吃音の病院を関西で探す|2府4県の窓口・言語聴覚士会・吃音教室

目次

「関西に、吃音を診てもらえる病院はあるのか」——調べ始めても、出てくるのは埼玉や神奈川の専門外来の案内ばかりで、大阪や兵庫の名前は最後まで出てきません。府県名を足して調べ直すと、今度は「音声障害」の診療科を並べた病院の一覧が出てきて、それが自分の探しているものなのかどうかも分かりません。県境をまたげば通えるのか、それとも関東まで出るしかないのか。住んでいるのが和歌山や滋賀なら、その迷いはもっと大きくなります。

この記事は、国立障害者リハビリテーションセンター(発達障害者支援センターの全国一覧と、幼児吃音臨床ガイドラインを作った研究班)、日本言語聴覚士協会、全国言友会連絡協議会が公開している資料から、関西で辿れる入口を「年齢ごとの最初の窓口」「府県ごとの言語聴覚士会と公的窓口」「当事者と家族が集まる場」の順に並べます。そのあいだに、大阪の吃音教室で電話の第一声について語られた記録、奈良県生駒市で開かれた1日限りのカフェ、和歌山の当事者団体が企画したインタビューを置きます。施設や団体の名前は公開資料に実際に書かれているものだけを挙げ、書かれていないことは「書かれていない」と言います。

ソンタクマン(toVoice 運営)
吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。特定の団体や施設をおすすめするものでもありません。ここに挙げた名前・所在地・日程は、いずれも公開資料を取得した時点の記載です。出かける前、電話をかける前に、必ず各団体・施設の案内でご確認ください。

まず結論から

  • この記事の資料に、関西の吃音専門外来の名前は書かれていません。名前のついた専門外来として資料にあるのは、埼玉県所沢市にある国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来で、18歳以上が対象(高校生は小児吃音外来)・初診専用の完全予約制、受診希望が多く予約が取りにくいと案内されています。
  • 関西で病院を探す入口は、府県ごとの言語聴覚士会です。日本言語聴覚士協会の都道府県士会一覧には、大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県の各言語聴覚士会が載っています。言語聴覚士(聞こえ・ことば・飲み込みの困りごとを扱う国家資格の専門職)は病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などに勤めていることが多い一方、全員が吃音の指導や支援を行えるわけではないので、病院に直接問い合わせるか、この士会に尋ねるよう案内されています。
  • 当事者の場は、関西では府県をまたぐ形で用意されています。大阪吃音教室は毎週金曜日の夜に開かれ、入会できるのは例会に定期的に通える、関西地区(大阪・兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山)に住む高校生以上の人だと案内に明記されています。全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の関西ブロックには、8つの団体が並んでいます。
  • 公的な相談窓口は、府県と政令指定都市で欄が分かれています。発達障害者支援センターの全国一覧の近畿ブロックには、滋賀県2か所・京都府7か所・京都市1か所・大阪府1か所・大阪市1か所・堺市1か所・兵庫県6か所・神戸市1か所・奈良県1か所・和歌山県1か所のあわせて22か所が載っています。同じ府県でも、住んでいる市によって担当が変わります。
  • 「関西だから見つからない」わけではありません。国立障害者リハビリテーションセンターの特集は、幼児の吃音の相談が寄せられるのは保健センター・園・小児科・耳鼻咽喉科・ことばの教室など多岐にわたるものの、言語聴覚士がいない施設がほとんどだと書き、専門家の人数が足りない現状を「すでに医療崩壊状態と言ってもいいくらい」と表現しています。

ただし、ここに挙げた名前・所在地・日程は、いずれも各サイトを取得した時点(2026年8月〜9月)の記載です。一覧に名前が載っていることは、いま受け付けているか、いま活動しているか、吃音を診ているかを保証しません。行くと決めたら、必ずその団体・施設の案内を開き直し、「吃音を診ていますか」を先に確かめてください。

関西で、最初に開ける入口はどこか

病院の名前を先に探すと行き止まりになりますが、窓口の種類から辿ると道が残ります。公的な資料は、その順番を年齢で分けて示していて、この部分は府県によって変わりません。先に押さえておくと、あとの「大阪にはあるが和歌山には無いのか」という迷いが減ります。

