2歳の吃音症、様子見でいい?|日本のガイドラインが示す判断ライン

2歳の吃音症、様子見でいい?|日本のガイドラインが示す判断ライン
目次

「昨日まで普通に話していた2歳の子が、急に『ぼ、ぼ、ぼく』と同じ音を繰り返すようになった」——吃音(きつおん、どもり)が2歳ごろに出はじめると、これは吃音症なのか、何かきっかけがあったのか、このまま様子を見ていいのか、迷って不安になりますよね。

この記事では、日本の「幼児吃音臨床ガイドライン」が2歳という時期をどこに置いているかを軸に、様子見と相談の分かれ目を具体的に整理します。あわせて、「ある日急に始まる」という発症の仕方、見分け方(連発・伸発・難発)、家庭での接し方、何科に相談するか、そして自然に治る割合とそのまでを、研究と公的資料の出典つきでまとめます。

ソンタクマン(toVoice 運営)
吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。気になる症状があるときは、言語聴覚士のいる医療機関やことばの教室にご相談ください。

まず結論から

  • 2歳ごろに始まるのは、めずらしいことではありません。発症が集中するのは2歳から4歳で、人口のおよそ8〜11%が吃音を発症するとされ、しかも発症の4割は「ある日急に」始まると報告されています。
  • 育て方が原因ではありません。発症要因の7割以上が遺伝性で、育て方が原因だとする考え方(診断原因説)は否定されています。
  • 日本のガイドラインは、2歳を「待つ」時期に置いています。最初の1年の重症度は予後と関連しないので待機する、という方針です。積極的な介入の開始は年中組で検討・年長組で推奨なので、2歳は経過観察が基本の時期にあたります。
  • ただし、待たずに相談してよい例外条件があります。重症/悪化している/発話が苦しそう/本人が気にしている 等、そして就学の1年程度前になっても軽快傾向がないことが、治療の必要性の判断基準として挙げられています。
  • 見通しは明るいものの、数字には幅があります。吃音が出はじめてから2〜3年程度までの経過で7割以上が自然に治るとされる一方、各国の追跡研究をまとめた総説では回復率は68%〜96%と開きがあります。

ただし、自然に治らない子を早い時期に確実に見分ける指標は、いまのところありません。この記事に出てくる目安は「相談していいかどうか」を考える材料であって、診断ではありません。

これは吃音? — 2歳の親が最初に見るもの

2歳前後は、単語が二語文・三語文へとつながり、話したいことが一気に増える時期です。この時期に親が最初に気づくのは、たいてい「同じ音の繰り返し」です。そして多くの家庭で、それは前ぶれなく始まります。

当事者の父(43歳・シングルファザー/たまひよの育児インタビュー。聞き手の質問行も入っています)

――YouTubeではおうきくんの吃音についても発信しています。気になり始めたのはいつごろですか?

二か月のパパ 2歳半ごろから、緊張したり興奮したりするとどもるなと感じていました。ことばの最初の音を発するときに「おー、おー、おうき」のように詰まってしまうことがありました。 YouTubeやネットなどを見ていろいろと情報を探してみたら、おうきの場合はどうやら吃音症の中の「連発(れんぱつ)」や「伸発(しんぱつ)」というものらしいです。

3歳児健診で相談したことを動画にして投稿してみたら、コメントで「私も吃音症です」「子どもが同じ症状です」「こんなふうに話すといいですよ」とたくさんアドバイスをいただきました。とても参考になりました。

ひとりで子育てをしている父親が、2歳半ごろに息子のことばの出だしが詰まることに気づいた場面です。緊張したとき、興奮したときに出る——出やすい場面を先に見つけ、それから名前を調べにいった順序で語られています。調べた結果としてたどり着いたのが「連発」「伸発」という呼び方でした。そして3歳児健診で相談したことを動画にしたところ、同じ立場の人たちから返信が返ってきた、と続きます。2歳の保護者が最初にすることは、診断名を確定させることではなく、いつ・どんな場面で出るかを見ておくことです。専門家も、吃音は場面によって出方が変わるものとして説明しています。

出典: シングルで育てる息子。2歳半ごろからどもるようになり、吃音が出るように(たまひよ)(台帳: V0049)

吃音の中核となる症状は3つです。2歳の子の様子がどれに当てはまるか、まず落ち着いて見てみましょう。

  • 連発(れんぱつ):ことばを繰り返す。例「ぼぼぼぼくは・・・」。吃音が出はじめてすぐの幼児期は、この連発の症状が多いとされています
  • 伸発(しんぱつ):音を引き伸ばす。例「ぼーーーーくは」
  • 難発(なんぱつ):ことばがなかなか出ない。例「・・・・ぼくは」

