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中学生の吃音が急に出た3つの背景|発症か悪化かの見分け・受診の目安

中学生の吃音が急に出た3つの背景|発症か悪化かの見分け・受診の目安
目次

「中学生になって、急に吃音(きつおん)が出てきた」「これまでより急にどもりが強くなった気がする」——本人にとっても、見守る保護者にとっても、突然のことに戸惑い、不安になりますよね。

この記事では、その「急に」を新しく始まった(発症)のか、もともとあった吃音が強く感じられている(顕在化・悪化)のかに切り分けるところから始めます。中学生でまれに起こる新規発症や獲得性吃音の可能性、受診の目安、そして学校生活での向き合い方までを、研究の出典つきで整理します。

ソンタクマン
ソンタクマン(toVoice 運営)
吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。気になる症状があるときは、言語聴覚士のいる医療機関やことばの教室にご相談ください。

「中学生で急に」——まず発症と悪化を切り分ける

中学生になって「急にどもるようになった」と感じたとき、最初に落ち着いて確認したいのは、その「急に」が2つのうちどちらか、ということです。ひとつはこれまで無かった吃音が本当に新しく始まった(発症)ケース、もうひとつはもともと軽くあった吃音が、思春期になって強く感じられるようになった(顕在化・悪化)ケースです。次に何をすべきかは、このどちらかで大きく変わります。

手がかりになるのが、吃音が「いつ始まりやすいか」という事実です。吃音の発症リスクの大半は5歳までに終わるとされ、発症は幼児期に集中します(P0001)。つまり中学生という年齢は、統計的には吃音が新しく始まりやすい時期ではありません。だからこそ、「急に」と感じたときも、まずは慌てずに切り分けることが役に立ちます。

中学生での新規「発症」はまれ — でもゼロではない

いわゆる一般的な吃音(発達性吃音)は、幼児期に自然に始まるもので、思春期以降に新しく報告される例はほとんどないとされています(P0024)。発症リスクの大半が5歳までに終わるという疫学の知見とも一致します(P0001)。ですから、中学生になって完全に新しく発症するのは、統計的にはまれです。

この事実は、少し安心材料にもなります。中学で「急にどもるようになった」と感じるケースの多くは、実はもともと軽くあった吃音が、人前で話す場面の増加や自分への意識の高まりによって、強く自覚されるようになったものだと考えられるからです。もちろん「まれ=絶対にない」ではありません。特発性の吃音の症状が成人期に始まる例も報告されており(P0024)、思春期以降に本当に新しく始まる可能性はゼロではありません。次の章で、その例外にあたる「獲得性吃音」を見ておきます。

思春期以降に本当に急に始まる吃音 — 獲得性吃音という例外

もし「これまで全く吃音が無かったのに、中学生になって本当に急に始まった」という場合に知っておきたいのが、獲得性吃音(かくとくせいきつおん)です。これは脳卒中や頭部のけが(外傷性脳損傷)などの神経学的な出来事のあとに大人で生じることがある吃音で、幼児期に始まる発達性吃音とは区別されます(P0023)。

また、獲得性吃音のすべてが脳の病気やけがによるわけではなく、一部は神経の病気ではなく心理的な要因(心因性)を背景に持つとされています(P0023)。成人発症の吃音は、神経学的または心理的な負荷のあとに生じることがあると報告されています(P0024)。中学生でこうした獲得性吃音が起こるのは非常にまれですが、「けがや体調の変化のあとに、急に、これまで無かった吃音が始まった」ようなときは、自己判断せず医療機関で背景を確認しておくと安心です。

「もともとの吃音」が中学で強く感じられるとき

中学生の「急に」でより多いのは、もともとあった吃音が、場面や自覚の変化で強く感じられるケースです。吃音は毎回同じように出るわけではなく、出やすい時期と出にくい時期の「波」があります。中学では音読・発表・日直のスピーチなど、人前で話す場面が一気に増え、とくに言葉が出ずに間があく「難発(なんぱつ)」が目立ちやすくなります。

当事者本人の声(幼少期から吃音/個人ブログ note)

頭では言葉が思い浮かんでいるのに、声に出して発言することが出来ない。

この「言いたいのに言えない」感覚は、難発の特徴とよく重なります。この方の吃音は幼稚園のころからあり、中学でも続いていました。これは発達性吃音が幼児期に始まって思春期以降も続くこと(持続型)がある、という知見と一致します(P0001, P0024)。中学の発表やスピーチで強く自覚されても、それは新しく始まったのではなく、もとからある吃音であることが多いのです(P0024)。

出典: 頭では浮かぶのに声が出ない——吃音当事者ゆーたの手記(note)(台帳: V0033)

中学校生活でつらく感じやすい場面(本人向け)

吃音のある中学生が負担を感じやすいのは、話す相手や場面が決まっている状況です。音読、授業での指名、日直の号令やスピーチ、自己紹介、部活動の掛け声、そして受験の面接など、「言い換えがきかない」「みんなが聞いている」場面ほど、難発が出やすく感じられます。言いやすい言葉に置き換えてしのぐ、という工夫をしている当事者も少なくありません。

当事者本人の声(難発性吃音/個人ブログ)

学校が自分の世界のすべてだった

思春期は、学校という場が本人にとって大きな比重を占め、話す場面での緊張が積み重なりやすい時期です。この方も学生時代を通じて吃音があり、中学で急に始まったわけではありません——大人になっても吃音が続く人がいる(持続型)ことの一例です(P0001)。だからこそ「急に強くなった」と感じても、まず本人を責めないこと、そして場面ごとの工夫が支えになります。

出典: 学生時代、音読と発表がつらかった——吃音当事者misaのブログ(台帳: V0034)