就学後の子どもと中高生の入口は、学校です。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターは、通っている学校か地域の教育委員会に相談すれば、その地域の学校に設置されている「ことばの教室」——在籍する学級とは別に、ことばの指導を受けに通う教室で、通級指導教室と呼ばれます——などを紹介してくれるでしょう、と答えています。中学校にも少しずつ設置されてきている、とも書かれています。学校以外で吃音の相談を受け入れている専門機関については、各都道府県にある言語聴覚士会や発達障害者支援センターなどに問い合わせてみるとよい、とも案内されています。教室で実際に何をするのかは、ことばの教室の吃音指導の記事にまとめています。

就学前の子どもについては、窓口の多さそのものが壁になります。同センターの特集は、幼児の吃音の相談が寄せられるのは保健センター、幼稚園・保育園・認定こども園、小児科、耳鼻咽喉科、ことばの教室など多岐にわたるが、言語聴覚士がいない施設がほとんどだ、と書いています。どこに持ち込んでも受け付けてはもらえるけれど、吃音に詳しい人がその場にいるとは限らない、ということです。だからこそ同じ特集は、一般の相談・診療機関が吃音の詳しい説明と、できれば経過観察も担当し、必要を見極めて治療施設に紹介するという連携が必要だ、としています。近くの窓口で経過を見てもらい、必要になったときにつないでもらう。それが、いま国の側が示している道筋です。子どもの吃音を診る外来で初診に何が行われるかは、子どもの吃音外来の記事にあります。

大人の入口は、子どもより細くなります。吃音は、日本言語聴覚士協会が「ことばの障害」に含めている問題で、言語聴覚士は主に病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などのリハビリテーションのスタッフとして勤務している場合が多い、とされています。つまり「吃音外来」という看板が無くても、吃音を診る言語聴覚士のいる病院はありえます。ただし、言語聴覚士の取り扱う業務は多岐にわたるため、必ずしも全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではありません。そこで吃音ポータルサイトは、あらかじめ病院等に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会・各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるよう案内しています。関西では、協会の一覧に載っている大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県の各言語聴覚士会が、その「都道府県の言語聴覚士会」にあたります。どの科にかかるのかという問い自体は「吃音は何科・どの病院?」に、問い合わせるときの聞き方は吃音と言語聴覚士の記事に書きました。

問い合わせの電話で、第一声が出ない

ここまでの入口は、どれも「電話をかける」から始まります。ところが吃音のある人にとって、その電話こそがいちばん通りにくい門であることがあります。大阪の教室で、その場面が具体的に語られています。

藤岡さん(難発のある当事者/日本吃音臨床研究会が公開している「大阪吃音教室 吃音Q&A」。当事者2名の往復で、引用には聞き手にあたるもう1名の発言は含めていません)

はい、どもらない人にはなかなか理解しにくい現象かなと思うし、どもる人にとってもだからこそ余計に困ることが多いと思うんです。例えば、電話のとき最初の一声が出ないと、電話の向こうの人は無言電話かなと思ってしまう。何が起こっているのか分からない。電話でなくても、最初のことばが出ないと、この人どうしたのかなと思われる。何が起こっているのかわかりにくい。だから悩みが深くなると思います。第一声が出ないことについて考えたいです。

連発で「わわわわわたし」と音を繰り返していれば、相手には何かしゃべろうとしていることが伝わる。けれど第一声そのものが出ない状態は、どもらない人にはどもりだと分からない——この人はそこから話し始めています。対面なら手を振るなど体が動くので何かを伝えようとしているのは相手にも分かるが、電話ではそれができない、とも語られています。では相手が分からないときはどうするのか。何かを発する、とにかく何か発する——その手を大阪吃音教室で教えてもらった、とこの人は答えています。予約の電話が取れないまま止まっている人にとって、これは技術の話であると同時に、同じ壁に当たった人が集まっている場所が関西にある、という話でもあります。

出典: 大阪吃音教室 吃音Q&A 4(吃音と上手につきあうための吃音相談室・日本吃音臨床研究会)(台帳: V0138)