ただし、この3つ以外の症状——たとえば人前で話したがらない、といった様子のほうが目立つ場合もあります。また、話しているときに顔をしかめたり、手足を動かしたりする動きは「随伴症状」と呼ばれ、吃音にかなり特異的だとされています。

そして、2歳の保護者にいちばん知っておいてほしいのがここです。吃音の始まり方として典型的なのは、2〜3歳で二語文以上をしゃべり出す時期だとされています。そのうえ、発症の4割は「ある日急に」始まると報告されています「昨日まで普通に話していたのに」「突然どもり始めた」というのは例外ではなく、4割はそういう始まり方をするということです。それまで普通に話せていたぶん、あとから何かが起きたせいだと思われがちですが、資料が主な原因に挙げているのは遺伝子の変異です。

数の規模でいうと、吃音は幼児の1割近くに発症します。国内では毎年10万人近くが発症する計算だ、と書かれています。国内の研究では3歳までの発症率が8.9%と報告されており、これは海外における近年の報告とかなり近い値だとされています。近年の幼児期の調査で報告されている発症率は、約8〜11%程度です。一方で、ある特定の時点で吃音のある人が人口に占める割合は、学童期以降成人までで1%より少ない0.8%が妥当だといわれています。発症する子は多く、その多くが途中でいなくなる——この差が、次に出てくる「自然に治る割合」です。

2歳から4歳の間に人口の約8〜11%が吃音を発症すること、国内の研究では3歳までの発症率が8.9%であること、発症した子の4割はある日急に始まることを示す図。前の2つは分母が子ども全体、4割は分母が発症した子で、別の割合
図1: 発症のピークは2〜4歳、およそ8〜11%。しかも発症の4割は「ある日急に」始まる。出典: 日本吃音・流暢性障害学会「吃音(きつおん)について」/発達障害ナビポータル

親のせい? ストレスのせい? — 学会誌が否定していること

2歳で吃音が出ると、多くの保護者が「何が原因だったのか」を探し始めます。下の子が生まれた、保育園に入った、あのとき強く叱った——身に覚えのある出来事はいくらでも見つかります。そして、家族や親戚から原因を指摘されることもあります。

当事者の子の母(元保育士・保育士歴10年以上/個人ブログ。長男が2歳頃に発症)

吃音について調べると、「成長とともに自然に治ることも多い」と書かれている一方で、「長く続くケースもある」と知り、不安は大きくなるばかりでした。

我が家はパパの家系が吃音持ちで吃音は約7,8割は遺伝的要因だということなので

「このまま治らなかったらどうしよう」「何か間違った対応をしてしまったら…」

と不安な日々を過ごしていました。

元保育士の母親が、長男の吃音に2歳頃に気づいたあとの時期を振り返った記録です。子どもの発達を仕事として見てきた人でも、調べれば調べるほど「治る」と「続く」の両方が出てきて不安が増した、と書かれています。父方の家系に吃音のある人がいること、そして遺伝の関与が大きいらしいと知ったことが、この母親の場合は安心ではなく心配の材料になっていました。そのうえで「何か間違った対応をしてしまったら」と自分の側を疑っている——この2つが同時に起きるのが、2歳の時期の保護者によく見られる形です。ここで押さえておきたいのは、遺伝の関与が大きいという知見と、育て方への自責が、本来まったく別の話だということです。

出典: 【体験談】2歳から始まった吃音…8歳の今どうなった?(KABろぐ)(台帳: V0063)

日本耳鼻咽喉科学会会報の総説は、この点をはっきり書いています——発症要因の7割以上が遺伝性であり、育て方が原因だとする「診断原因説」は否定されている双子を対象にした研究からも、吃音の要因のおよそ8割は、その子が生まれつき持っている体質によるものだと示されています。

吃音ポータルサイトは、保護者に向けてさらに直接的です。原因はまだ完全に解明されていないと断ったうえで、保護者の関わり方のまずさから子どもの吃音が起きることは決してない、と言い切っています。そのうえで示されているのは、子ども自身がもともと持っている素因(生まれつきの体質)と、環境の側の要因とが、ある条件のもとで重なったときに起きるのではないか、という見立てです。

