まず結論から
- 県内に専門外来があります。国立障害者リハビリテーションセンター病院(埼玉県所沢市)は、言語聴覚士(聞こえ・ことば・飲み込みの障害を検査や訓練で支援する国家資格の専門職)が参加する専門外来として、小児吃音外来と成人吃音相談外来を置いています。成人吃音相談外来の対象は18歳以上で、高校生は小児吃音外来で対応すると案内されています。
- 入口の型は、大人と子どもで違います。成人吃音相談外来は初診専用で、受診を希望する人が予約センターで予約を取る形です。紹介状は「お持ちの場合は」持参、という書き方です。子どものことばの障害は、耳鼻咽喉科を受診したうえで医師に相談する入口になっています。
- 予約は取りにくい、と病院自身が書いています。「現在、受診希望の方が多く予約が取りにくくなっております」という断り書きが外来の案内に付いています。幼児吃音臨床ガイドラインも、専門家のいる機関では初診までに数か月の待機になることが多いとしています。
- 所沢以外で言語聴覚士を探す入口は、日本言語聴覚士協会の一覧にある埼玉県言語聴覚士会と、病院への直接の問い合わせです。ただし全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではないので、事前に確かめるよう案内されています。
- 公的な窓口と当事者の会は、発達障害者支援センターの全国一覧に埼玉県発達障害者支援センター「まほろば」(川越市)、埼玉県発達障害総合支援センター(さいたま市中央区)、さいたま市発達障害者支援センター(さいたま市中央区)が、全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の関東ブロックに埼玉言友会が載っています。
ただし、ここに挙げた名前・所在地・対象年齢・手続きは、いずれも各サイトを取得した時点(2026年7〜8月)の記載です。一覧に名前が載っていることは、いま受け付けているか、いま活動しているかを保証しません。行くと決めたら、必ずその団体・施設の案内を開き直し、「吃音の相談を受けていますか」「対象の年齢は」を先に聞いてください。
大人の埼玉——所沢に、18歳以上を受け付ける専門外来がある
大人になってから相談先を探す人は、子ども向けの案内の多さに一度つまずきます。会社の朝礼、電話の取り次ぎ、名前を名乗る場面。困りごとははっきりしているのに、「大人を受け付けている窓口」がどこにあるのかが見えません。埼玉の場合、その答えの一つが県内の所沢にあります。
そこに通っている当事者が、通院先を実名で書き残しています。薬剤師として働き始めてから、成人でも診てもらえる外来を探した人です。
当事者の声(薬剤師・名義「吃音症の薬剤師」。幼少期から吃音があり、中学以降は治療が途切れたまま社会人になったと書いている/個人ブログ note)
そこで「成人でも診てもらえる外来」を探しました。現在は国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来に通院しています。診察に加え、言語聴覚士の先生と発声や話し方の訓練を行っています。
幼少期から吃音があり、両親も対応を模索してくれたが、当時は情報が少なく専門的な医療機関につながることはできなかった——書き手はそう振り返っています。中学以降は治療が途切れ、そのまま社会人になりました。探すきっかけは、新卒で薬剤師として働き始め、話す場面が増えて、ことばが出ずに詰まる型の吃音(難発)に悩むようになったことです。そこで見つけたのが、国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人向けの外来でした。通って学んだのは、吃音が出にくい話し方の練習と、詰まったときの立て直し方だった、と書いています。そのうえで書き手は「効果や経過は個人差があると思います」と自分で断りを入れ、成人してからの治療は遅いのでは、と不安に思う人もいるかもしれないとしたうえで、迷っている人に向けて、まずかかりつけ医や地域の医療機関に相談してみるのも一つの方法だ、と結んでいます。この人が通う外来は、18歳以上を対象にした専門外来として病院が案内しているものです。
出典: 大人になってから吃音外来を受診した話(note)(台帳: V0294)