その教室は、府県をまたいで通うことが前提になっている場所です。大阪吃音教室は毎週金曜日の18時45分から20時45分まで開かれ、参加費は1回300円(初回は別途、初参加資料代1,700円)、会場は大阪市中央区のCANVAS谷町で、事前の申し込みや連絡は必要ないと案内されています。運営しているNPO法人への入会については、例会に定期的に通える、関西地区に住む高校生以上の人に限るとしたうえで、その関西地区は大阪、兵庫、京都、奈良、滋賀、和歌山の各府県内だと明記されています。関西地区以外の人や中学生以下の人には、別の団体への入会が勧められています。同じ案内は、どもる人が悩みを解決したいと思っても吃音に関する適切な情報が少なく、悩みに充分応えてくれる相談機関に出会うことも極めて難しい現状にある、とも書いています。探しても見つからないのは、探し方が悪いからではない、ということです。

教室で行われているのは、治療ではありません。案内は、吃音治療の特効薬がない現状にあって、吃音教室では吃音を治すことよりも吃音と上手につき合うことを目指す、と書いています。2026年度の予定には「電話と上手につき合うコツ」「職場・学校での吃音を考える」といった回が並び、日曜日に開かれる「吃音相談会」は会員300円・一般参加者は無料(資料代1,000円)と案内されています。医療機関の順番を待つあいだに、電話の話だけを聞きに行くこともできる、ということです。

奈良で2回目の、1日だけの喫茶店

相談先を探している人の全員が、診察や訓練を探しているわけではありません。人前で話す場面をもう一度持ちたい、という人もいます。その入口は、関西では病院の外にも開いています。

廣部朱音さん(奈良県生駒市で開かれた「注文に時間がかかるカフェ」で接客に挑戦した当事者/奈良テレビ放送の報道。接客に立った2人は大学生と伝えられています。引用は記者の地の文と、その中で紹介された発言です)

このほか、来場者と会話をしたり、吃音症にまつわるクイズをしたりして、交流を楽しみました。

接客に挑戦・廣部 朱音さん

「すごく楽しかったです。たくさんの人とお話が出来て、こんなにも話を聞いてくれて、それにきちんと返事をしてくれて、すごく嬉しかったです」

2026年3月21日、生駒市の一角がその日だけ喫茶店になりました。報道によれば、奈良県での開催はこれが2回目です。接客に立ったのは大学生2人で、開店前には「ちょっと緊張しています」「最後までしっかり自分の言葉で伝えきりたいなと思います」という声が記録されています。来場者のひとりは、兄に吃音があって調べていた時期にこの催しを知り、来るのを待っていたと話しています。2人は飲み物を運び終えたあと、外出先で症状が出たときに手軽にやりとりができるカードを来場者に渡した、とも伝えられています。上の言葉は、店を閉めたあとの振り返りです。話し方を直す場ではなく、待ってもらえる場に立ってみる——そういう入口が、関西では府県をまたいで開かれてきました。

出典: 吃音症の若者が接客に挑戦「注文に時間がかかるカフェ」(奈良テレビ放送 TVN NEWS)(台帳: V0350)

この日のことは、カフェの公式サイトの開催一覧にも残っています。近畿の欄には、兵庫県神戸市(2022年10月に2日)、大阪府大阪市・和泉市・茨木市・柏原市・高槻市・箕面市、京都府福知山市・京田辺市、奈良県橿原市と生駒市、和歌山県和歌山市、滋賀県大津市、三重県伊勢市が並び、あわせて25回が記録されています(2026年8月4日取得時点)。奈良の欄にあるのが橿原市と生駒市の2回で、報道の「奈良県での開催は今回が2回目」と一致します。大阪が16回と多い一方で、和歌山と滋賀は1回ずつです。ただし、この店を地名で探しても見つかりません。公式サイトは、接客をしたい若者や企業からの依頼で開催するため、決まった地域での定期開催や常設店は無い、としています。予約制の回は2週間前あたりに公式サイトとXで案内され、主催者の希望で客の一般募集をしない回もある、とも書かれています。仕組みの詳しい話は、東京の例ですが吃音カフェ東京の記事にあります。

注文に時間がかかるカフェの公式サイトの開催一覧「近畿」の欄にある開催日を、府県ごとの帯に並べた図(2026年8月4日取得時点)。大阪府は2023年2月26日から2026年7月25日までのあいだに並び、兵庫県は2022年10月8日と9日、京都府は2023年8月5日と2025年3月15日、奈良県は2023年4月9日と2026年3月21日、滋賀県は2026年9月13日、和歌山県は2024年12月8日、三重県は2022年7月23日。この一覧の「近畿」の欄には三重県も入っている。同じページは、依頼を受けて開催するため決まった地域で定期開催や常設店は無い、とも書いている。
図1: 開催日は府県をまたいで並び、同じ府県で続くとは限らない(開催一覧の「近畿」の欄)。出典: 注文に時間がかかるカフェ|Slow Order Cafe 公式サイト 開催一覧(2026年8月4日取得).

