回の評価をどうするのか。 最初の評価と診断まで遠隔でできるかは、まだ確かめられていません。評価と診断のために初回は対面が勧められています。「初回だけ伺って続きを遠隔にできるか」「本人が同席しない相談は可能か」「録画した動画で代えられるか」を聞く。録画で代える形を案内している窓口はあります。
  4. 年齢に合っているか。 遠隔は6歳より上の子どもに向くとされ、家でくつろいでいる子どもの注意を引くのが難しい、声の小さい内気な子どもとは関係を作りにくい、という報告があります。幼い子なら、親への指導が中心になるのか、子ども本人と何をするのかを聞く。
  5. ビデオか、電話か、記録を送る形か。 遠隔と対面で差が見られなかったという結果は、生中継(ビデオか電話)で同じ頻度の治療を受けた試験の話で、記録を送って後で見る非同時のやり方は研究の対象外でした。電話による相談には応じていないと明記する窓口もあります。自分が受けるのがどの形かを確かめ、通信の環境と、担当者が機器を扱えるかも聞く。
  6. 「治る」を約束していないか。目標と方法が分かる形で書いてあるか。 「治る」を約束し治療の目標と方法を分かる形で説明しない療法、再発への対処を含まない療法、原因や再発の責任を本人や家族に負わせる療法は、ドイツの診療ガイドラインが避けるべき手続きに挙げています。アプリや機器だけで済ませる案内も、療法士の監督のもとで使うという位置づけとは合いません。
  7. 回数と期間、やめるときの条件。 遠隔の回数や期間については研究の結果が割れていて、就学前の子どもでは対面より回数と期間が増えたとする研究と、遠隔のほうが治療計画を終えるまでの時間が短かったとする研究の両方があります。「何回で何を目指すのか」「途中でやめるときはどうなるのか」を、始める前に聞く。

7つとも、電話やメールで聞けることです。答えが返ってこない窓口は、それ自体が一つの答えになります。窓口の名前を知らなくても辿れる入口——都道府県の言語聴覚士会・教育センター・発達障害者支援センター——は「吃音の相談先が近くにない」に、実際に何をしてもらえるのか(環境を整えること・話し方の練習・気持ちの面の相談)は「吃音症のリハビリ」にまとめてあります。

オンラインの相談を選ぶときに陥りがちな3つの落とし穴

落とし穴1 − 「オンライン対応」の一言で、誰が出てくるかを確かめずに決める

言語聴覚士・心理カウンセラー・当事者の団体では、受け取れるものが違います。言語聴覚士でも、全員が吃音の指導や支援を行えるわけではありません。遠隔を受けた当事者が質を評価した要素は、担当者との関係と、オンラインでの進め方の組み立てと、担当者が機器を扱えることでした。申し込む前に、誰が・どんな流れで・どんな機材で対応するのかを聞いてください。

落とし穴2 − 「差が無い」を「全部オンラインで済む」と読む

どもった音節の割合に差が見られなかったのは、同じ内容の治療を生中継(ビデオか電話)で受けた試験の話で、試験の数は少なく、記録を送る形は対象外でした。最初の評価と診断まで遠隔でできるかは、まだ確かめられていません。初回は対面が勧められ、年齢による向き不向きもあります。3歳の娘の電話相談が対面の45分になった記録と、対面で診てもらったあとの更新がオンラインで済んだ記録は、この順番をそのまま示しています。「全部オンラインで」と決めてから探すのではなく、「初回だけ伺えるか」「録画で代えられるか」を聞く順番のほうが噛み合います。

落とし穴3 − 「治る」の一言に、お金と時間を先に払う

「治る」を約束しながら目標と方法を分かる形で説明しない療法は、ガイドラインが避けるべき手続きに挙げているものです。高額な教室に1年通ったあとで見切りをつけた当事者の記録が、この記事の中にあります。利用した人の感想が無くても、上の7項目は自分で確かめられます。まずは、どんな場面でどのくらい話しにくいかを書き留めておくと、初回の相談で「何に困っているか」を短く伝えられ、相手の答えが自分の困りごとに合っているかも見きわめやすくなります。言語聴覚士やことばの教室に相談できる場合は、そちらが確実です。

よくある質問

オンラインの吃音相談は、対面と同じ効果がありますか?

遠隔と対面を、同じ内容の治療で比べた無作為化比較試験だけを束ねたメタ分析では、吃音のある人のどもった音節の割合に、治療の直後から18か月後までどの時点でもはっきりした差は見られませんでした。ただし束ねられた試験は少なく、生活の質・満足度・費用の証拠は乏しいと原典が断っており、ビデオ通話による治療を集めた系統的レビューも「有望」という言い方にとどめています。「同じ効果がある」とまでは、いまの研究からは言えません。

最初からオンラインでも大丈夫ですか?

最初の評価と診断を遠隔で行えるかどうかを判断するには、さらに研究が必要だとされています。評価と診断のために、初回は対面で行うことが勧められています。本人が同席しない初回相談や、録画した動画で症状を確認する形を案内している窓口はあるので、「初回だけ伺えるか」「録画で代えられるか」を申し込む前に聞くのが現実的です。

子どもは何歳からオンラインで受けられますか?

