まず結論から
- 窓口の名前が分からなくても、相談先はたどれます。吃音の指導や支援を希望するときは、あらかじめ病院に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会や各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内されています。
- 専門の外来は、すぐつながる窓口ではありません。国の医療機関は成人向けの専門外来について、初診専用・完全予約制で、予約センターで予約を取ってから受診するよう案内し、受診希望が多く予約が取りにくくなっているとも書いています。
- 電話が苦手なこと自体が、相談できる内容です。ことばの専門職は、本人が恐れや不安を感じる話す場面への対処も支援するとされ、その場面の例として「自分の名前を言うこと」「電話で話すこと」「飲食店で注文すること」が挙げられています。
- 電話そのものを置き換える公共の仕組みもあります。2021年から総務省が主体となり公共インフラの一つとなった「電話リレーサービス」を吃音のある人が使うことができ、困り感の軽減につながっているとされています。
- 当事者どうしの集まりは、専門的な指導の場ではありません。ただし、同じ問題を持つ仲間と出会い、同じ立場からの具体的な助言をもらえるなど、そこでしか得られないものがあるとも書かれています。
ただし、この記事は個々の窓口を勧めたり評価したりするものではなく、電話番号・受付日時・担当者名も載せていません。窓口は開いたり閉じたりしますし、対象年齢や受付の方法も変わります。連絡する前に、その窓口の公式の案内で今の状況を確かめてください。
窓口の名前ではなく、問い合わせ先から辿る
特定の窓口の名前を手がかりに調べてきた方は、まずここを押さえてください。吃音の相談を受け付けている窓口は、開いたり閉じたりします。無料で運営されている電話相談やチャット相談は、担い手の都合で受付を止めることがありますし、案内のページごと無くなることもあります。だから、どこかで見つけた番号を控えておくより、連絡する直前にその窓口の公式の案内を開いて、今も受け付けているかを確かめるほうが確実です。この記事が個々の番号や受付時間を載せないのも同じ理由です。
そのうえで、名前を一つも知らなくてもたどり着ける入口があります。吃音ポータルサイトは、言語聴覚士(聞こえやことばの障害のある人を支援する国家資格の専門職)について、養成課程に吃音が含まれ、吃音のある人の指導・支援の中核を担う存在として役割が期待されているとしたうえで、取り扱う業務が多岐にわたるため、必ずしも全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではないと書いています。そのため、吃音の支援を希望する場合は、あらかじめ病院に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会や各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内されています。「吃音を扱っている人がいますか」と聞ける相手が、あらかじめ決まっている、ということです。
もう一つの入口が、専門の外来です。ただし、待ち時間の見積もりは変わります。国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来は、18歳以上が対象(高校生は小児吃音外来)で、初診日に問診票の記入・診察・吃音の検査を行い、後日その結果を見ながら言語訓練の方針を立てる流れです。受診の方法は初診専用の外来で、予約センターで専門外来の予約を取ったうえで受診することになっており、同じページに「現在、受診希望の方が多く予約が取りにくくなっております」とも書かれています。今日の悩みをすぐ聞いてもらう窓口と、腰を据えて診てもらう窓口は、別のものだと考えておいたほうが、落胆が少なくて済みます。
医療機関・言語聴覚士・ことばの教室と教育委員会・発達障害者支援センター・自助グループという5つの入口の全体像は、「吃音の相談先」にまとめてあります。画面越しの相談で何ができて何ができないか、申し込む前に確かめる項目は「オンライン吃音相談」にあります。ここから先は、その窓口に連絡しようとする段で起きることを、記録を残した4人の言葉から見ていきます。
その一本の電話が、いちばん難しい
番号が分かっても、かけられない。相談窓口を探している人の少なくない割合が、この段で止まります。電話が怖かった時期を、日付と年齢を添えて書き残している人がいます。