国立障害者リハビリテーションセンター病院は、言語聴覚療法のページで、まず各診療科を受診し、医師から言語聴覚療法の指示が出た人に対して個別または集団で言語聴覚療法を行うと説明しています。そのうえで、言語聴覚士が参加する専門外来として、小児難聴外来・言語発達・構音障害外来・小児吃音外来・成人吃音相談外来の4つを挙げています。同じ病院の成人吃音相談外来のページは、対象を「18歳以上の方(ただし高校生は『小児吃音外来』で対応いたします)」とし、初診日には問診票の記入と診察、吃音の検査を行い、後日その結果を見ながら言語訓練の方針を立てていく、と書いています。電話予約で受診日が決まった人には、問診票を印刷して受診日の前に記入を済ませて持ってくること、印刷できなければ当日その場で書くこと(その場合30分程度かかる)、紹介状を持っている場合はそれも持参することが案内されています。紹介状が無くても本人が予約を取れる型の外来です。病院の所在地は、いずれのページの末尾にも「埼玉県所沢市並木4丁目1番地」と書かれています。
所沢が吃音の研究と関わりの深い場所であることも、公開資料から読めます。同じセンターの研究所が公開している吃音の解説ページは、所在地を同じ所沢の住所で示しています。日本吃音・流暢性障害学会の大会は、第2回(2014年)がさいたま市岩槻区の目白大学岩槻キャンパスで、第4回(2016年)が国立障害者リハビリテーションセンター学院で開かれています。
では、所沢に通えない事情があるとき、県内でほかに大人を診てくれる場所はどう探すのか。この記事の資料には、この病院以外の県内の医療機関の名前は書かれていません。案内されている探し方はこうです。吃音は、日本言語聴覚士協会が「ことばの障害」に含めている問題で、言語聴覚士は主に病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などのリハビリテーションのスタッフとして勤務している場合が多い、とされています。つまり「吃音外来」という看板が無くても、吃音を診る言語聴覚士のいる病院はありえます。ただし、言語聴覚士の取り扱う業務は多岐にわたるため、必ずしも全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではありません。そこで吃音ポータルサイトは、あらかじめ病院等に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会・各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内しています。埼玉で言えば、協会の都道府県士会一覧に載っている埼玉県言語聴覚士会がそれにあたります。問い合わせるときの聞き方は「吃音を診ていますか」「吃音のある方をよく担当されていますか」で、その理由は吃音と言語聴覚士の記事に書きました。何科にかかるかの考え方は「吃音は何科・どの病院?」にあります。
「初診は予約が本当に取れません」——所沢の外来に電話する前に知っておくこと
県内に専門外来があると分かったら、次に待っているのが予約です。埼玉の読者がぶつかるのは「どこに行くか」ではなく、「行くと決めてから、いつ会えるか」のほうです。
就職活動の記録を書いた社会人1年目の当事者が、記事の末尾に、自分が利用している治療施設として所沢の病院の名前と、予約についての注意を書き添えています。
当事者の声(難発性の吃音のある社会人1年目の男性・22卒。1年半の就職活動の記録の末尾に、自分が利用している治療施設を書き添えている/個人ブログ note)
・国立障害者リハビリテーションセンター(HP)
・〒359-8555 埼玉県所沢市並木4-1
<※注意>
初診は予約が本当に取れません。
2ヶ月待ちとかになります。早めに問い合わせる事が必須です。
小学校低学年から難発の吃音があり、大学3年の5月から4年の8月末まで、100社以上の選考を受けて内定は5社だった、と書き手は自分の経過を数字で並べています。就職してからも、会社全体の会議で発表するときは「本当に地獄」で、もっと発表の練習をしてくださいと言われる、と記しています。その人が、同じ境遇の就活生に向けた長い文章の最後に置いたのが、この短い注意書きでした。施設の名前と住所の隣に、「初診は予約が本当に取れません」「2ヶ月待ちとかになります」「早めに問い合わせる事が必須です」。行くと決めた人が、次に何をすべきかだけを書いています。病院の側の案内も、同じことを別の言葉で書いています。
出典: 就活で100社以上落ちた「吃音」就活生の体験談(note)(台帳: V0039)