和歌山の当事者団体が、自分たちで聞きに行った

関西の南のほうに住んでいると、「大阪まで出ないと何も無いのでは」と思いがちです。けれど加盟団体の一覧を見ると、関西は府県ごとに会が置かれている地域で、そのうちの一つが自分たちで取材をしています。

小木ハム(和歌山県橋本市出身の漫画家。吃音のある主人公を描いた『2番セカンド』の作者/和歌山言友会が企画したオンラインインタビュー。聞き手も吃音のある当事者です)

和歌山県橋本市の出身で父、母、姉が2人の家庭で育ちました。小学校の低学年の時に吃音があり、自分の言いたいことがすぐに出てこなかったり、言わずに閉じ込めてしまうことが時々ありました。「気にするから、余計につっかえてしまうのかな」と思い、なるべく気にしないようにしようと思ったことをよく覚えています。

幸い、友だちからのからかいはなかったので、あまり悩むことなく学校生活を過ごせました。高学年の頃に、「最近はつっかえなくなったな、低学年の頃はよく連発していたな」と、ふと思い出したことをよく記憶しています。私個人の吃音は軽度で、身体的な面よりも精神的な面の影響が大きかったのかなと感じています。

このインタビューを企画したのは、和歌山言友会です。冒頭で、聞き手自身が「録音して文字起こしをするということで、吃音のある自分にとっては少し心配ですが」と断ってから質問を始めています。ページの末尾には、同会が2019年に設立され、定期例会や勉強会、社会啓発活動を行っていること、活動拠点は和歌山市内の福祉施設およびオンラインであること、全国言友会連絡協議会に加盟していることが書かれています。当事者の会は、専門的な指導を受ける場所ではありません。吃音ポータルサイトも、セルフヘルプグループ(当事者どうしが集まる自助グループ)では言語聴覚士のような学術的な知識や専門的な指導・支援が受けられるわけではないと明記しています。それでも、同じ問題を持つ仲間と出会い、当事者同士でないと感じることのできない連帯感の中で悩みを聞いてもらえることは、そこでしか得られない、とも書かれています。

出典: ★特別企画★ 和歌山在住のマンガ家・小木ハム先生にインタビュー!(和歌山言友会)(台帳: V0430)

関西は、加盟団体の空白が無い地域です。全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の関西ブロックには、京都言友会、すたっと京都、おおさか結言友会、神戸言友会、姫路言友会、奈良言友会、滋賀言友会、和歌山言友会の8団体が並んでいます(2026年8月30日閲覧時点)。同じページは、すべての都道府県に少なくとも1か所の活動拠点を築きたいとしたうえで、加盟団体のない都道府県として青森県・秋田県・福島県・鳥取県・長崎県・沖縄県を名指ししていますが、関西の2府4県はそこに入っていません。ただし全国組織は、子どもの吃音への対応方法の確認や医療機関の紹介といった個別の相談には原則として応じられないとし、希望する場合は近くの加盟団体に連絡してほしい、と明記しています。連絡する先は全国の窓口ではなく、自分の府県の団体のほうです。例会の日時や会場はこの記事の資料に書かれていないので、各団体の案内で確かめてください。近くの自助グループの情報は、ホームページで調べるか言語聴覚士会に問い合わせても分かる、と国立障害者リハビリテーションセンターのQ&Aも案内しています。

府県ごとの窓口を、一覧でどう読むか

公的な相談窓口の一覧は、関西では独特の読み方が要ります。国立障害者リハビリテーションセンターが公開している発達障害者支援センターの全国一覧は、地域ブロックで区切られていて、関西の府県は「近畿ブロック」にまとまっています。この欄に並んでいるのは、次の窓口です(2026年8月30日取得時点)。