それでも「愛情不足では」「ストレスでは」と言われてしまうのはなぜか。歴史があるからです。吃音の原因については、利き手を直させたのが悪い、親が本人に意識させたのが悪い、下の子ができて愛情が足りない、習い事のストレスのせいだ——こうした説が並べられ、環境の側、とりわけ養育者に原因を求める見方が長く語られてきた背景があります。母親の育児のしかたを祖父母から責められている家庭もあるため、祖父母にも同じ説明を届けることが欠かせない、とも書かれています。

そうした説がどう否定されたかも、記録に残っています。1930年代に唱えられた「利き手矯正説」は、吃音のある人46名と吃音がない人46名を集めて利き手を比べた研究で、吃音のある人たちに左利き・両手利き・矯正された人が特別多いわけではないと分かったことで否定されました。1人や2人の事例ではなく、大勢を集めて比べる——それが、この説を否定した方法です。そうして否定された説が、いまも家庭や親族のあいだで語られることがある、というのが先ほどの話です。

「ストレスのせいでは」という問いにも、同じ答え方ができます。日本吃音・流暢性障害学会は、きょうだいや親戚、所属している集団に向けて、吃音は病気ではないこと、緊張やストレスや家庭環境のみから生じるものではないこと、本人がわざとやっているわけではないことを伝えるよう勧めています。「ストレスは関係ない」ではなく「それだけでは生じない」——2歳の家庭で起きた出来事を、原因として一つに絞らなくてよい、という意味です。

何をして、何をしないか — 2歳の子への接し方

「待つ」といっても、何もしないわけではありません。ガイドラインは、待つあいだの過ごし方として「楽しくお喋りできるように環境を整える」ことを挙げ、これは治癒しない結果になっても有用だとしています。では、具体的に何をすればいいのでしょうか。

当事者の子の母(長男が2歳半のとき次男が誕生/NPO法人の子育て相談コラムに寄せられた体験)

そこで夫とも話し合い、彼のストレスを少しでも軽減出来る方法を考えました。体を動かすのが大好きな子だったので、朝出勤前の夫が毎日散歩や公園遊びに連れ出しました。関わり方もなるべく上の子を優先にして行動しました。例えば絵本の読み聞かせの途中で下の子が泣いてもやめませんでした。夜寝る時やお風呂に入る時もなるべく長男を優先しました。ときには大泣きしている下の子が気にはなりましたが、今はゴメンと割り切って。

長男も25歳になり、当時の記憶は全くないそうです。神経質な子かも…と心配ばかりしていましたが、今ではどんな国にも1人で行く程頼もしく自由な息子に成長しました。

長男が2歳半のときに次男が生まれ、早産で1か月ほどの入院があった家庭の記録です。母親は原因を思い巡らせ、病院にも相談しています。そのうえで実際に手を動かして変えたのが、持ち時間の配り直しでした。朝の散歩は父親が担当し、絵本の読み聞かせは下の子が泣いても中断しない、寝るときも風呂も上の子を先にする。そして最後の一行が、いまは25歳になった息子は当時の記憶が全くないと言う、という報告です。ここで語られているのは治療の方法ではありません。専門家が家庭に勧めている工夫も、方向はよく似ています——子どもと一対一でじっくり関わる時間を、短くていいので毎日の生活のなかに設けること。

出典: 弟ができた兄に吃音と円形脱毛症が(子育てIdea Box・NPO法人ハートフルコミュニケーション)(台帳: V0035)

吃音ポータルサイトは、家庭で整える環境を行動のレベルまで具体化しています。2歳の子に対しても、そのまま使えるものが並んでいます。

  • 話しかける大人の側が「ゆっくり」「ゆったり」とした話し方をする。子どもの話す速さと同じか、少しゆっくり目ぐらいの速さで話す
  • 子どもが話し終わってから、一呼吸置いてから話しかける
  • 相づちやうなずきをしながら、できるだけ最後まで話を聞く。話し終えるまで大人の側から別の話題を出さない
  • 忙しいときは「あとで、お話を聞くから待っててね」と言い、あとで必ず聞く時間を設ける
  • きょうだいが先を争って話しかける状況があるなら「順番に話す」というルールを設ける
  • 短い時間でよいので、子どもと保護者が一対一でじっくり関わる時間を毎日つくる(寝る前、お風呂、帰宅後のおやつの時間など)

そして、意外に思われるかもしれない一項目があります。子どもに対して「ゆっくり」「落ち着いて」などの声かけは極力控える、というものです。よかれと思ってかけている言葉が、子ども側には「話し方を直された」という合図として届いてしまうことがあるためです。大人が自分の話し方をゆっくりにするのはよい、しかし子どもに「ゆっくり」と言うのは控える——この2つは向きが逆であることに注意してください。