当事者本人(千葉県で60床の病院の院長・発表時50歳/日本吃音臨床研究会の吃音ショートコースでの発表記録)
それまでは、1対1で話をしてもそれほど恐怖感はないのですが、電話は怖くて普通にできるようになったのは28歳のときです。子どもができたころまで電話は恐怖でしたね。自分でかけることができないのです。かかってきても、うまく最初の返事ができないこともありました。そうすると、電話の向こうで相手の誘しげな雰囲気が電話口に伝わってきます。それで自分から受話器を置いて逃げる、そんなすごく情けない思いをしました。
どもることを恐怖として感じ始めたのは中学2年の国語の朗読で、最初の一語目からことばが出なくなった日だった、と本人は書いています。中学3年の自己紹介の途中でトイレに行かせてもらい、同級生に見つかって担任に付き添われて保健室へ行き、その後は1学期の大部分を不登校で過ごしました。21歳で学生結婚し、就職はせずに塾を営み、29歳で医学部を受け直します。上の一節は、その20代の話です。1対1で向き合って話すことはできるのに、電話だけができない。かかってきた電話に最初の返事ができず、受話器を置いてしまう。「話せる/話せない」は人ではなく場面について言われることだ——このことを、研究の側も背景として書いています。
出典: 2003年 第9回吃音ショートコース【発表の広場】2 吃音と私(吃音と上手につきあうための吃音相談室・日本吃音臨床研究会)(台帳: V0095)
吃音の治療を見渡したレビュー(条件を決めて研究を集め、まとめて評価した報告)は、どもるのを避けるために身についていく工夫として、言いにくい言葉を避けること、緊張する場面を避けること、以前よくどもった相手との会話を避けることを挙げています。そしてとくに緊張しやすい場面の例として、電話で話すこと、自分や人を紹介すること、目上の人と話すことを名指ししています。同じレビューは、多くの当事者にとって、こうした避ける行動が最も生活を妨げる部分になりうるとし、社会参加や仕事の機会が狭まること、年月がたつと自分で制御できないという感覚、気分の落ち込み、不安の高まりにつながることがあると述べています。
日本の解説も、同じ順路を書いています。慶應義塾大学病院の医療・健康情報サイトは、思春期以降に加わるものとして、「この言葉は吃音が出そうだな」と前もって感じられるようになること(予期不安)、出そうだと感じた言葉をとっさに別の言葉に言い換えること、そして人前や電話など話す場面を避けてしまうこと(回避行動)を並べ、こうした症状が強くなると、社交不安障害(人前で恥をかいたり悪く見られたりすることへの強い恐れが続く状態)を伴っていると判断される場合があるとしています。同じページは、病院に来る成人の吃音の半分程度は社交不安障害を伴っているとするデータもある、とも書いています。日本吃音・流暢性障害学会の解説も、社会人では職場の電話応対が発話に困難を感じやすい場面として挙げられ、失敗体験が重なると話し始める前に不安や恐怖を感じ、次第に会話や社交を避けるようになると述べています。「電話がかけられないから相談できない」は、その人の弱さの話ではなく、相談したい当の困りごとが窓口の手前に立ちはだかっている、という構造の話です。
かける電話と、取る電話は別物だった
「電話が苦手」とひとくちに言っても、どこが苦手かは人によって違います。自分の場合はどちらなのかが分かると、頼めることも変わってきます。福祉の事業所で責任者を務める当事者が、自分なりの方法を具体的に書いています。
当事者本人(吃音歴40年超・福祉の事業所責任者/NPO法人日本吃音協会のメディア HAPPY FOX の手記)
社会人で吃音を持つ人が大嫌いなのは電話対応だと思います。 私は自分から電話するときに吃音がでることは、ほとんどありません。 電話を取るときに、吃ることが多くあります。
事務所内に一人でいる時は吃りません。 周りに人がいると吃ります。
そこで解消した私の方法は、 デスクに目線を落として回りを見ないように電話する ことです。 この吃音対処法は今でも使っています。
5歳上の兄と3歳上の姉にも吃音がありましたが、二人は小学校入学前に消えたようだった、と本人は書いています。高校を卒業して実家を出るために住み込みのコック見習いを始め、朝6時から24時までの日々のなかで吃音が再発しました。2年続けたあいだ、毎日「お先に休憩入ります」の一言が出なかったといいます。福祉の仕事に移って20年、初めのころは朝礼と電話対応が嫌で嫌で、どもってしまうのかとびくびくしていた。そのうえで本人が見つけたのが、上の一節にある区別です。かけるときはほとんど出ないのに、取るときに出る。一人でいるときは出ないのに、周りに人がいると出る。この出方の揺れは、資料の側も最初から書いていることです。