  1. 滋賀県 — 滋賀県発達障害者支援センター「南部センター」(草津市)と「北部センター」(彦根市)の2か所。
  2. 京都府・京都市 — 府の欄に京都府発達障害者支援センター「はばたき」(京都市伏見区)と、丹後・乙訓・中丹・山城北・南丹・山城南の6つの圏域支援センター、京都市の欄に京都市発達障害者支援センター「かがやき」(京都市中京区)。府内の読み方は京都の記事にまとめています。
  3. 大阪府・大阪市・堺市 — 府の欄に大阪府発達障がい者支援センター「アクトおおさか」(大阪市中央区)、大阪市の欄に大阪市発達障がい者支援センター「エルムおおさか」(大阪市平野区)、堺市の欄に堺市発達障害者支援センター「アプリコット堺」(堺市堺区)。
  4. 兵庫県・神戸市 — 県の欄にひょうご発達障害者支援センター「クローバー」(高砂市)と、加西・芦屋・豊岡・宝塚・上郡の5つのブランチ、神戸市の欄に神戸市保健福祉局発達障害者支援センター(神戸市中央区)。
  5. 奈良県 — 奈良県発達障害者支援センター「でぃあー」(磯城郡田原本町・奈良県障害者総合支援センター内)の1か所。
  6. 和歌山県 — 和歌山県発達障害者支援センター「ポラリス」(和歌山市葵町)の1か所。

この並びから読み取れることが2つあります。ひとつは、府県によって窓口の数がまるで違うこと。京都府は圏域ごとに7か所、兵庫県はブランチを含めて6か所ある一方、奈良県と和歌山県は1か所ずつです。もうひとつは、政令指定都市が別の欄を持っていることです。京都市・大阪市・堺市・神戸市に住んでいる人の担当は、府や県の窓口ではなく市の窓口になります。一覧の冒頭には、人口規模・面積・交通アクセス・既存の地域資源の有無・自治体内の支援体制の整備状況などによってセンターごとに事業内容が異なるので、初めて利用する人や支援内容を詳しく知りたい人は、まず住んでいる地域を担当しているセンターに問い合わせるように、と書かれています。つまり「関西でいちばん大きい窓口」を探すのではなく、自分の住所で決まる窓口から始めるのが、この一覧の使い方です。

発達障害者支援センター・一覧の近畿ブロックで、府県の欄とは別に市の欄が立っている府県と、府県の欄だけの府県を並べた図。市の欄が別に立っているのは、京都府(京都市)、大阪府(大阪市・堺市)、兵庫県(神戸市)。府県の欄だけなのは、滋賀県、奈良県、和歌山県。京都市・大阪市・堺市・神戸市に住んでいる人の担当は、府や県の欄ではなく市の欄の窓口になる。一覧の冒頭には、人口規模・面積・交通アクセス・既存の地域資源の有無などによってセンターの事業内容は異なるので、まず住んでいる地域を担当しているセンターに問い合わせるように、と書かれている。
図2: 近畿ブロックでは、京都府・大阪府・兵庫県に市の欄が別に立っている。出典: 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害者支援センター・一覧」(2026年8月30日取得).

ここまでを、最初にかける先の順に並べ直します。小学生から高校生なら、通っている学校か地域の教育委員会。就学前の子どもなら、身近な相談機関で説明と経過観察を受け、必要を見極めて紹介してもらう連携が示されています。大人なら、病院への直接の問い合わせと、自分の府県の言語聴覚士会。同じ立場の人に会いたいなら、関西ブロックの8団体か、関西地区に住む高校生以上が入会できる大阪吃音教室です。公的な窓口は、住所で決まる担当センターへ。兵庫県内で探すときの読み方は神戸・兵庫の記事に、通える範囲に相談先が無いときの組み立ては「吃音の相談先が近くにない」オンライン吃音相談の記事にまとめています。県外の大学病院に紹介してもらう場合の順路と待ち時間は、九州の例ですが九州大学の吃音外来の記事に実例があります。

関西で病院を探すときに陥りがちな3つの落とし穴

落とし穴1 − 「吃音外来」という看板だけを探す

吃音は日本言語聴覚士協会が「ことばの障害」に含めている問題で、言語聴覚士は病院のリハビリテーション科や耳鼻咽喉科などに勤務していることが多いとされています。専門の看板が無くても、吃音を診る言語聴覚士のいる病院はありえます。逆に、言語聴覚士がいることと吃音を扱っていることは別なので、どの窓口でも「吃音を診ていますか」を先に聞いてください。問い合わせ先は病院への直接の問い合わせと、大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県の各言語聴覚士会、そして日本言語聴覚士協会です。