もうひとつ、方針として変わったことがあります。昔は「吃音に気がつかせない方がよい」という対応が主流でしたが、いまはそのような考え方は否定されています。心配そうな表情をせずに内容へ耳を傾けること、そして子どもが自分の話し方について何か言ってきたときに、ごまかさずに話せる関係をつくっておくことが勧められています。2歳では本人がまだ気にしていないことも多いのですが、気づいたときに話せる相手でいるという準備は、この時期から始められます。

いつまで待つ? — ガイドラインが引いている判断ライン

ここがこの記事でもっとも伝えたい部分です。多くの解説記事は「気になれば相談を」で終わりますが、日本には2021年に公開された「幼児吃音臨床ガイドライン」があり、時期の考え方が具体的に書かれています。まず、待つ期間を自分で区切った保護者の記録を見てください。

当事者の子の母(娘は2歳5か月で発症・記事執筆時点で年長/note)

不安を感じている中、希望をくれたのは

・幼児期に発症した場合、7割ぐらいが3~4年で自然治癒する

という情報。

これは当時見たもので、今調べると違う情報も出てきますが(おそらくこの分野の研究はまだ発展途上でどんどん変わっていくと思う)、私はこの情報を希望を感じ頑張れたところが大きかったです。

逆に現実味を覚え心がざわざわしたのが

・発症後3~4年を過ぎると治りにくくなる

・小学生に上がると治りにくくなる

という情報。この数字をリミットとして、それでも治らなかったら動こう。

と思っていました。

娘の吃音が数日で急に強くなった時期に、母親が夜ごと調べて集めた情報です。注目したいのは、集めた情報を希望になったものと不安になったものに分けて書いていること、そして書き手自身が「これは当時見たもので、今調べると違う情報も出てきます」と断りを置いていることです。そのうえで、この数字を期限として、そこまでに治らなければ動くと決めた——待つか相談するかの二択ではなく、待ちながら期限を持つという形にしています。この記録では、その後の経過として、気づいたら数か月吃音が出ていなかったと書かれています。専門家が示している「いつまで」の目安も、実はこれに近い形をしています

出典: 娘の吃音、はじまりとおわり(note・ちゃんしー)(台帳: V0079)

ガイドラインの戦略的対応は、まず「7割以上ある自然治癒をできるだけいかす」ことから始まります。そのうえで、次の2点が挙げられています。

  • 最初の1年の重症度は予後と関連しないので待機(例外条件あり)
  • 自然治癒まで、2〜3年かかることもよくある

1点目は、2歳の保護者にとって大きな意味を持ちます。「症状が重いから、この子は治らないのではないか」という心配は、少なくとも最初の1年については、根拠のある予測にならないということです。だからガイドラインは、その期間を待機にあてつつ、楽しくお喋りできるように環境を整えることと、医療専門職などによる経過観察を勧めています。

そして、待たずに動く条件も明確にされています。ガイドラインは治療の必要性の判断基準として、次を挙げています。

  • 重症/悪化している/発話が苦しそう/本人が気にしている 等
  • 就学の1年程度前になっても軽快傾向がない

耳鼻咽喉科学会会報の総説も、ほぼ同じ線を引いています。幼児期には楽に話せる環境を整えながら経過を追い、発話に苦悶・努力や悪化傾向があるか、就学1年前頃になっても改善傾向がない場合に言語治療を開始する、という書き方です。

では、積極的な支援はいつから始めるのか。ガイドラインは学年で示しています。年少組までは経過を見守る支援が基本、年中組で開始を検討、年長組で開始を推奨、という順です。2歳は年少組より前ですから、ガイドラインの枠組みでは経過を見守る支援が基本の時期にあたります

幼児吃音臨床ガイドラインが2歳をどこに置いているかを示す図。年少組までは経過観察的な支援が基本、年中組で介入開始を検討、年長組で推奨。ただし重症・悪化・苦しそう・本人が気にしている、就学1年前で軽快傾向がない場合は例外条件
図2: ガイドラインは「2歳」を経過観察の時期に置いている(例外条件つき)。出典: 国立障害者リハビリテーションセンター リハニュース No.370 / 発達障害ナビポータル

どこへ相談する? — 何科・どこへ・どれくらいかかるか

「相談してみよう」と決めたあと、次に迷うのが窓口です。そして、ここには知っておいたほうがいい現実があります。

当事者の子の母(娘は2歳4ヶ月で発症・記事執筆時点で3歳/個人ブログ)