出典: 私の吃音との向かい方(HAPPY FOX・NPO法人日本吃音協会)(台帳: V0067)
吃音は日によって変わり、あるときは話しやすく、別のときにはどもる——ストレスや興奮がどもりを増やすことがある、と公開の解説資料は書いています。同じ資料は、どもりが増える場面を避けることがあるとして、その例に「電話で話すこと」を挙げています。日本吃音・流暢性障害学会の解説も、状況によって症状が出やすかったり出にくくなったりすること、調子の良い状態や悪い状態が数週間から数か月にわたって続く人も多く、この変動を「波」と呼ぶことを説明しています。
この「波」は、窓口に連絡するときに二つの意味を持ちます。ひとつは、かけられなかった日があっても、それがその人の上限ではないということ。もうひとつは、逆にたまたま話せた日を「もう大丈夫」の証拠にしないほうがいいということです。学会の解説は、言いにくい単語を言い換えるなどして吃音を巧みに隠そうとすると、吃音は目立たなくなるが、実際は吃音が出ないかを日々警戒しながら生活しているため、ストレスや悩みを抱え込みやすくなる、とも書いています。電話口で用件を短く言い換えて切り抜けた日ほど、困りごとは伝わらずに残ります。相談の場で症状が出ないときにどうするかは「吃音の相談先」に、出にくい音そのものの話は「吃音の出にくい音(難発)」にまとめてあります。
代わりにかけてもらう、という選択
電話をかける人を、自分から別の人に替える。家族や身近な人に頼んでいる人は、実際にいます。ただしその頼み方は、思ったより固定的ではありません。吃音のある夫と暮らす配偶者が、日々の分担を語っています。
吃音のある夫と暮らす配偶者(20歳代・作業療法士/北海道吃音・失語症ネットワークの公式 note のインタビュー)
主人の場合は、たとえば「この注文する時に、代わりに言ってほしい」とか、「電話が苦手だから、お店の予約を代わりにやってほしい」とか、その都度言われたことをやっています。でも、自分で電話をかけるときもあるんですよ(笑)。彼なりのタイミングがあるんだと思うんですけど、その時その時に合わせて…っていう感じです(笑)。
知り合ったときも交際中も、夫に吃音があることは分からなかった、と本人は話しています。吃音という言葉自体を知らず、夫から「こういう時に症状が出やすい」と説明されても最初はぴんとこなかった。ただ、話を聞いて振り返ると、小学校から中学校までずっと仲が良かった友達に同じような話し方の子がいたことを思い出した、と続けます。いま夫に対してしているのは、上の一節のとおり、頼まれたときに、頼まれたことをするという形です。代わりに注文する日もあれば、夫が自分で電話をかける日もある。どちらかに固定していないところに、この人の言う「その時その時に合わせて」が表れています。声を使わずに用を済ませる手立ては、制度の側にも用意されています。
出典: 「絶対、お互いに歩み寄れるので、思ったことを周りの人に言ってみてほしい。」吃音当事者の奥様にインタビューしました。(note・北海道吃音・失語症ネットワーク)(台帳: V0076)
発達障害ナビポータルの吃音の解説は、吃音のある人は電話が苦手だとしたうえで、2021年から総務省が主体となり公共インフラの一つとなった「電話リレーサービス」を吃音のある人が使うことができ、困り感の軽減につながっていると書いています。仕組みの詳細や申し込みの方法は、この記事が使った資料には含まれていません。総務省の案内で確かめてください。書いて伝える手段をどの場面でどう使い、どう頼むかは、「吃音で筆談を使うとき」にまとめてあります。
ただし、家族に代わってもらうことには一つ気をつける点があります。窓口に相談したい内容が「本人が困っていること」である以上、代わりにかけた人が伝えられるのは、用件の予約までだということです。同じ配偶者は、吃音は見た目で分からないからこそ自分から言わないといけない、そこにエネルギーが必要になるから言おうか迷うのではないか、とも話しています。だから、代わりにかけてもらうときは「予約を取ってもらう」までにして、本人が何に困っているかは別の形で渡すほうが噛み合います。困っている場面を先に書き出しておけば、当日の限られた時間で短く伝えられますし、受け取る側の確かめ方とも合います。相談の場に何を持っていくと伝わりやすいかは、「吃音の相談先」に整理してあります。
電話がつながった先で、何を受け取れるのか
