まず結論から
- 北里大学病院の吃音外来は中学生以上が対象で、医師による吃音症の診断と、言語聴覚士による発声・発音練習を中心とした言語訓練を行うと案内されています。
- この記事を書いた時点のお知らせ欄には、問い合わせが集中したため新規の予約受付を停止していること、再開は2027年2月上旬頃を予定していること、再開はホームページで知らせることが書かれています。
- 小学生以下の子どもの評価や指導は、同じ病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科外来が対応するとされています。その診療科の言語聴覚士のページでは、吃音は未就学児が対象で、予約待ちが約4〜6か月になっていると案内されています。
- 1回の受診は医師の診察と言語訓練を含めておよそ1時間30分、通院はおおむね月1回、個人差はあるが5〜7回程度で終了が目安とされています。
- この病院では、吃音による障害者手帳の交付に関わる診断書の作成は取り扱っていないと明記されています。
ただし、ここに書いたのは公開ページを開いた時点の案内で、受付の状況も対象年齢も変わりえます。受診を決める前に必ずご自身で病院のページを開き直してください。また、これは一つの病院の運用であって、他の病院が同じやり方をしているという意味ではありません。
最初の関門は、診察室ではなく予約の電話だった
行き先が決まっても、そこから一歩が出ないことがあります。病院の予約は電話で受け付けるのが普通で、その電話こそが、吃音のある人にとっていちばん避けたい場面だからです。
当事者の声(20代会社員。首都圏で吃音外来のある病院を探し、北里大学病院の吃音外来を初診で受けた日の記録/個人ブログ)
多くの病院は、電話で予約を受け付けています。
吃音持ちの人にとって、電話はなるべく避けたい気持ちはわかります。私もできるだけ電話は避けています。
北里大学病院の吃音外来は、メールでの受付に対応しています。
東京に住む会社員が、受診先を決めるまでの経緯をブログに残しています。行き先を選ぶ理由の一番目に挙がっているのは、治療の中身ではなく「電話をかけずに予約できること」でした。話しにくさを相談しに行くための最初の手続きが、その話しにくさがいちばん出る場面になっている——受診をためらわせているのは、しばしばこの入口の設計のほうです。実際、この外来の初診は完全予約制でメールのみの受付とされており、返信に10日間程度かかる場合があるとも案内されています。
出典: 【吃音治療】北里大学病院に行ってきました|予約方法や実際のトレーニングの流れについて解説(Kateブログ)(台帳: V0359)
ところが、この記事を書いた時点で、その入口は開いていません。お知らせ欄には、中学生以上対象の吃音外来について、非常に多くの問い合わせが集中したため新規の予約受付を停止していると書かれています。再開は2027年2月上旬頃を予定しており、再開の知らせも、具体的な予約の方法や日時も、ホームページで確認してほしいとされています。個別の電話やメールでの問い合わせには答えられない、という断りもあります。つまり、いま名前を知って問い合わせても、順番待ちの列にすら並べない状態です。
同じく大人を対象にした専門外来として、国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来があります。こちらは初診専用の外来で、予約センターで専門外来の予約を取ったうえで受診する形です。ただしこの案内にも、受診希望者が多く予約が取りにくくなっている旨が添えられています。名前のついた専門外来は数が少なく、どこも同じように混んでいる、というのが実情です。
同じ病院の中でも、年齢によって行く先が変わる
「大きな病院なら診てもらえるはず」と足を運んで、思っていたのと違う場所に通されることがあります。吃音は、病院の中でどの科が扱うのかが一目では分からない症状だからです。
当事者の声(71歳男性。高専卒業後にめっき会社へ技術職で就職した当時を回想/個人ブログ)
しばらくして、「どもりの矯正に詳しい先生にアポがとれた。」と言われ、「総合病院」に行きました。受診した科は「精神科」でした。
「精神科!」僕は唖然としました。「えっ~!精神科に行って何するの?」。
会社の電話に苦しんでいた新人社員が、上司に受診先を探してもらい、勤務の一環として総合病院を訪れた場面です。案内された科の名前を聞いた瞬間の動揺が、そのまま書かれています。この人はその後、医師の見立てを受けて別の施設を紹介されることになります。どの科に行けばよいのか分からないまま連れて行かれると、たどり着いた先が自分の困りごとと結びつかない——大きな病院ほど、この段差が起きやすくなります。いま北里大学病院の案内を読むと、同じ病院の中でも年齢によって窓口が分かれていることが分かります。
出典: 吃音のこと(note「ほがらかグランパ」)(台帳: V0295)
北里大学病院の吃音外来は中学生以上が対象で、幼児や小学生以下の子どもへの吃音の評価や指導は、耳鼻咽喉科・頭頸部外科外来で対応すると案内されています。その耳鼻咽喉科・頭頸部外科が出している言語聴覚士からのお知らせを開くと、もう少し細かい条件が書かれています。リハビリテーションの対象として吃音が挙げられている一方、そこには注記があり、未就学児が対象であること、評価の結果によっては地域の療育施設を紹介する場合があること、予約待ち期間が約4〜6か月と長くなっていることが明記されています。