以前の記事で詳しく書きましたが、娘は、2歳4ヶ月のときに初めて吃音症状がでました。

それから、

市の育児相談

市の療育を担当している課との面談

ことばの発達を支援している課

につないでもらうことができました。

初めての相談から1年以上かかりました。

途中、コロナで面談受付が中断されたり、私も心配で延期にしていたため半年以上長くかかりました。

吃音の症状がおさまってきた時期もあったので、「もう断ろうかな?」とも思っていました。

でも、そのあとまたでてきたので空いているうちに行っておこうと思い面談にいってきました。

「子どもの吃音には波がある」と本で読みましたが、本当にそうだなと感じました。

2歳4か月で娘の吃音に気づいた母親が、相談の道筋をそのまま矢印で書き残した記録です。市の育児相談から始まり、療育を担当する課との面談を経て、ことばの発達を支援する課につながるまでに1年以上。途中には面談受付の中断があり、母親自身が延期した期間もありました。そして注目したいのが、その途中で症状がおさまった時期があり、断ろうかと思ったと書かれていることです。またぶり返したので、空いているうちに行っておこうと考え直した。症状に波がある以上、この判断は、待機の期間を持つ家庭が通ることのある分かれ道です。専門家の側も、幼児の吃音を診られる人手が足りていないことを認めており、そのために窓口をつなぐ形が提案されています

出典: 吃音症の3歳の子どもが発達検査を受けました(ミセスチキンハートの子連れ旅行ブログ)(台帳: V0061)

2歳の吃音の相談は、実際にはさまざまな窓口に寄せられています。ガイドラインの解説が挙げているのは、小児科や耳鼻咽喉科、保健センター、ことばの教室、そして幼稚園・保育園・認定こども園など、幅の広い顔ぶれです。ところが、そのほとんどの施設に言語聴覚士がいませんまとめると、最初の相談先はこう考えておくと動きやすくなります。

  • 言語聴覚士のいる医療機関:ことばの専門職です。吃音の評価や、家庭での関わり方の助言を受けられます
  • ことばの教室・保健センター・療育センターなどの地域の相談窓口:2歳の段階でも、まず身近な相談先として利用できます
  • 小児科・かかりつけ医:どこに相談すべきか迷うときの最初の窓口として。吃音の相談は小児科や耳鼻咽喉科にも寄せられています

ここで、知っておくと落胆せずに済むことがあります。ガイドラインの解説は、吃音になる幼児のうち10人に1人しか受診しなかったとしても、その全員を診られるだけの専門家はいないと率直に書いています。幼児の吃音に関しては、すでに医療崩壊といっていいほどの状態だ、という強い言い方までされています。だからこそガイドラインは、吃音を専門としない相談・診療の窓口が詳しい説明と、できれば経過観察までを引き受け、必要と見たら治療のできる施設へつなぐ、という役割分担を提案しています。最初の窓口で専門的な訓練が始まらなくても、それはこの連携が想定している順序です。ただし解説自身も、この形をとると治療の開始が後ろへずれる弱点があると書き添えています。

もうひとつ、相談の場で起きやすいことを先に知っておいてください。相談に出向いても、その場ではお子さんに思ったほど症状が出ないことが多いのです。すらすら話せている様子を見た相手から、「軽い吃音ですね」「気にならないですね」と声をかけられることがある——そうした言葉が養育者の助けになることは少ない、と指摘されています。家庭で見た様子を、いつ・どんな場面で・どのタイプが出たかまで記録して持っていくことが、この行き違いを減らします。日付のメモや、短い動画でもかまいません。

この先どうなる? — 「7〜8割治る」の中身と、その幅

いちばん気がかりな「この先どうなるのか」を、数字の出どころまで開いて整理します。ここは多くの記事が「7〜8割は自然に治ります」の一行で済ませてしまう部分ですが、その一行の内訳を見ておくと、待つ時間の意味が変わります。

まず国内の記述です。日本耳鼻咽喉科学会会報の総説は、吃音が出はじめてから(発吃から)2〜3年程度までの経過で7割以上が自然治癒するとしています。ガイドラインの解説も、4分の3程度は自然に治癒するとしたうえで、発症が多いために就学児の2%弱・成人の1%弱に吃音が残るとしています。吃音ポータルサイトは保護者に向けて、幼児期に吃音のある子のうち少なくとも半数までは、これといった指導や支援を受けないまま、就学のころまでに吃音の問題がなくなると書いています。資料はこれを自然治癒と呼んでいます。