成人吃音相談外来のページには、「初診専用の外来です。受診希望の方は予約センターで当専門外来の予約を取った上で受診をしてください」とあり、そのすぐ下に「現在、受診希望の方が多く予約が取りにくくなっております。大変申し訳ありませんがご理解をお願い致します」と書かれています。外来担当表には「完全予約制」と添えられています。上の書き手の「2ヶ月待ち」は一人の経験で、いまの待ち時間を示すものではありませんが、病院自身が予約の取りにくさを認めている以上、電話は早いほうがよい、という判断は資料と食い違いません。
待たされるのは、その窓口がたまたま混んでいるからではなく、受け皿の側の数の問題です。幼児吃音臨床ガイドライン(国立障害者リハビリテーションセンターを中心とする研究班が2021年に出したもの)は、吃音の専門家がいる機関には症状の軽い重いにかかわらず多くの子が来るため、初診までに数か月の待機になってしまうことが多く、治療を急ぐ必要がある子に選択的に対応することがなかなかできない、と現状を書いています。そして、診療を希望しても放置されてしまう、という現状があることも認めています。だからこそ同じガイドラインは、幼児の吃音の治療に対応できる機関が中心となって、保健センター・園・地域の耳鼻咽喉科や小児科・小学校のことばの教室・自治体の子育て支援や母子保健の窓口などと連携し、発見と基本的な対応を分担する体制を求めています。所沢の順番を待つあいだに身近な機関で経過を見てもらう、という形は、専門家の側も想定している道筋です。
待つ時間は、記録に変えられます。吃音の評価について専門家の合意で作られた指針は、年齢を問わず包括的な評価に共通する中核領域として、吃音に関する背景の情報、ことば・言語・気質の発達、話し方の流暢さと吃音の出方、本人の反応、周囲の反応、生活への支障の6つを挙げています。所沢の外来が事前に記入して持参するよう求めている問診票も、その入口です。何を書き留めておけばよいかは吃音の相談先の記事に、紹介状が要る大学病院の順路と待ち時間の実例は九州大学の吃音外来の記事にあります。
子どもの埼玉——小児吃音外来は高校生まで、入口は耳鼻咽喉科から
子どもの吃音で相談先を探す保護者が埼玉で最初に聞く名前も、やはり所沢です。ただし、大人の外来と同じ入口ではありません。そして、通える距離に専門の窓口があるかどうかで、選べる方法が変わることがあります。
二人の娘に吃音がある親が、幼稚園の運動会の日の朝、子どもたちが起きる前に書いた記事があります。長女に受けさせたい方法が近くで受けられず、「国リハ」の受診のときに相談することにした、という場面です。
二人の娘に吃音がある保護者(名義「mmmmakaron」/育児ブログ「吃音のある子どもと親の成長記録」)
リッカムプログラムは3~6歳対象という事で、長女はもうギリギリ!数か月前から受けられるところを探しているのですが、なかなか近くで受けられるところはなく、色んな所を受診するのも、、、と思い、6月に国リハを受診予定なので相談して、リッカムはうちの子に効果があるのかなど聞いてきたいと思います。
この親が調べていたのは、幼児の吃音の二つの方法でした。リッカム・プログラム(子どもが流暢に話せたときに大人が決まった反応を返す方法。3〜6歳が対象とされ、言語聴覚士と一緒に行うよう本人も書いています)と、DCM(子どもに求められる水準を下げて負担を減らす考え方)です。担当の言語聴覚士(ST)はすでにいて、DCMに似た助言を受けていると続けて書いています。けれど長女は対象年齢の上限に近づいていて、リッカムを受けられる場所が近くに無い。あちこち受診するよりは、と選んだのが、6月に予定していた「国リハ」の受診でした。本人は正式な名前を書いていませんが、この記事で扱っている国立障害者リハビリテーションセンター(所沢市)を指す略称と読めます。そこで何を聞くつもりかも、そのまま書かれています。この家の判断の背景にあるのは、受けたい方法を近くで受けられないという事情で、ガイドラインは介入を始める時期について、専門機関の受け入れ状況によって前倒しも先延ばしもありうると認めています。
出典: DCMとリッカムプログラムの効果(吃音のある子どもと親の成長記録)(台帳: V0357)