落とし穴2 − 「声の障害」を診る科を、吃音の相談先と取り違える

府県名で病院を並べた一覧を見ていると、声のかすれや大きな声が出ないといった「声の障害」を扱う診療科に行き当たります。日本言語聴覚士協会の説明では、声の障害や発音の障害と、スムースに話をすることが難しい吃音は、どちらもことばの障害に含まれつつ別の項目として挙げられています。声を扱う科があることと、吃音を診ていることは別です。手術で治すという話と標準的な治療の違いは「吃音症は手術で治せる?」に整理しました。迷ったら、やはり最初の一言は「吃音を診ていますか」です。

落とし穴3 − 自分の府県の中だけで探して、そこで終わりにする

関西では、府県の線と支援の線が重なっていません。大阪吃音教室の入会の対象は関西地区(大阪・兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山)に住む高校生以上の人で、カフェの開催地も府県をまたいで並んでいます。一方で、公的な窓口は住所で担当が決まります。「自分の県には無い」で止めず、種類ごとに範囲を変えて当たるほうが早く着きます。窓口を変えるたびに一から説明し直さずに済むよう、記録を1枚にまとめておくのも有効です。専門家の合意で作られた評価の指針は、年齢を問わず包括的な評価に共通する中核領域として、吃音に関する背景の情報、ことば・言語・気質の発達、話し方の流暢さと吃音の出方、本人の反応、周囲の人の反応、生活への支障の6つを挙げています。この順に書いておけば、何回目の電話でも同じ材料が使えます。まずは気づいたことを書き留めることから小さく始め、言語聴覚士やことばの教室に相談できる場合はそちらが確実です。

よくある質問

関西に吃音の専門外来はありますか?

この記事の資料に、関西の吃音専門外来の名前は書かれていません。名前のついた専門外来として資料にあるのは、国立障害者リハビリテーションセンター病院の成人吃音相談外来で、18歳以上が対象(高校生は小児吃音外来)の初診専用・完全予約制ですが、受診希望が多く予約が取りにくいと案内されています。案内されている探し方は、病院等に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会・各都道府県の言語聴覚士会に尋ねることです。関西では、大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県の各言語聴覚士会がそれにあたります。

大阪の吃音教室には、奈良や和歌山からでも参加できますか?

例会そのものは毎週金曜日の18時45分から20時45分まで、大阪市中央区の会場で開かれ、参加費は1回300円(初回は別途、初参加資料代1,700円)、事前の申し込みや連絡は必要ないと案内されています。運営するNPO法人への入会については、例会に定期的に通える、関西地区に住む高校生以上の人に限るとされ、その関西地区は大阪・兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山の各府県内だと明記されています。関西地区以外の人や中学生以下の人には、別の団体への入会が勧められています。回ごとに扱う内容が決まっているので、年間の予定を確かめてから行く形になります。

関西に言友会(当事者の会)はありますか?

全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧の関西ブロックには、京都言友会、すたっと京都、おおさか結言友会、神戸言友会、姫路言友会、奈良言友会、滋賀言友会、和歌山言友会の8団体が載っています(2026年8月30日閲覧時点)。同じページが名指ししている「加盟団体のない都道府県」は青森県・秋田県・福島県・鳥取県・長崎県・沖縄県で、関西の2府4県は含まれていません。全国組織は個別の相談には原則として応じられないとしているので、連絡先は自分の府県の団体になります。

発達障害者支援センターは、関西ではどこにありますか?

国立障害者リハビリテーションセンターの全国一覧の近畿ブロックには、滋賀県2か所、京都府7か所と京都市1か所、大阪府1か所・大阪市1か所・堺市1か所、兵庫県6か所と神戸市1か所、奈良県1か所、和歌山県1か所のあわせて22か所が載っています(2026年8月30日取得時点)。政令指定都市は府県とは別の欄を持っているので、京都市・大阪市・堺市・神戸市にお住まいの場合は市の窓口が担当です。センターごとに事業内容が異なるため、まず住んでいる地域を担当しているセンターに問い合わせるよう一覧の冒頭に書かれています。

子どものことばの教室は、関西のどの小学校にありますか?