受診の順番も、吃音外来とは違います。このページでは、医療機関からの紹介状を持参して平日11時までに来院し、まず耳鼻咽喉科の医師の診察を受けること、言語聴覚士によるリハビリテーションが必要と判断された場合に医師から依頼が出て、そこで改めて言語聴覚士の初回評価の予約を決める、という流れが説明されています。同じ病院の名前で調べていても、大人と子どもでは入口も持ち物も別だということです。
そして、看板に「吃音外来」と書かれていない病院にも、吃音を診る言語聴覚士がいることはあります。ただし言語聴覚士の担当する仕事は幅が広いため、必ずしも全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではない、とも説明されています。そのため、あらかじめ病院などに直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会や各都道府県の言語聴覚士会に尋ねることが案内されています。
診察室では何を見られ、診断がついたら何が変わるのか
受診の目的は人によって違います。話し方を変えたい人もいれば、職場に説明するための裏づけがほしくて行く人もいます。
当事者の声(40代会社員。吃音外来を受診して診断を受けた日の記録/note)
職場に理解してもらおう。
そう思って、私は吃音外来に行った。
いくつかの検査を受け、
言葉の出方、詰まり方、緊張の反応を見てもらい、
そして、正式に「吃音」と診断された。
隠しながら働き続けることが難しくなった会社員が、職場に理解してもらうために外来を訪ねた日のことです。書かれているのは、言葉の出方、詰まり方、緊張の反応という三つ。診察室で見られていたのは、話し方の上手下手ではなく、どこでどう詰まり、そのとき体に何が起きているかでした。この人はこの日を「自分と和解した場所」と振り返っています。評価で何を確かめるかについては、専門家の合意としてまとめられた指針があります。
出典: 吃音外来に行った日(note)(台帳: V0361)
年齢を問わず吃音の評価に共通して含めるべき領域として、専門家の合意から六つが挙げられています。生まれてからの経過などの背景の情報、ことばと気質の育ち、話し方の流れと実際に出ている吃音の様子、それに対する本人の受けとめ方、周りの人の反応、そして生活のどこがどれだけ困っているか、の六つです。年齢と本人・家族の必要に応じて、それぞれをどの程度掘り下げるかを変える、とされています。
診療ガイドラインは、もう少し具体的に手順を定めています。客観的に評価するために、まとまった長さの連続した話し声を複数、録音か録画で記録し、どもった音節の割合、いちばん長く続いた詰まりの時間、話すときに一緒に出る体の動きで分析するとしています。人前ではうまく話せてしまって症状が出にくい人については、話をさえぎる、速く話すよう求めるといった負荷をかけて症状を引き出し、心理的な負担も質問紙に記録するとされています。「病院では普通に話せてしまう」という心配には、あらかじめこうした手順が用意されているということです。
一方で、診断がついても得られないものもあります。北里大学病院の案内には、この病院では吃音による障害者手帳の交付に関わる診断書の作成は取り扱っていない、と明記されています。手帳の申請を目的に受診しても、ここでは診断書は受け取れません。制度の相談が目的なら、受診の前に、その病院が診断書を書いてくれるかどうかを確かめておく必要があります。
どんな訓練を、どれくらい続けることになるのか
北里大学病院の吃音外来で行うのは、医師による吃音症の診断と、言語聴覚士による発声・発音練習を中心とした言語訓練です。本人には家庭で自主練習を行ってもらう必要がある、とも書かれています。訓練の内容は症状が一人ひとり異なるため、受診したときに担当の言語聴覚士に直接たずねてほしい、という案内です。
通院の負担の目安も公開されています。医師の診察と言語訓練を含めて1回の受診はおよそ1時間30分程度、当日の予約状況で多少前後するとされています。頻度と回数は本人の状態を考慮して医師・言語聴覚士と相談のうえ決まるとしたうえで、おおむね1か月に1回程度の通院が必要で、個人差はあるが5〜7回程度の通院で終了となる、と書かれています。これは医療機関が示している運用上の目安で、治療の成績を測った数字ではありません。
では、その訓練の中身は何を目指すものなのでしょうか。系統的な調査から、青年・成人に効果のあった治療に共通していた要素が挙げられています。まずゆっくりした話し方を集中的に練習すること、集団での練習を含むこと、練習室の外の日常場面に持ち出す練習をすること、段階を追って自分で評価し自分で管理することを含むこと、不自然に聞こえない話し方を目指すこと、続けるためのプログラムを含むこと、そして引き伸ばした話し方・やわらかい声の出だし・リズムをつけた話し方・呼吸の調整・話すことへの気持ちの持ち方の練習を行うことです。
逆に、行うべきでないとされているものもあります。薬による治療は、行うべきでないと強く否定されています。リズムをつけた話し方や呼吸の調整を唯一の、あるいは中心の柱にすること、催眠、それに何をどうするのかが分かる形になっていない吃音療法についても、勧められないとされています。ただしこちらは、勧められないという判断の根拠自体はまだ強くありません。さらに避けるべき手続きとして、日常生活に持ち出す手立てがない、ぶり返したときの備えがない、短期の成果しか確かめられていない、呼吸の変え方やリラックスだけに頼る、吃音の原因やぶり返しの責任を本人や家族に負わせる、治ることを約束して治療の目標とやり方を分かる形で説明しない、の六つが並べられています。訓練を選ぶときの物差しとして使えます。