所沢の病院で子どもの吃音を診る窓口は、大人と入口が違います。言語聴覚療法のページは、「きこえの障害・小児のことばの障害」について、耳鼻咽喉科を受診したうえで医師に相談するよう案内しています。成人の側が「各診療科を受診の上、医師にご相談ください」であるのに対し、子どもは科が指定されている形です。年齢の区切りは、成人吃音相談外来のページに「高校生は『小児吃音外来』で対応」と書かれているので、小児吃音外来は幼児だけの外来ではなく、高校生までの窓口として置かれています。病院の外来に着いてから何が起きるか——初診で見られること、「様子を見ましょう」の中身、ことばの教室との違い——は小児吃音外来の記事にまとめています。
所沢まで行く前に、かかりつけの耳鼻咽喉科や小児科で何が起きるかも、幼児吃音臨床ガイドラインが手順にしています。吃音が出はじめて間もない幼児の保護者は耳鼻咽喉科・小児科を受診することが多く、そこでは問診票で吃音のことと全般的な発達・ことばの発達を確かめ、診察で発声・発語の器官に問題がないかを調べる。明らかに吃音と診断でき、吃音が出てから1年以上たっている、あるいは4歳を超えている場合は、言語聴覚士などへ紹介する。軽度のままで、出てから1年以内・4歳未満なら、家庭でできる対応のリーフレットを渡して数か月ごとに様子を見る、という分かれ目です。そして、短時間の診療の場面では症状が出ないことが多いが、保護者は心配して来ているのだから、安易に「吃音なし」「心配なし」と決めつけないでほしい、と医師の側に念を押しています。「様子を見ましょう」と言われたら、その様子見に数か月ごとの面談と家庭での記録が含まれているのかを、その場で聞いてみてください。ガイドラインは経過観察の期間に、資料を渡して関わり方を伝えること・家庭で日々の症状を記録してもらうこと・定期的な面談で記録をもとに変化を見ること・1年の中で悪化があれば言語聴覚士につなぐこと、という中身を定めています。
月2回以上の指導を始める時期についても目安があります。年少組までは経過観察的な支援を基本とし、年中組では開始を検討し、年長組では開始を推奨する——そのうえで、症状の重さや改善の傾向、保護者の状況、専門機関の受け入れ状況によっては前倒しも先延ばしもありうる、とガイドラインは書いています。上の親の「長女はもうギリギリ」という一行は、本人が書いているリッカムの対象年齢(3〜6歳)の上限と、近くに受けられる場所が無いという事情が重なったところに出ています。学年ごとの目安の読み方は3歳の吃音の記事に書きました。
就学後の入口は、病院とは別にあります。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターは、通っている学校か地域の教育委員会に相談すれば、その地域の学校に設置されている「ことばの教室」(在籍する学級とは別に、決まった時間だけ通ってことばの指導を受ける教室)などを紹介してくれるでしょう、と答え、中学校にも「ことばの教室」は少しずつ設置されてきている、と書いています。ガイドラインも、公立学校のことばの教室がどの小学校にあるか、幼児の吃音の相談に対応しているかは、地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせるとよい、としています。学校の名前を先に探すのではなく、教育委員会に聞く——さいたま市でも、県内のほかの市でも、入口はこの順番です。
埼玉言友会——毎月の例会で、何をしているか
相談先を探す人の全員が、診察や訓練を探しているわけではありません。「埼玉に、同じことで困っている人はいるのか」を確かめたい人がいます。その人にとっての入口は、病院ではなく当事者の会です。
埼玉言友会は、自分たちの例会の記録をウェブに残しています。2016年8月の例会は「電話練習ロールプレイ例会」でした。参加した人たちの感想が、年代と性別、会員かどうかだけを添えて載っています。
埼玉言友会の例会に参加した当事者たちの感想(自助団体の活動記録・2016年8月。年代・性別と会員/非会員の別だけが公開されている)
・電話対応は苦手だったのですが、いい経験になりました。友達との電話とは違うので難しい面もありました。次も参加します。(20代男性、非会員)
・ビジネス場面に即した電話対応ということで、緊張感がありました。言い換えのきかない定型文を言わなければならない局面が多く、苦戦しました。