連絡がついて、実際に相談の場に着いたとき、そこで何が起きるのか。症状の見立てが返ってくるとは限りません。小学3年の娘をもつ母が、初めて相談会に参加した日のことを書いています。
小学3年の娘をもつ母の手記(日本吃音臨床研究会の公式サイト「保護者の体験」)
私は全くの初めて、他のどんな教室にも参加したことがなかったので、全てにおいて勉強になりました。最初の自己紹介の時、体ごとこちらを向いて聞いて下さる皆さんに、凄いパワーを感じました。圧倒されたといってもよいくらいで、同時に心から相談できるという信頼感も生まれました。
皆さんのお話の中で、電話に出られない、食べたいものを注文できないということに、本当に大変な思いをされているのだと知りました。
この母親は、保育園・幼稚園・小学1年・小学2年と4回にわたって、担任に娘の吃音を自分から伝えてきました。そのとき使っていた言葉は「どもるんですけど…」で、語尾の「ですけど…」に自分のすべての気持ちが含まれていたと、後になって振り返っています。「大丈夫ですよ」と返ってくることを期待していたのだ、と本人は書きます。相談会に参加したあとの家庭訪問では「どもりです」と言えた、そのことが自分にとって大きな成長だった、とも記しています。相談の場が返したのは、娘の症状の判定ではありませんでした。大人の当事者たちが電話や注文で抱えている困りごとを、その場で初めて知った——受け取ったのはそれです。当事者どうしの集まりが与えるものと与えないものには、公的な資料が線を引いています。
出典: 保護者の体験(吃音と上手につきあうための吃音相談室・日本吃音臨床研究会)(台帳: V0108)
吃音ポータルサイトは、言友会や日本吃音臨床研究会のようなセルフヘルプグループ(当事者どうしの自助グループ)について、当事者の集まりなので、言語聴覚士のように吃音についての学術的な知識や、吃音改善のための専門的な指導や支援が受けられるわけではないと明記しています。そのうえで、自分と同じ問題を持つ仲間と出会い、当事者同士でないと感じることのできない連帯感を感じながら、吃音についての悩みを聞いてもらったり、同じ悩みを持つもの同士という立場で具体的な助言をもらったりできることは、ここでしか得られない、とも書いています。無料の電話相談やチャット相談の多くは、この当事者の側の窓口です。治療を受けに行く先ではなく、話を聞いてもらい、次の一手を教えてもらう先だと分かっていれば、期待の置きどころがずれません。
もっとも、そこにつながっている人は多数派ではありません。英語圏のオンライン支援グループ、英国の全国団体、地域の自助グループから集めた原データで当事者コミュニティへの関与を推定した研究は、国際で0.99%、全国で0.63%、地域で1.01%という値を出しています。同じ研究は、脱落や重複の数え上げがあるため実際の関与はこれより低いだろうとも注記しています。海外の推定なので日本の数字ではありませんが、当事者の集まりに参加している人がごく一部だという見当はつきます。参加していないことは、珍しいことでも遅れていることでもありません。
「電話が怖い」は、そのまま相談の内容になる
ここまでの4人の記録に共通しているのは、困っているのが「吃音」一般ではなく、電話という具体的な場面だということです。そして、その場面そのものを支援の対象にする、という考え方は、専門職の側にもともとあります。
公開の解説資料は、言語聴覚士が行うことの説明のなかで、本人が恐れや不安を感じる話す場面への対処も支援するとしています。挙げられている場面の例は、自分の名前を言うこと、電話で話すこと、飲食店で注文することの3つです。同じ資料は、支援がめざすのは学校・職場・さまざまな社会的な場面で、より楽に、自由に話せるようになることだとも書いています。つまり、窓口に連絡するときの用件は「吃音を治してください」である必要はなく、「電話が怖くて困っています」でよい、ということです。
電話への恐れを臨床でどう扱ってきたかを、具体的に書いた研究もあります。話し手の側から吃音の経験を捉え直した総説(多くの研究をまとめて見渡した論文)は、脱感作——居心地の悪い刺激に少しずつ触れることで、否定的な反応を小さくしていく方法——を、吃音の訓練で長く使われてきたものとして紹介しています。その代表が、本物のどもりに似た話し方を意図的に出してみる練習で、これによって、本物のどもりに伴う居心地の悪さを、より安全な場で経験できるとされています。慣れてくれば、力みや頻度を上げて、実際のどもりに近づけていきます。
