日本吃音協会とは?|読み方・NPOの活動・関わった当事者の記録

目次

「日本吃音協会」という名前を、どこかで見かけた——そこから、この団体は実在するのか、何をしているところなのか、自分や子どもが関わっていい場所なのかを確かめようとして、ここまで来た方が多いと思います。名前だけでは、公的な窓口なのか、当事者の集まりなのか、そもそも「吃音」をどう読むのかさえ分かりません。

この記事は、日本吃音・流暢性障害学会が公開している学会概要、全国言友会連絡協議会や各地の言友会の公式サイト、国の研究班の関係者が運営する吃音ポータルサイトを拠り所に、名前の読み方と団体の性格を整理します。そのうえで、この協会に関わった当事者4人が自分で書き残した記録を並べ、当事者の団体に参加すると何が起きるのかについて筑波大学やアイオワ大学の研究が言えているところまでを、出典つきでお伝えします。

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吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。気になる症状があるときは、言語聴覚士やことばの教室にご相談ください。

まず結論から

  • 「吃音」は「きつおん」と読みます。話し言葉が滑らかに出ない発話障害のひとつで、時間が止まったように感じる「難発」のほか、音を繰り返したり引き伸ばしたりする症状があります。
  • 「協会」「言友会」と名の付く吃音の団体の多くは、当事者どうしの集まり(セルフヘルプグループ=自助グループ)です。学術団体である日本吃音・流暢性障害学会とは、集まる人も目的も違います。
  • 自助グループでは、言語聴覚士のような学術的な知識や、吃音を改善するための専門的な指導・支援が受けられるわけではありませんその代わり、当事者どうしでないと得られないものがある、とも同じ資料は書いています。
  • 当事者の会に通っている人に理由を聞いた研究では、13人中12人(約92%)が、会に出て自分の吃音の見方が前向きに変わったと答えています。日本の当事者を対象にした研究でも、自助グループの経験があることは、吃音を自分から打ち明ける度合いの高さと結びついていました。
  • ただし、団体につながっている当事者はごく一部です。英語圏のデータをもとにした推定では、吃音のある成人のうち当事者のコミュニティに関わっているのは1%前後とされています。名前を知らないほうが、むしろ普通です。

ただし、日本吃音協会という個別の団体について、この記事が手元で確かめられる一次の資料は、同協会の公式サイトに置かれた当事者本人の手記と、所属する当事者本人が答えたインタビューだけです。ですから以下では、団体についての記述はすべて「本人がそう書いている」という範囲にとどめ、活動の実績や評判をこの記事で判定することはしません。2022年にこの団体をめぐって起きた出来事とその受け止めは、別の記事で扱います。

「吃音」は「きつおん」——名前の読み方と、似た名前の団体

まず読み方から確かめます。吃音は「きつおん」で、話し言葉が滑らかに出ない発話障害のひとつです。発話の滑らかさやリズミカルな流れが乱れる話し方が吃音と定義されている、と当事者団体のページは説明しています。言葉を出そうとしているのに時間が止まったように感じるのは「難発」という症状で、ほかに音を繰り返したり引き伸ばしたりする症状もあります。「日本吃音協会」も、そのまま「にほんきつおんきょうかい」と読みます。

次に、名前の形です。吃音について調べていくと、「学会」「協会」「言友会」「研究会」と、似た形の名前が次々に出てきます。このうち「学会」と呼ばれているのは日本吃音・流暢性障害学会で、吃音および流暢性障害(話すときのなめらかさに関わる状態をまとめた呼び方です)の研究の発展と、研究や医療・福祉・セルフヘルプグループ活動などに関わる者どうしの相互交流を図ることを目的とした学術団体です。事業として挙げられているのは、学術集会の開催、原因や評価や臨床についての研究・調査と知識の普及、国内外の関連団体どうしの連携の促進、機関誌の発行の4つです。

一方、当事者の側の全国組織として名前が挙がるのが全国言友会連絡協議会です。同会は、北海道・東北から九州・沖縄まで、ブロックごとに各地の言友会を並べた加盟団体の一覧を公開しています。ただしこの全国組織は、子どもの吃音への対応方法の確認や医療機関の紹介といった個別の相談には原則として応じられないと明記していて、希望する場合は近くの加盟団体に連絡してほしい、と案内しています。名前が似た4つの団体が、それぞれ誰の集まりで何をする場なのかは、名前の似た団体を並べた記事にまとめてあります。この記事では、そのうちの「日本吃音協会」という名前に絞って見ていきます。

「日本吃音協会」を立ち上げた人が、自分で書いていること

この名前をたどっていくと、NPO法人日本吃音協会の公式サイトに行き当たります。そこに置かれているのは、団体の沿革でも事業の一覧でもなく、この団体を立ち上げた本人の手記です。

NPO法人日本吃音協会 理事長・藤本浩士さんの手記(同協会の公式サイト「Fujimoto's Story 〜SCWにかける思い〜」)