この日の例会は、部屋を二つ借り、参加者8名を4人ずつに分けて、スマートフォンの通話アプリで電話のやりとりを実演する形でした。お題は美容室の予約と、病院での電話の取り次ぎ。例会の担当者は、とても緊張したが周りの人のおかげで楽しく行えた、今日のことを忘れず日常でもできるだけ電話対応から逃げないでやりたい、と報告に書いています。感想を寄せた7人は20代から60代まで。「次も参加します」と書いた20代の男性は、会員ではなく、この日に来た人でした。言い換えのきかない定型文で苦戦した、台本があったからか仲間が相手だったからか落ち着いてできた、店員の側は普段話さないので難しかった——一人ひとりの感想が、そのまま並んでいます。この会は、全国組織の加盟団体一覧に載っている団体です。
出典: 8月例会「電話練習ロールプレイ例会」(埼玉言友会 活動記録)(台帳: V0139)
言友会は、吃音のある人が日を決めて集まり、互いの問題について話し合う当事者の会(セルフヘルプグループ、自助グループとも呼ばれます)です。全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の関東ブロックには、茨城・栃木・群馬の言友会に続いて埼玉言友会が載り、そのあとに千葉言友会・東京言友会・よこはま言友会が並んでいます(2026年8月30日閲覧時点)。この一覧には団体名が並ぶだけで、各団体の連絡先や例会の日時は書かれていません。そして同じ全国組織は、子どもの吃音への対応方法の確認や医療機関の紹介といった個別の相談には原則として応じることができないとし、希望する場合は近くの加盟団体まで連絡してほしいと明記しています。連絡する先は全国の窓口ではなく、埼玉の団体のほうです。近くの自助グループの情報は、ホームページで調べるか言語聴覚士会に問い合わせれば分かる、と公的機関も案内しています。
当事者の会は、何をしてくれて、何をしてくれない場所なのか。吃音ポータルサイトは、当事者の集まりなので、言語聴覚士のように吃音についての学術的な知識や、改善のための専門的な指導や支援が受けられるわけではない、とはっきり書いています。そのうえで、自分と同じ問題を持つ仲間と出会い、当事者同士でないと感じることのできない連帯感の中で悩みを聞いてもらったり、同じ立場からの具体的なアドバイスをもらったりできるという、そこでしか得られないものがあることも事実だ、と続けています。上の例会で行われていた「電話の練習」は、治療ではなく、この後半のほうにあたります。ドイツの診療ガイドラインも、自助グループへの参加を、臨床の合意にもとづく推奨として挙げています。ドイツの団体を例にした記述なので日本の団体の評価にそのまま当てはめることはできませんが、専門的な治療とは別に「勧める」という位置づけは、上の線引きと重なります。
埼玉で開かれた当事者の場は、ほかにも公開資料に残っています。吃音のある若者が接客に挑戦する「注文に時間がかかるカフェ」の公式ページの開催一覧には、2023年10月7日に埼玉県越谷市(文教大学教育学部障害児教育学ゼミ)、2023年11月19日に埼玉県さいたま市(合同会社リハ・クリエイティブ)で開かれたことが載っています(2026年8月30日閲覧時点)。ただしこのカフェは、接客をしたい若者や企業からの依頼で開く催しで、決まった地域での定期開催や常設店は無く、吃音のある人同士の交流というより一般のカフェだと公式ページ自身が書いています。同じ年の7月には、当事者が監督した吃音の映画の上映会がさいたま市南区の研修センターで予定され、東京都言語聴覚士会がお知らせ欄に載せていました。成人分野で働く人にも小児分野で働く人にも、と呼びかける文面で、宛先は言語聴覚士でした。すでに過ぎた催しなので、これから開かれるものとしては引けませんが、埼玉で当事者と専門職が同じ場に集まった記録として残っています。東京まで足を延ばすなら、毎月開かれている例会と公的施設の無料相談を吃音カフェ東京の記事にまとめています。
埼玉の公的な窓口と、言語聴覚士の探し方——名前が載っているもの
埼玉の公的な窓口の名前は、国立障害者リハビリテーションセンターが公開している発達障害者支援センターの全国一覧に載っています。埼玉県の欄には、埼玉県発達障害者支援センター「まほろば」(川越市平塚新田東河原)と埼玉県発達障害総合支援センター(さいたま市中央区新都心)が、さいたま市の欄にはさいたま市発達障害者支援センター(さいたま市中央区鈴谷・さいたま市障害者総合支援センター内)が並んでいます(2026年8月30日取得時点)。県の窓口が川越とさいたま新都心の二つに分かれ、さいたま市はさらに市の窓口を持っている——自分の担当がどこかは、住んでいる市で変わります。一覧の冒頭には、人口規模や交通アクセス、既存の地域資源の有無などによってセンターごとに事業内容が異なるので、初めて利用する人はまず住んでいる地域を担当しているセンターに問い合わせてほしい、と書かれています。