回復の見通しを示す図。幼児期の吃音は少なくとも半数が就学ごろまでに自然におさまり、続く子にも言語聴覚士やことばの教室の支援が役立つ
図3: 幼児期の吃音は少なくとも半数が就学ごろまでに自然におさまる。出典: 吃音ポータルサイト「吃音の原因と予後」(金沢大学・小林宏明 監修)

次に、時間の経過で見た数字です。日本吃音・流暢性障害学会の解説は、Yairiらの研究(2005)をもとに、吃音が始まって2年後までだと31%、3年後までだと63%、4年後までだと74%が自然に治ると紹介しています。そして発吃から4年以上経つと(あるいは8歳以上になると)、自然治癒の確率は減少するとしています。2歳で始まったなら、この時計は2歳から動き始めます。先ほどの保護者が「この数字をリミットとして」と書いていたのは、まさにこの時間軸のことでした。

男女差も報告されています。発症してから3年の時点で自然に回復するのは、男の子で6割、女の子で8割とされています。そのため、相談の場で保護者から「この先なおるのか」と問われても、専門医が答えられるのは「家族歴のある男の子は治りにくい」というところまでで、それ以上は返答できない状況だ、と書かれています。

そして、ここが大事なところです。「7〜8割」という数字自体に、実は大きな幅があります。各国の追跡研究を集めて比べた総説は、就学前から参加した子どもたちを追った研究では自然回復率が一貫して高く、その値は68%から96%だったと報告しています。「高い」ことは各国で一致していても、どれくらい高いかは国も調べ方も追いかけた年数も違うため、ここまで開きます。同じ総説は、吃音が始まる危険の大部分は5歳までに終わるとも整理しています。つまり「7〜8割」は真ん中あたりの目安であって、あなたのお子さんが7割の側に入るか3割の側に入るかを言い当てる数字ではありません。

では、続きやすさの手がかりはあるのでしょうか。就学前の子ども52人(3〜5歳)を回復か持続かまで追いかけた研究では、次の4つが持続と関連していたと報告されています。

  • 家族に吃音のある人がいる(家族歴がある)
  • 音の作り方(構音)を調べる検査の成績が低め
  • ふだんの会話で、なめらかに出ない話し方が多く出る
  • 意味のない音のならびを復唱する課題の成績が低め

これらは「あれば必ず続く」というものではなく、あくまで確率を高める要因です。難発や体の力み、話すのを避ける様子は、この4因子には含まれませんが、ガイドラインの言う「発話が苦しそう」「悪化している」に当たる様子として、相談を検討する目安になります。そして繰り返しになりますが、自然治癒しない子を早期に見分ける確実な指標はないというのが現状です。

就学前の子ども52人(3〜5歳)を追いかけた研究で、吃音の持続と関連していた4つの要因を示す図。家族に吃音のある人がいる、音の作り方(構音)を調べる検査の成績が低め、ふだんの会話でなめらかに出ない話し方が多く出る、意味のない音のならびを復唱する課題の成績が低め。当てはまる項目が多いほど持続しやすい傾向だが、あれば必ず続くわけではなく確率を高める要因。当てはまるときは早めの相談を検討する目安になる
図4: 就学前の子ども52人(3〜5歳)の追跡で、吃音の持続と関連していた4つの要因。出典: Walsh, Christ & Weber (2021) JSLHR.

最後に、続いた場合の話も書いておきます。就学後も吃音が残った子について、資料はこう見通しています——言語聴覚士やことばの教室で適切な指導・支援を受ければ、多くの場合は、体に力が入るような重い出方をあまりしなくなるか、あるいは力みを自分で加減しながら話すやり方を身につけて、ふだんの暮らしで大きく困らずに済むようになる、と。「治る」か「治らない」かの二択で先を見なくてよい、というのがこの記述の意味です。

2歳から訓練を受けたほうがいい?