脱感作は、自分の話し方だけでなく周囲の反応にも向けられます。同じ総説は、笑われる、電話で切られるといった周囲の反応への反応を変えていくために、臨床家が、易しい場面から難しい場面へ進む階層を一人ひとりに合わせて作ると書いています。最初は訓練室のような安全で管理された環境で練習し、慣れるにつれて現実の場面へ移していく。電話であれば、親しい友人にかける、店にかける、と段階が上がり、最後のいちばん難しい課題として挙げられているのが、切られることを期待して飲食店に電話するというものです。繰り返し経験し、実際に何度も切られることが、否定的な感情の反応をやわらげるのに役立つ、と原典は説明しています。⚠ これは臨床家が本人と一緒に組み立てる手順で、階層は人によって違い、同じ階層の人は二人といない、とも同じ総説は述べています。一人で真似する手順として読まないでください。
電話の恐れが強いとき、不安そのものの扱いも論点になります。吃音と社交不安障害の研究状況をまとめた総説は、大きな標本で社交不安の質問紙や精神科的な診断評価を使った近年の研究から、吃音のある成人に社交不安障害が高い割合で見られるという知見が積み上がっているとしています。同じ総説は、言語聴覚士と心理職が協働して評価と支援を組み立てる必要性を、今後の方向として挙げています。慶應義塾大学病院の解説も、社交不安障害を伴うような成人の吃音では、安心して話せる環境を作るとともに、認知行動療法(考え方と行動の両面から働きかける心理療法)を応用した支援が良いと考えられている、と書いています。
ただし「先に不安のほうを治せばいい」とは言えません。ドイツの診療ガイドライン(医師や専門職が診療の拠り所にする指針)は、不安障害やうつなどが一緒にあるときは治療の順序に優先順位を付けるべきだとしたうえで、吃音に伴う不安障害だけを治療しても吃音の頻度は減らず、逆に話し方の流暢さの障害だけを治療しても不安障害は減らないという知見を挙げています。さらに、話し方の流暢さの問題に直接向き合わない心理療法を唯一の治療として用いるべきではない、とも述べています。⚠ どちらを先にするかの具体的な判断基準は、このガイドラインには書かれていません。だからこそ、自分で順番を決めてから窓口を選ぶより、「電話が怖い」と「どもる」の両方を、そのまま持っていくほうが現実的です。窓口の側が、どちらから手をつけるかを一緒に考える相手になります。
窓口を探すときに陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 見つけた番号を、確かめずに控えておく
無料の電話相談やチャット相談は、担い手の都合で受付を止めることがあり、案内のページごと無くなることもあります。ようやく勇気を出してかけた先がつながらなかったとき、その落胆は小さくありません。連絡する直前に、その窓口の公式の案内を開いて、今も受け付けているか・対象は誰か・予約が要るかを確かめてください。公的な問い合わせ先——病院に直接、日本言語聴覚士協会、各都道府県の言語聴覚士会——は、名前を知らなくても辿れる側の入口です。専門の外来は初診専用・完全予約制で、予約が取りにくい状態にあるとも案内されています。
落とし穴2 − 「電話ができないから、相談もできない」と決めてしまう
電話が苦手なことは、相談を諦める理由ではなく、相談する内容のほうです。ことばの専門職は、本人が恐れや不安を感じる話す場面への対処も支援するとされ、その例に「電話で話すこと」が挙げられています。電話そのものを置き換える公共の仕組みとして、総務省が主体となった電話リレーサービスを吃音のある人が使えるとする解説もあります。家族に予約だけ代わってもらう、画面越しの相談を選ぶ、書いて伝える——入口の作り方は一つではありません。「オンライン吃音相談」と「吃音で筆談を使うとき」に、それぞれの確かめ方があります。
落とし穴3 − かけられなかった日を、自分の問題として数える
症状は状況によって出やすくなったり出にくくなったりし、調子の波が数週間から数か月続く人も多いとされています。ストレスや興奮でどもりが増えることもあります。避ける工夫が身につくこと自体、多くの当事者に起きることで、それが最も生活を妨げる部分になりうると研究も書いています。かけられなかった日は、その日の場面の記録であって、あなたの能力の記録ではありません。どの場面で・どんなふうに声が止まったのかを書き留めておくと、次に連絡がついたときに短く伝えられ、相手の確かめ方とも噛み合います。まずは気づいたことを書き留めることから小さく始め、言語聴覚士やことばの教室に相談できる場合は、そちらが確実です。
よくある質問
吃音の電話相談の窓口は、どこに問い合わせれば分かりますか?