ただし、この一覧そのものは吃音に触れていません。吃音の相談先として問い合わせてよいことは、同じセンターのQ&Aが「学校以外に吃音の相談を受け入れている専門機関については、各都道府県にある言語聴覚士会や発達障害者支援センターなどに問い合わせてみるとよい」と案内していることで担保されます。一方でガイドラインは、発達性吃音は発達障害者支援法に規定される発達障害なので全国の発達障害者支援センターに相談することも可能だが、必ずしも吃音に関する情報が集約されていないことがある、と断っています。窓口の名前が分かったら、「吃音の相談を受けていますか」を先に聞くことになります。
言語聴覚士を県内で探す順番も、ガイドラインが示しています。治療や相談ができる近隣の施設が分からない場合は、地元の保健センターに問い合わせるか、各都道府県の言語聴覚士会に問い合わせるとよく、それでも近隣の相談機関が見つからなければ、日本言語聴覚士協会に問い合わせることを勧める、という順番です。埼玉で言えば、保健センターと埼玉県言語聴覚士会が、その最初の二つにあたります。幼児の相談先の種類としては、幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する発達や言語の相談室、そして地域の児童発達支援センター(就学前の子どもの発達を支援する施設。言語聴覚士が在籍する場合が多く、吃音の相談窓口になっているとされています)が挙げられています。そしてガイドライン自身が、相談に対応している施設の種類は多いものの、吃音に対応しているかどうかを明示していない場合がしばしばあって分かりにくく、問い合わせ先でも必ずしも把握しきれていない場合がある、と認めています。「所沢に国の外来がある」という一つの事実だけが目立つ埼玉でも、それ以外の窓口については、この分かりにくさがそのまま当てはまります。
埼玉で辿る入口を、順番に並べる
ここまでの入口を、種類ごとに並べ直します。所沢の外来を一番上に置きますが、そこが混み合っている以上、それ以外の入口も一緒に持っておくのが埼玉の探し方です。窓口の名前や手続きは変わりやすいので、名前を覚えるより辿り方を持っておくほうが長持ちします。
- 県内の専門外来(所沢)— 国立障害者リハビリテーションセンター病院(埼玉県所沢市)の成人吃音相談外来は18歳以上が対象で、高校生は小児吃音外来。初診専用・完全予約制で、本人が予約センターで予約を取り、問診票を事前に記入して持参、紹介状は持っていれば持参。子どものことばの障害は耳鼻咽喉科を受診したうえで医師に相談する入口。受診希望が多く予約が取りにくい、と病院自身が案内しています。
- 大人と中高生(所沢以外)— 吃音を診る言語聴覚士のいる病院を探すには、病院に直接問い合わせるか、埼玉県言語聴覚士会・日本言語聴覚士協会に尋ねます。全ての言語聴覚士が吃音を扱えるわけではないので、「吃音を診ていますか」を先に聞くこと。中学生以上で、本人が隠したい・認めたくない気持ちがあるなら無理に受診させることはなく、保護者が先に相談に行き「聞いてきてほしいことがあったら教えて」と本人に尋ねるやり方が勧められています。県外の専門外来(北里大学病院)の受付状況は千葉の記事に書きました。
- 就学前の子ども— かかりつけの耳鼻咽喉科・小児科では、吃音が出てから1年以上、あるいは4歳を超えていれば言語聴覚士などへ紹介する分かれ目が示されています。近隣の施設が分からなければ、地元の保健センターか埼玉県言語聴覚士会に問い合わせ、それでも見つからなければ日本言語聴覚士協会へ、という順番です。
- 就学後の子ども— 通っている学校か、地域の教育委員会に相談する。その地域の学校に設置されている「ことばの教室」などを紹介してもらえます。どの小学校にあるか、幼児の相談に対応しているかも、地元の小学校か各地域の教育委員会に問い合わせるとよいとされています。中学校のことばの教室は少しずつ設置されてきている段階です。