「早いほうがいいなら、2歳のうちに何か始めたほうがいいのでは」という疑問もよく聞かれます。就学前の子どもの吃音に対する代表的な方法として、リッカム・プログラム(Lidcombe Program)があります。保護者が言語聴覚士の指導のもとで、毎日時間を決めて子どもと向き合い、子どもが話したことに対して褒める・確認するといった返答を行い、吃音の出ていない発話を増やしていく方法です。

この方法については、コクランという国際的な組織が、条件を決めて研究を集めて評価した報告があります。就学前(6歳以下)の吃音を対象に、参加者をくじ引きのようにして2つのグループに分けて比べた試験(無作為化比較試験)4件(2〜6歳の子ども151人)が統合され、リッカム・プログラムは待機(何もしない)群とくらべて吃音の頻度を下げたと報告されています。

ただし、この結果は慎重に受け止める必要があります。この結果がどれくらい確かかという評価は「非常に低い」とされており、含まれた4件のうち3件は偏りのリスクが高いと判定されています。さらに、このプログラムは完了までに1〜2年かかる設計で、研究のどの測定時点でも、参加した子どもは誰もプログラムを完了していませんでした「効くらしい」と「効くと確かめられた」の間には、まだ距離があるということです。

日本のガイドラインでは、リッカム・プログラムはもっとも強い推奨の区分で紹介されています。ただし、英語以外の言語圏では3倍の時間を要すると示されており、進め方には養育者の心情への配慮が欠かせない、とも注記されています。なお、幼児期の言語訓練そのものは有効率が比較的高いとされています。

そして時期の問題があります。前述のとおり、ガイドラインが積極的な介入を検討し始めるのは年中組から、推奨するのは年長組からです。2歳で「今すぐ訓練を」と焦るより、まずは経過を見てもらえる場を確保し、その子に合った時期を専門家と一緒に決めるのが、ガイドラインの想定に沿った動き方です

2歳の吃音でやりがちな3つの落とし穴

落とし穴1 − 原因を一つに決めて自分を責める

「あのとき叱ったせい」「下の子が生まれたせい」「保育園に入れたせい」と単一の原因を探しても、答えは見つかりません。発症要因の7割以上は遺伝性で、育て方が原因だとする説は否定されています。双子を対象にした研究でも、要因のおよそ8割は生まれつきの体質だとされています。相談先や親族からそう言われることがあっても、それは研究の到達点ではありません。

落とし穴2 − 「今が重いこと」を将来の重さと受け取り、「悪化」と呼ぶ

ガイドラインは、最初の1年の重症度は予後と関連しないので待機する、としています。いま症状が目立つことは、そのまま「この先も続く」という予測にはなりませんただし、これは予後の見通しの話です。いま相談すべきかどうかは別の判断で、重症であること自体は、悪化・発話が苦しそう・本人が気にしていることと並んで、治療の必要性を判断する基準に挙げられています「重いから将来も重い」とは考えなくてよい、しかし「重いなら相談していい」——この2つは両立します。
あわせて、言葉の使い方の提案もあります。専門医は、「吃音が悪化する」「吃音がひどくなる」ではなく「吃音が増える」という中立的な言葉を使うことを勧めています。「改善する」ではなく「減った」と言う、という提案です。表面の状態に保護者の心理が振り回されるのを防ぐための言い換えです。出たり引っ込んだりを繰り返す2歳の時期には、この言い方の差がそのまま気持ちの差になります。

落とし穴3 − 記録せず、記憶だけで判断する

吃音は波があり、日によって出方が変わります。「先週より増えた気がする」という記憶だけでは、増えているのかどうかの判断が難しくなります。しかも、相談の場ではお子さんに症状が出ないことが多いのです。いつ・どんな場面で・どのタイプ(連発/伸発/難発)が出たかを短くメモしておくと、経過の変化に気づきやすく、相談のときに家庭での様子を伝える助けになります。

毎日の様子を記録することは、家庭で無理なく始められる第一歩です。記録はあくまで経過を見える化し、継続的に見守るための支援であって、それ自体が治療ではありません。気になる状態が続くときは、言語聴覚士など専門機関への相談を優先してください。

よくある質問

2歳の吃音は様子見でいいですか?

日本の幼児吃音臨床ガイドラインは、7割以上ある自然治癒をいかすため、最初の1年の重症度は予後と関連しないとして待機を基本にしています。積極的な介入の開始は年中組で検討、年長組で推奨とされており、2歳は経過観察的な支援が基本の時期にあたります。ただし重症・悪化・発話が苦しそう・本人が気にしている等の場合は例外条件なので、当てはまるときは相談してください。

2歳で急に、突然どもり始めました。何かあったのでしょうか?

吃音の発症は2〜4歳に集中し、人口のおよそ8〜11%に生じるとされます。そのうち4割は、ある日急に始まるかたちで発症すると報告されています。典型的な発症の時期は、二語文以上をしゃべり始める2〜3歳ごろです。それまで普通に話せていたので後から加わった何かを探したくなりますが、資料が主な原因に挙げているのは遺伝子の変異です。保護者の関わり方のまずさから子どもの吃音が起きることは決してない、とも明記されています。

症状がひどいのですが、このまま治らないのでしょうか?