遠隔の利用を左右する要因を整理したレビューは、遠隔は6歳より上の子どもに向いており、年齢は考慮しなければならない重要な要因だとしています。家でくつろいでいる子どもの注意を引くのが非常に難しい、声が小さく内気な子どもとは専門家との関係を作りにくい、という報告も同じレビューにあります。幼い子どもの場合、親が家庭で行う練習法を遠隔で指導する形が研究されており、親だけが相談する形になることもあります。

オンライン相談をしているのは言語聴覚士ですか?

窓口によります。吃音ポータルサイトは大人の相談先を、言語聴覚士・セルフヘルプグループ・心理カウンセラーなどの3つに整理しています。言語聴覚士は吃音をことばの障害として守備範囲に含める国家資格の専門職ですが、扱う業務が幅広いため、全員が吃音の指導や支援を行えるわけではなく、あらかじめ病院・日本言語聴覚士協会・都道府県の言語聴覚士会に確かめることが勧められています。心理カウンセラーの多くは話し方そのものより不安や劣等感の軽減を目指し、当事者の団体は専門的な指導の場ではありません。

「オンラインで吃音が治る」という案内は信じていいですか?

この記事は個々の窓口を評価しませんが、物差しはあります。ドイツの診療ガイドラインは、「治る」を約束し治療の目標と方法を分かる形で説明しない療法、分かる形の考え方を持たない療法、再発への対処を含まない療法などを、行うべきでない・避けるべきものとして挙げています。「治ります」と書いてあるかどうかより、目標と方法が分かる形で書いてあるか、再発したときの対処に触れているかを見てください。

まとめ

  • ビデオ通話による吃音の治療は、系統的レビューで「有望な届け方」とされている。ただし最初の評価と診断まで遠隔でできるかは、さらに研究が要る。遠隔と対面で、どもった音節の割合に18か月後まで差は見られなかったが、試験の数は少なく、記録を送る非同時の形は対象外だった。
  • 遠隔は対面の置き換えではなく補う方法で、初回は対面が勧められ、6歳より上の子どもに向く。親だけがオンラインで相談して見立てと接し方を持ち帰った母、遠方から初回もオンラインで始めた家庭、電話の相談が対面の45分になった母、対面で診てもらったあとの更新をオンライン診療で済ませた当事者——順番はそれぞれだが、評価と継続は別の段階だという線は共通している。
  • 画面の向こうにいるのが言語聴覚士か、心理職か、当事者かで、受け取れるものは違う。言語聴覚士でも全員が吃音を扱うわけではない。同じ事業者の中でも、受給者証を使う公的な福祉サービスと、公的でないオンライン支援が分かれている実例がある。
  • 遠隔を受けた当事者が質を評価した要素は、担当者との関係・オンラインでの進め方・機器を扱えること。通信の不具合は音と映像だけでなく、説明や練習の指示の伝わり方を左右する。
  • 「治る」を約束し目標と方法を説明しない療法は、ガイドラインが避けるべき手続きに挙げている。利用した人の感想が無くても、誰が対応するか・公的か自費か・初回の評価・年齢・ビデオか電話か・「治る」の約束・回数と続け方の7つは、申し込む前に自分で確かめられる。

参考文献

  1. McGill, Noureal & Siegel (2019) Telepractice Treatment of Stuttering: A Systematic Review. Telemed J E Health.(ポートランド州立大学ほか)
  2. Scott, Clark, Cardona et al. (2025) Telehealth versus face-to-face delivery of speech language pathology services: A systematic review and meta-analysis. J Telemed Telecare.
  3. Bayati & Ayatollahi (2021) Comprehensive Review of Factors Influencing the Use of Telepractice in Stuttering Treatment. Healthc Inform Res.
  4. Hoosain, Abdoola, Krüger & Pillay (2025) How I experienced tele-intervention: Qualitative insights from persons who stutter. S Afr J Commun Disord.(プレトリア大学)
  5. Speech–Language Pathologists’ Perceptions of Their Competence in Managing Stuttering: A Systematic Review(2025)Int J Lang Commun Disord.
  6. Neumann, Euler, Bosshardt, Cook, Sandrieser & Sommer (2017) The Pathogenesis, Assessment and Treatment of Speech Fluency Disorders. Dtsch Arztebl Int.(ドイツの診療ガイドラインの要約)
  7. 一般社団法人 日本言語聴覚士協会「言語聴覚士に相談する」
  8. 吃音ポータルサイト「成人の方 ─ 相談や支援」
  9. 特定非営利活動法人つばさ吃音相談室 公式サイト TOPページ(2026年8月4日取得)

当事者・保護者の声の出典: V0279(note・3歳の息子の母のブログ)/ V0006(Benesse「たまひよ」の体験記・福岡県に住む母の語り。名前は仮名)/ V0347(note・3歳から吃音のある娘の母のブログ)/ V0223(愛媛言友会 公式サイト「吃音当事者からのメッセージ」・77歳の当事者の発表原稿)/ V0164(日本吃音臨床研究会の会報に掲載されたことば文学賞の最優秀作・当事者本人の手記)。いずれも公開記事。引用は原文どおりで、話者の情報は台帳の事実シートに記載のある範囲までにとどめています。

更新履歴: 2026-09-05 公開