保護者はどう見守ればいい?(保護者向け)

保護者としてまず知っておきたいのは、中学生の「急に」の多くが新規発症ではなく、もともとの吃音の顕在化だという点です(P0024, P0001)。ですから、慌てて原因を一つに決めつけるより、話し方ではなく話の中身を最後まで聞く姿勢が土台になります。「ゆっくり」「落ち着いて」と話し方だけを指示すると、本人がすでに気にしている場面では、かえって身構えてしまうこともあります。

当事者の手記には、学校でのつらさを親に伝えても十分に受け止めてもらえなかった、と感じた経験がつづられているものもあります。原因さがしや助言よりも、「困っていること」をそのまま聞き、必要なら一緒に相談先を探す——そうした関わりが、思春期の本人には支えになります。気になる様子が続くときは、様子見だけにせず、次の章の目安を手がかりに専門機関へつなぎましょう。

セルフチェック — 相談を考える目安

次のような様子があるときは、専門機関への相談を考える目安になります(これは診断ではなく、あくまで受診を考えるためのめやすです)。

当てはまる項目があっても、すぐに重い病気とは限りません。逆に、当てはまらなくても本人がつらいなら相談してかまいません。判断に迷うときこそ、専門家の力を借りるのが近道です。

受診の目安と相談先 — 何科・どこへ?

吃音の相談の中心になるのは、言語聴覚士(ST)のいる医療機関や、学校教育の中にあることばの教室(通級指導教室)です。中学生以上を対象にした吃音外来を設けている大学病院などもあります。医療機関では、耳鼻咽喉科・小児科・リハビリテーション科などに言語聴覚士がいることがあります。

とくに、けがや病気のあとに急に始まったなど獲得性吃音が疑われる場合は、まず医療機関で神経学的な背景を確認しておくことが大切です(P0023)。学校生活の悩みが大きいときは、スクールカウンセラーや、吃音の自助団体(言友会など)も相談先になります。どこに行けばよいか迷う場合は、まずかかりつけ医やことばの教室に相談し、必要に応じて紹介してもらうとスムーズです。

中学生の吃音で陥りがちな3つの落とし穴

落とし穴1 − 「急に発症した」と思い込んで慌てる

中学生で完全に新しく発症するのはまれで、多くはもともとの吃音の顕在化です(P0024, P0001)。「急に」に驚いても、まず発症か悪化かを切り分けると、必要以上に不安を抱えずにすみます。

落とし穴2 − 「気の持ちよう」「性格」の問題にしてしまう

吃音は、話し言葉に関わる脳の神経(白質)の特徴と関連することが画像研究でも示されており、気の持ちようや性格だけの問題ではありません(P0024)。本人の努力不足のせいにしないことが、まず大切です。

落とし穴3 − 記録せず、一人で抱え込む

症状には波があるため、いつ・どんな場面で出やすいかを記録しておくと、受診や相談のときに経過を正確に伝えられます。ネットの断片情報だけで判断せず、専門機関につなぐことが近道です。

まずは日々の様子を書きとめることから、小さく始めるのが現実的です。記録を続けたいときは、発話の記録を続けやすくするアプリを使う方法もあります(アプリは記録と継続を支えるもので、治療をうたうものではありません)。言語聴覚士など専門機関に相談できる場合は、そちらが確実です。

よくある質問

中学生になって急に吃音が出ました。新しく発症したのでしょうか?

発達性吃音は幼児期に始まることが多く、思春期以降に新しく報告される例はほとんどないとされています(P0024)。発症リスクの大半は5歳までに終わるという疫学の知見もあります(P0001)。そのため「急に」と感じても、多くはもともとあった吃音が強く自覚されたものと考えられますが、気になるときは専門機関に相談してください。

中学生でも、新しく吃音が始まることはありますか?

まれですが、ゼロではありません。特発性の吃音の症状が成人期に始まる例も報告されています(P0024)。また、けがや病気のあとに生じる獲得性吃音の可能性もあり、その場合はまず医療機関で背景を確認することがすすめられます(P0023)。

中学生の吃音は自然に治りますか?

幼児期に始まった吃音は自然に回復する割合が高いことが、縦断研究などから支持されています(P0001)。一方で、大人になっても続く「持続型」の人もいます(P0001)。中学生の段階で気になるときは、自己判断せず言語聴覚士のいる医療機関やことばの教室に相談すると安心です。

何科に相談すればいいですか?

言語聴覚士のいる医療機関や、ことばの教室が中心の相談先になります。とくに、けがや病気のあとに急に始まった場合は、まず医療機関で神経学的な背景を確認してもらうことが大切です(P0023)。中学生以上を対象にした吃音外来を設けている病院もあります。

吃音は緊張やストレスが原因ですか?

発達性吃音の背景には、話し言葉に関わる脳の神経の特徴があるとされ、緊張やストレスだけが原因ではありません(P0024)。ただし、人前で話す場面などで出やすいと感じる人は多く、場面の工夫や周囲の理解が負担をやわらげる助けになります。

まとめ

参考文献

  1. (P0001) Yairi & Ambrose (2013) Epidemiology of stuttering: 21st century advances. J Fluency Disord.
  2. (P0023) Lundgren et al. (2010) Stuttering Following Acquired Brain Damage: A Review of the Literature. Journal of Neurolinguistics.
  3. (P0024) Chang et al. (2010) Similarities in speech and white matter characteristics in idiopathic developmental stuttering and adult-onset stuttering. Journal of Neurolinguistics.

当事者の声の出典: V0033(note・ゆーた)/ V0034(個人ブログ・misa)。いずれも公開記事。引用は原文どおり。

更新履歴: 2026-07-22 公開

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