吃音ポータルサイトは、吃音の指導や支援を希望する場合、あらかじめ病院に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会や各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内しています。言語聴覚士の業務は多岐にわたるため、全員が吃音の指導や支援を行えるわけではないとされており、この確認が要る、という理由も同じページに書かれています。窓口は開いたり閉じたりするので、連絡する前にその窓口の公式の案内で今の状況を確かめてください。
電話をかけるのが怖くて、窓口に連絡できません。どうすればいいですか?
電話が苦手なこと自体を相談の内容にできます。ことばの専門職は、本人が恐れや不安を感じる話す場面への対処も支援するとされ、その場面の例に「電話で話すこと」が挙げられています。避ける工夫が最も生活を妨げる部分になりうることも、研究が背景として書いています。連絡の手段としては、家族に予約だけ代わってもらう、画面越しの相談を選ぶ、書いて伝えるといった形があり、電話を置き換える公共の仕組みとして電話リレーサービスも挙げられています。
電話相談ですぐに吃音の治療を受けられますか?
無料の電話相談やチャット相談の多くは当事者どうしの集まりが担っており、公的な資料は、当事者の集まりでは言語聴覚士のような学術的な知識や、吃音改善のための専門的な指導や支援が受けられるわけではないと明記しています。一方で、同じ立場からの具体的な助言など、そこでしか得られないものがあるともされています。検査と訓練の方針を立てる専門の外来は、初診専用・完全予約制で、受診希望が多く予約が取りにくいと案内されています。
不安のほうを先に治してから、吃音の相談に行くべきですか?
その順番を勧める根拠は見当たりません。ドイツの診療ガイドラインは、不安障害やうつなどが一緒にあるときは治療の順序に優先順位を付けるべきだとしつつ、吃音に伴う不安障害だけを治療しても吃音の頻度は減らず、話し方の流暢さの障害だけを治療しても不安障害は減らないという知見を挙げ、流暢さの問題に直接向き合わない心理療法を唯一の治療にすべきではないとしています。吃音のある成人に社交不安障害が高い割合で見られるという知見も積み上がっており、専門職どうしが協働して組み立てる必要が指摘されています。両方をそのまま持っていってください。
電話が苦手だと伝えたら、対応してもらえなくなりませんか?
この記事に、個々の窓口の対応を測った資料はありません。分かっているのは、症状は状況によって出やすくなったり出にくくなったりし、調子の波が数週間から数か月続く人も多いということ、そして言いにくい言葉を言い換えて隠すと吃音は目立たなくなる一方、日々警戒しながら生活することになりストレスを抱え込みやすいということです。用件を短く言い換えて切り抜けるほど、困りごとは伝わらずに残ります。どの場面で困っているかを、書いたものにして渡すのが確実です。
まとめ
- 窓口の名前を手がかりにするより、公的な問い合わせ先から辿るほうが確実。吃音の指導や支援を希望するときは、病院に直接、あるいは日本言語聴覚士協会や各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内されている。窓口は開いたり閉じたりするので、連絡する直前に公式の案内で確かめる。
- 専門の外来はすぐつながる窓口ではない。国の医療機関の成人向け専門外来は初診専用・完全予約制で、受診希望が多く予約が取りにくいと案内されている。
- 電話が苦手なこと自体が相談の内容になる。ことばの専門職は恐れや不安を感じる話す場面への対処も支援するとされ、その例に「電話で話すこと」が挙げられている。臨床では、周囲の反応への脱感作を、易しい場面から難しい場面へ進む一人ひとりの階層として組み立ててきた。
- 電話を置き換える手段がある。家族に予約だけ代わってもらう形もあれば、総務省が主体となった電話リレーサービスを吃音のある人が使えるとする解説もある。避ける工夫が最も生活を妨げる部分になりうることも、研究が書いている。
- 不安と吃音は、どちらか片方だけを扱っても、もう片方は減らないとされている。吃音のある成人に社交不安障害が高い割合で見られるという知見も積み上がっている。当事者どうしの集まりは専門的な指導の場ではないが、そこでしか得られないものがあるとされ、参加している人はごく一部と推定されている。