通い始めたあと、効いているかどうかを判断する目安も示されています。少なくとも週1回の治療を3か月続けたら、治療の目標のどれかで目に見える改善があるはずで、なければ治療のやり方を見直すべきだ、というものです。集中的に行うか間隔をあけるか、外来か入院か、個別か集団かは、本人の事情を踏まえて決めるとされています。
その病院に通えないときに、どこから選び直すか
受付が止まっている、対象年齢に当てはまらない、通える距離にない——理由はさまざまですが、名前を知った外来に行けないことのほうが多いかもしれません。そのときに確かめておきたいことが、いくつかあります。
一つは、離れていても受けられる形があることです。同じ内容の言語聴覚療法を、届け方だけ変えて比べた試験を集めたレビューでは、吃音のある人について、どもった音節の割合に治療の直後から18か月後までのどの時点でも有意な差はありませんでした。研究間のばらつきも、ごく小さいものでした。同じレビューは、遠隔での提供が対面の代わりになりうると結論づけつつ、最大の限界は無作為に振り分けて比べた試験の数が少ないことであり、生活の質や満足度、費用についての根拠も乏しいと断っています。
続けやすさの面では、小さな差が出ています。子どもへの治療では、第一段階を終えるまでにかかった週数は遠隔でも対面でも同じでしたが、1回あたりの相談の平均時間には差があり、対面が40.4分、遠隔が33.4分でした。大人の試験では、電話で話すことのしやすさの評価に差はなかった一方、遠隔のほうが「とても便利」と評される頻度が有意に高かったと報告されています。子どもの流暢さに対する親の満足度には、9か月後・18か月後のいずれでも差はありませんでした。
もう一つは、看板の有無で探すのをやめることです。言語聴覚士は主に病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などのスタッフとして勤務している場合が多いとされていますが、業務の幅が広いため、全員が吃音の指導や支援を行えるわけではありません。そこで、病院などに直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会や各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるという手順が案内されています。「吃音外来」という名前を探すのではなく、「吃音のある方を担当していますか」と聞いて回るほうが、届く範囲は広くなります。
病院の外にも場はあります。言友会などの当事者の集まりは、言語聴覚士のような学術的な知識や、吃音改善のための専門的な指導・支援が受けられる場ではないと、はっきり書かれています。そのうえで、同じ問題を持つ仲間と出会い、当事者同士でないと感じられない連帯感のなかで悩みを聞いてもらったり、同じ立場から具体的な助言をもらったりと、そこでしか得られないものがあることも事実だとされています。診療ガイドラインも、自助グループへの参加を推奨していますが、その根拠は効果を測った研究ではなく、専門家の合意にもとづくものだと明記されています。
受診先を決めるときに陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 一つの外来の名前だけを覚えて、そこで止まってしまう
名前のついた専門外来は数が少なく、どこも問い合わせが集中しています。北里大学病院の吃音外来は取得時点で新規の予約受付を停止しており、国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来も予約が取りにくい旨を案内しています。一つの名前で止まると、順番が回ってくるまで何もできない期間が生まれます。看板の無い病院やことばの教室も含めて、問い合わせ先を複数持っておくほうが早く動けます。
落とし穴2 − 大人と子どもで入口が同じだと思い込む
同じ病院でも、中学生以上は吃音外来、小学生以下は耳鼻咽喉科・頭頸部外科外来と分かれています。さらに、その耳鼻咽喉科側の言語聴覚士のページでは吃音は未就学児が対象で、紹介状を持参して平日11時までに来院し、まず医師の診察を受けるという順番が示されています。予約待ちは約4〜6か月と案内されています。子どもの相談で「紹介状が要る」と後から分かると、それだけで数週間が過ぎます。
落とし穴3 − 目的と、その病院ができることがずれたまま受診する
北里大学病院は、吃音による障害者手帳の交付に関わる診断書の作成を取り扱っていないと明記しています。手帳や職場への説明が目的なら、診断書を書いてもらえるかどうかを先に確かめておく必要があります。訓練が目的なら、日常場面へ持ち出す練習や、ぶり返したときの備えが含まれているか、治ることを約束していないかを見ます。3か月続けて目に見える改善が無ければ、やり方を見直してよいとされています。
受診までの待ち時間も、空白にしなくて構いません。どんな場面で詰まりやすいか、そのとき体に何が起きているかを書き留めておくと、限られた診察の時間で伝えられることが増えます。評価では、話し方の流れだけでなく、本人の受けとめや周りの反応、生活のどこが困っているかまで見るとされているからです。
よくある質問
北里大学病院の吃音外来は、いま予約できますか?