- 公的な相談窓口— 埼玉県発達障害者支援センター「まほろば」(川越市)、埼玉県発達障害総合支援センター(さいたま市中央区)、さいたま市発達障害者支援センター(さいたま市中央区)が全国一覧に載っています。吃音の相談先として問い合わせてよいことは同じセンターのQ&Aが案内していますが、吃音の情報が集約されていないことがある、とガイドラインは断っています。
- 当事者の会— 全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の関東ブロックに埼玉言友会が載っています。全国組織は個別相談に応じられないので、連絡先は地域の団体です。近くの自助グループの情報は、ホームページで調べるか言語聴覚士会に問い合わせれば分かるとされています。
相談先の総論——何科に行くのか、言語聴覚士とはどういう職業か、予約待ちはどのくらいか、初回に何を持っていくか、オンラインで足りるか——は吃音の相談先の記事にまとめています。当てはまる症状があるかどうかで迷っているときは吃音症チェックの記事へ。通える範囲に無いときにオンラインでどこまで受けられるかは吃音の相談先が近くにないときの記事に書いています。同じ型の地域の記事に千葉、札幌、横浜、福岡、広島があります。
埼玉で相談先を探すときに陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 「所沢に国の外来がある」で安心して、予約の壁で止まる
県内に専門外来があることは、埼玉の強みです。けれどその外来は、病院自身が「受診希望の方が多く予約が取りにくくなっております」と書いている窓口です。ここで探すのをやめてしまう人がいますが、吃音は言語聴覚士が扱う「ことばの障害」に含まれ、言語聴覚士は病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などに勤務していることが多いとされています。看板が無くても、吃音を診る言語聴覚士のいる病院はありえます。探す先は病院への直接の問い合わせと、埼玉県言語聴覚士会・日本言語聴覚士協会です。所沢の順番を待ちながら、身近な機関で経過を見てもらう形は、ガイドラインが求めている分担そのものです。
落とし穴2 − 年齢の区切りと入口の科を見ないまま電話する
同じ病院の中でも、対象年齢で窓口が分かれています。成人吃音相談外来は18歳以上が対象で、高校生は小児吃音外来です。大人は本人が予約センターで予約を取る型ですが、子どものことばの障害は耳鼻咽喉科を受診したうえで医師に相談する型です。中学生以上の子については、本人が隠したい気持ちがあるなら無理に受診させず、保護者が先に相談に行くやり方も示されています。案内の一行目に近いところにある対象年齢と入口の科を、先に見てください。
落とし穴3 − 相談の日に症状が出ず、手ぶらで帰ってくる
やっと会えた日に限って、子どもがすらすら話す。大人も、診察室では出ないことがあります。幼児吃音臨床ガイドラインは、短時間の診療場面では症状が出ないことが多いと医師の側に念を押しています。専門家の合意で作られた評価の指針は、年齢を問わず包括的な評価に共通する中核領域として、背景の情報、ことばと言語と気質の発達、話し方の流暢さと吃音の出方、本人の反応、周囲の反応、生活への支障の6つを挙げています。相談を受ける側が見ようとしているのがこの6つなら、家で出ているときの様子をこの順に書き留めて持っていくと、その場で出なかった日の材料になります。所沢の外来が事前に記入して持参するよう求めている問診票も、同じ役目です。まずは気づいたことを書き留めることから小さく始め、言語聴覚士やことばの教室に相談できる場合はそちらが確実です。持ち物の詳しい話は吃音の相談先の記事にあります。
よくある質問
埼玉県内で吃音を診てもらえる病院はどこですか?
この記事の資料に名前が書かれている県内の医療機関は、国立障害者リハビリテーションセンター病院(埼玉県所沢市)です。言語聴覚士が参加する専門外来として小児吃音外来と成人吃音相談外来を置いています。それ以外の県内の医療機関の名前は資料に書かれていません。案内されている探し方は、病院等に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会・各都道府県の言語聴覚士会に尋ねることで、埼玉では協会の一覧にある埼玉県言語聴覚士会がそれにあたります。全ての言語聴覚士が吃音を扱えるわけではないので、「吃音を診ていますか」を先に聞くことが勧められています。
所沢の成人吃音相談外来は、どうやって予約しますか?紹介状は要りますか?