最初の1年の重症度は予後と関連しないとされており、いまの重さがそのまま将来の見通しになるわけではありません。発吃から2〜3年程度までの経過で7割以上が自然治癒するとされ、自然治癒まで2〜3年かかることもよくあると書かれています。ただし悪化の傾向や、発話が苦しそうな様子があるときは相談の目安になります。

2歳の吃音は何科に相談すればいいですか?

相談の窓口は一つに決まっていません。小児科や耳鼻咽喉科のほか、保健センター、ことばの教室、通っている園などにも寄せられています。ただし、そうした施設の大半には言語聴覚士がいません。専門家の人数が足りていないため、吃音を専門としない窓口が説明と経過観察を引き受け、必要と見たら治療のできる施設へつなぐ連携が提案されています。まず迷うときはかかりつけの小児科や地域の保健センターが入口になります。

吃音は発達障害なのでしょうか?

吃音のほとんどは発達性吃音と呼ばれるもので、発達障害者支援法が定義する「発達障害」に含まれます。ただし、幼児の1割近くに発症し、そのうち4分の3程度は自然に治癒するとされており、2歳で症状が出ていることが将来の状態を決めるわけではありません。心配なときは、まず経過を見てもらえる相談先を確保することが勧められています。

まとめ

  • 吃音が発症するのは2歳から4歳が中心で、その割合は人口のおよそ8〜11%、そのうち4割はある日急に始まります日本では年間10万人近くが発症する計算です。2歳で出るのはめずらしくありません。
  • 発症要因の7割以上は遺伝性で、育て方が原因という説は学会誌が否定しています双子研究でも約8割は生まれ持った体質とされます。自分を責める必要はありません。
  • 日本のガイドラインは「最初の1年の重症度は予後と関連しないので待機」とし、積極的な介入は年中組で検討・年長組で推奨としています2歳は経過観察が基本の時期です。
  • ただし例外条件があります——重症/悪化/発話が苦しそう/本人が気にしている 等、就学1年前で軽快傾向がない。
  • 自然に治る割合は、発吃から2年で31%・3年で63%・4年で74%という報告があり、各国の研究をまとめると68%〜96%と幅があります。「7〜8割」は目安であって予言ではありません。待つあいだは、大人がゆっくり話す・最後まで聞く・一対一の時間をつくるといった環境を整えながら、記録をとって経過観察の場を確保しておくのが現実的です。

参考文献

  1. Yairi & Ambrose (2013) Epidemiology of stuttering: 21st century advances. J Fluency Disord.
  2. Sjøstrand et al. (2021) Non-pharmacological interventions for stuttering in children six years and younger. Cochrane Database Syst Rev.
  3. Walsh, Christ & Weber (2021) Exploring Relationships Among Risk Factors for Persistence in Early Childhood Stuttering. JSLHR.
  4. 日本吃音・流暢性障害学会「吃音(きつおん)について」(文責: 菊池良和・九州大学病院)
  5. 吃音ポータルサイト「吃音の原因と予後」(金沢大学・小林宏明 監修)
  6. 発達障害ナビポータル「小児期発症流暢症(吃音)」(2025・菊池良和)
  7. 「吃音(どもり)の評価と対応」日本耳鼻咽喉科学会会報 123巻9号(2020)
  8. 国立障害者リハビリテーションセンター リハニュース No.370 特集「幼児吃音臨床ガイドライン」の作成と公開
  9. 吃音ポータルサイト「お子さんとの接し方の提案」(金沢大学・小林宏明 監修)
  10. 日本医事新報社 note出張版『保護者からの質問に自信を持って答える!吃音Q&A』連載第2回「利き手矯正と吃音の波」(菊池良和)

当事者の声の出典: V0049(たまひよ・育児インタビュー)/ V0063(個人ブログ・元保育士の母)/ V0035(NPO法人ハートフルコミュニケーション 子育てIdea Box)/ V0079(note・ちゃんしー)/ V0061(個人ブログ・ミセスチキンハート)。いずれも公開記事。引用は原文どおり。

更新履歴: 2026-07-22 公開/2026-07-26 全面改稿(日本の幼児吃音臨床ガイドラインが2歳をどう位置づけているかを主軸に再構成)/2026-08-27 骨格v2へ全面リライト(声の入れ替え・出典の追加と訂正・専門語の平易化・図スロットの設置)