この記事を書いた時点のお知らせ欄では、中学生以上対象の吃音外来は問い合わせが集中したため新規の予約受付を停止しているとされています。再開は2027年2月上旬頃を予定しており、再開はホームページで知らせる、個別の電話やメールでの問い合わせには答えられない、と書かれています。あくまで予定ですので、受診を考えるときは必ずご自身で病院のページを開いて最新の案内を確かめてください。
子どもでも受診できますか?
吃音外来の対象は中学生以上で、幼児や小学生以下の子どもへの評価や指導は同じ病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科外来が対応するとされています。その診療科の言語聴覚士のページでは、吃音は未就学児が対象と注記されており、評価の結果によっては地域の療育施設を紹介する場合があること、予約待ち期間が約4〜6か月になっていることが案内されています。
受診には紹介状が必要ですか?
耳鼻咽喉科・頭頸部外科の言語聴覚士のページでは、受診の際は医療機関からの紹介状を持参して平日11時までに来院し、まず耳鼻咽喉科の医師の診察を受けるという流れが案内されています。中学生以上対象の吃音外来については、紹介状が無い場合に医療費とは別の負担が生じる旨の記載があります。実際の金額や条件は変わることがあるので、受診前に病院の案内で確かめてください。
1回でどれくらい時間がかかり、何回くらい通うのですか?
医師の診察と言語聴覚士の言語訓練を含め、1回の受診はおよそ1時間30分程度で、当日の予約状況により多少前後するとされています。通院の頻度と回数は本人の状態を考慮して医師・言語聴覚士と相談のうえで決まるとしたうえで、おおむね1か月に1回程度、個人差はあるが5〜7回程度の通院で終了となる、と案内されています。
遠くて通えません。オンラインでも同じように受けられますか?
同じ内容の言語聴覚療法を届け方だけ変えて比べた試験を集めたレビューでは、吃音のある人について、どもった音節の割合に治療の直後から18か月後までのどの時点でも有意な差はありませんでした。ただし同じレビューは、無作為に振り分けて比べた試験の数が少ないことを最大の限界に挙げ、生活の質や満足度、費用についての根拠も乏しいと断っています。まずは日本言語聴覚士協会や各都道府県の言語聴覚士会に、吃音を扱っているかを問い合わせる方法が案内されています。
まとめ
- 北里大学病院の吃音外来は中学生以上が対象で、医師の診断と言語聴覚士による発声・発音練習を中心とした言語訓練を行うと案内されている。
- 取得時点では新規の予約受付を停止しており、再開は2027年2月上旬頃の予定、知らせはホームページに出るとされている。あくまで予定なので、必ず自分で開き直して確かめる。
- 小学生以下は同じ病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科外来。その言語聴覚士のページでは吃音は未就学児が対象で、紹介状を持参して平日11時までに来院、予約待ちは約4〜6か月と案内されている。
- 1回の受診はおよそ1時間30分、通院はおおむね月1回・5〜7回程度が目安。障害者手帳の交付に関わる診断書は取り扱っていない。
- 通えないときは、届け方を変えても吃音の結果に差が出なかったという報告を踏まえつつ、日本言語聴覚士協会や都道府県の言語聴覚士会に問い合わせる手順が案内されている。