初診専用の外来で、受診を希望する人は予約センターでこの専門外来の予約を取ったうえで受診する形です。紹介状は「お持ちの場合はそちらもお持ちください」という書き方で、必須とは書かれていません。電話予約で受診日が決まったら、問診票を印刷して受診日の前に記入を済ませて持参するよう案内されています(印刷できない場合は当日その場で記入し、30分程度かかる)。「現在、受診希望の方が多く予約が取りにくくなっております」という断り書きが付いているので、早めの問い合わせが現実的です。
子どもは何歳まで小児吃音外来ですか?どの科を通りますか?
成人吃音相談外来の対象は18歳以上で、「ただし高校生は『小児吃音外来』で対応いたします」と書かれています。つまり小児吃音外来は高校生までの窓口です。同じ病院の言語聴覚療法のページは、小児のことばの障害について、耳鼻咽喉科を受診したうえで医師に相談するよう案内しています。かかりつけの耳鼻咽喉科・小児科では、吃音が出てから1年以上、あるいは4歳を超えていれば言語聴覚士などへ紹介する分かれ目が、幼児吃音臨床ガイドラインに示されています。
埼玉言友会には、どうやって連絡すればいいですか?
全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の関東ブロックに埼玉言友会が載っていますが、この一覧には団体名が並ぶだけで、各団体の連絡先や例会の日時は書かれていません。全国組織は個別の相談には応じられないと明記し、近くの加盟団体に連絡するよう案内しています。近くの自助グループの情報は、ホームページで調べるか言語聴覚士会に問い合わせれば分かる、と公的機関も書いています。会は専門的な指導の場ではありませんが、当事者同士でしか得られないものがあるとされています。
発達障害者支援センターは、埼玉ではどこですか?吃音のことを相談してもいいのですか?
国立障害者リハビリテーションセンターの全国一覧では、埼玉県の欄に埼玉県発達障害者支援センター「まほろば」(川越市)と埼玉県発達障害総合支援センター(さいたま市中央区)が、さいたま市の欄にさいたま市発達障害者支援センター(さいたま市中央区)が載っています(2026年8月30日取得時点)。センターごとに事業内容が異なるので、まず住んでいる地域を担当しているセンターに問い合わせるよう一覧の冒頭に書かれています。吃音の相談先として問い合わせてよいことは同じセンターのQ&Aが案内していますが、幼児吃音臨床ガイドラインは、必ずしも吃音に関する情報が集約されていないことがある、と断っています。
まとめ
- 埼玉には県内に専門外来がある。国立障害者リハビリテーションセンター病院(所沢市)の成人吃音相談外来は18歳以上、高校生は小児吃音外来。子どものことばの障害は耳鼻咽喉科を受診したうえで医師に相談する入口。
- 成人の外来は初診専用・完全予約制で、本人が予約センターで予約を取り、問診票を事前に記入して持参する。紹介状は持っていれば持参。ただし「受診希望の方が多く予約が取りにくい」と病院自身が書いている。専門機関は初診まで数か月の待機になることが多い。
- 所沢以外で言語聴覚士を探すなら、病院への直接の問い合わせと埼玉県言語聴覚士会・日本言語聴覚士協会。全ての言語聴覚士が吃音を扱えるわけではないので、「吃音を診ていますか」を先に聞く。
- 就学前の子どもは、かかりつけの耳鼻咽喉科・小児科での分かれ目(出てから1年以上/4歳超で言語聴覚士へ紹介)と、経過観察の中身(資料・家庭での記録・定期的な面談)を知っておく。就学後は学校か教育委員会からことばの教室へ。
- 公的窓口は、埼玉県発達障害者支援センター「まほろば」(川越市)・埼玉県発達障害総合支援センター(さいたま市中央区)・さいたま市発達障害者支援センター(さいたま市中央区)。吃音の情報が集約されていないことがあるので、「吃音の相談を受けていますか」を先に聞く。
- 当事者の会は、全国言友会連絡協議会の一覧に載る埼玉言友会。会は専門的な指導の場ではないが、そこでしか得られないものがある。一覧に載っていることは、いま受け付けていることと別。行く前に必ず案内を開き直す。