学校名は、この記事の資料には書かれていません。通っている学校か地域の教育委員会に相談すれば、その地域の学校に設置されている「ことばの教室」などを紹介してくれるでしょう、と国立障害者リハビリテーションセンターのQ&Aが答えており、中学校にも少しずつ設置されてきていると書いています。学校以外で吃音の相談を受け入れている専門機関については、各都道府県の言語聴覚士会や発達障害者支援センターに問い合わせるとよい、とも案内されています。

まとめ

  • この記事の資料に、関西の吃音専門外来の名前は無い。名前のついた専門外来は埼玉県所沢市にあり、そこも予約が取りにくいと案内されている。
  • 大人が関西で病院を探す入口は、病院への直接の問い合わせと、大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県の各言語聴覚士会。全ての言語聴覚士が吃音を扱えるわけではないので、「吃音を診ていますか」を先に聞く。
  • 就学後の子どもと中高生は学校か地域の教育委員会へ。就学前の子どもは、身近な機関で説明と経過観察を受けてから紹介してもらう連携が示されている。
  • 当事者の場は府県をまたぐ。大阪吃音教室は毎週金曜の夜に事前申し込みなしで参加でき、入会の対象は関西地区(大阪・兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山)に住む高校生以上。関西ブロックには言友会など8団体がある。
  • 公的な窓口は近畿ブロックに22か所。府県と政令指定都市で欄が分かれ、担当は住んでいる地域で決まる。
  • 病院の外にも場はある。カフェの近畿の開催は25回で、奈良は生駒が2回目だった。窓口を変えても話し直さずに済むよう、背景・発達・出方・本人の反応・周囲の反応・生活への支障の6つに沿って記録を1枚にまとめておく。一覧に載っていることは、いま受け付けていることとは別。行く前に必ず案内を開き直す。

参考文献

  1. 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害者支援センター・一覧」近畿ブロック(2026年8月30日取得)
  2. 一般社団法人 日本言語聴覚士協会「都道府県士会一覧」(2026年8月30日取得)
  3. 特定非営利活動法人 全国言友会連絡協議会「加盟団体」関西ブロック(2026年8月30日閲覧)
  4. NPO法人 大阪スタタリングプロジェクト「大阪吃音教室 例会案内」(2026年9月11日取得)
  5. NPO法人 大阪スタタリングプロジェクト「入会のご案内」(2026年9月11日取得)
  6. NPO法人 大阪スタタリングプロジェクト「2026年度 大阪吃音教室 年間スケジュール」(2026年9月11日取得)
  7. 注文に時間がかかるカフェ|Slow Order Cafe 公式サイト 開催一覧(2026年8月4日取得)
  8. 吃音ポータルサイト「成人の方 ─ 相談や支援」(金沢大学 小林宏明研究室)
  9. 一般社団法人 日本言語聴覚士協会「言語聴覚士に相談する」
  10. 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「ライフステージ別Q&A Q5.どもっている高校生のDくん」(2026年8月30日取得)
  11. 国立障害者リハビリテーションセンター リハニュース No.370 特集「幼児吃音臨床ガイドライン」の作成と公開
  12. 国立障害者リハビリテーションセンター病院「成人吃音相談外来」
  13. Brundage et al. (2021) Consensus Guidelines for the Assessments of Individuals Who Stutter Across the Lifespan. Am J Speech Lang Pathol.

当事者の声の出典: V0138(日本吃音臨床研究会「大阪吃音教室 吃音Q&A 4」・会報『スタタリング・ナウ』2018年2月20日号の再掲。藤岡さんと伊藤伸二の往復)/ V0350(奈良テレビ放送 TVN NEWS・2026年3月27日公開。生駒市で開かれた「注文に時間がかかるカフェ」の報道/接客に挑戦した廣部朱音さんの発言)/ V0430(和歌山言友会 公式サイト・2026年取得。同会が企画した漫画家 小木ハムさんへのオンラインインタビュー)。いずれも公開ページです。引用は原文どおりで、表記も変えていません。話者の情報は台帳の事実シートに記載のある範囲までにとどめています。

更新履歴: 2026-09-11 公開