私は「NPO法人日本吃音協会」を立ち上げました。

「NPO法人の立ち上げ」

この言葉だけ聞くと「すごい」と感じる人もいるかもしれません。

でも、私にも吃音があり、吃音で悩んでいる多くの人と同じような経験をしてきました。

小学1年生の時には、友達から喋り方を真似されたことを覚えています。

手記は、これまで経験してきたこと、なぜこの協会を立ち上げたのか、関わってもらった人にどうなってほしいのかを紹介します、という前置きから始まります。そこから書かれていくのは、音読で人が30秒で読めるところを毎回5分ほどかけて読んだこと、クラス替えのたびに「自己紹介で上手く話せるかな」で頭がいっぱいだったこと、高校入試の面接で面接官に掛けられた一言。団体の入口に置かれているのが、制度の説明ではなく一人の当事者の記憶だという点が、名前の印象との最初のずれになります。吃音の影響が話し方そのものだけでなく、心理的な苦痛や恥、話す場面を避けることに及び、それが孤立につながりうることは、研究の側も整理しています。

出典: Fujimoto's Story 〜SCWにかける思い〜(NPO法人日本吃音協会)(台帳: V0367)

同じ手記には、この団体でやっていることも本人の言葉で並んでいます。吃音のある小中学生に社会人の学習支援スタッフ(吃音当事者)が、学校で先生に聞けなかったことを教えたり将来の不安の相談に乗ったりする学習教室。就活の支援から子育てまでを一貫して支えるという当事者向けのオンラインサロン。啓発のパンフレットやポスターを使った活動。そのほかにキャリア支援、各種イベントの運営、保護者の悩み相談会、いつでも相談できるメンター制度が挙げられています。これらは本人が「整えています」と書いているもので、第三者が実施状況を確かめた記録ではありません。

ここで押さえておきたいのは、自助グループをどう運営すればよいかについて確立した公式の指針は見当たらない、と研究が書いていることです。同じ「当事者の団体」という言葉でくくられていても、やっていることの形は団体ごとに違ってよく、実際に違います。自助グループそのものについては、当事者が集まり、判断されることなく気持ちや体験を分かち合える安全な場として位置づけられ、参加が生活の質の改善につながりうると先行研究が報告している、と同じ論文は整理しています。

所属している人は、そこで何をしているのか

団体の説明を読んでも、実際に所属している一人ひとりが何をしているのかまでは見えません。重症心身障害者施設で介護士として働く当事者が、あるインタビューで自分の所属先について答えています。

NPO法人日本吃音協会(SCW)に所属する当事者・山崎拓也さん(重症心身障害者施設の介護士。オンラインメディアのインタビュー記事)

SCWの由来は英語の略でStuttering(吃音)・Change(変える)・The World(世界)、「吃音が世界を変える」という意味で吃音がある人もない人も楽しく自由に話せる場所でありたいという想いで付けられたと記憶にあります。

主にオンラインサロンや交流会・Instagramで吃音の世界を発信しています。

インタビューは自己紹介から始まっています。施設で働いて6年目、胃瘻や経管栄養のチューブの確認、自分で食事をすることが難しい人の食事介助。今の施設で働こうと思ったきっかけを聞かれて、本人はまず自分に吃音があることを挙げ、就職活動をしていたときに数カ月ほど言葉が全く出てこない状態になったことがあった、と答えています。当事者として体験したことで障害のある人の生活に関心を持つようになった、と続き、協会に所属している話が出てくるのはそのあとです。所属は肩書きではなく、仕事の話の延長に置かれていました。日本の当事者を対象にした研究でも、自助グループの経験があることは、吃音を自分から打ち明ける度合いの高さと結びついていました。

出典: メディカル対談バラエティ!あなたの在り方教えて!|山崎拓也さんインタビュー!(note・メディシェアJAPAN)(台帳: V0500)

その研究をもう少し見ておきます。日本の吃音のある成人を対象にした調査は、吃音を自分から打ち明けること(自己開示)の度合いが、米国の調査より低かったと報告しています。そのうえで、より高い自己開示と結びついていたのは、自助グループの経験があること、自分を受け入れられている度合いが高いこと、自分に向けた否定的な決めつけ(自己スティグマ)が低いこと、そして自分で男性と答えたことでした。原典は、日本の当事者の自己開示が低めなのは社会文化的な違いを反映しているのかもしれない、と述べるところまでで止めています。

オンラインの活動についての報告もあります。中国の当事者向けのオンラインコミュニティを調べた研究は、専門家の支援が入った活動に参加した人のほうが、吃音の悪影響を測る質問紙のすべての領域と全体の得点で、参加しなかった人より悪影響が小さかったと報告しています。同じ研究は、SNS上の日常的なやりとりが、気持ちを受け止められる経験と人とのつながりをもたらしたとも論じています。ただし、参加するかどうかは本人が選んでいるので、参加したから良くなった、という順序までをこの結果から読み取ることはできません。

名前をたどって行き着いた先で、何が起きたのか

団体の名前を手がかりに、実際に足を運んだ人は、そこで何に出会ったのか。吃音のある人の就労支援を仕事にしている当事者が、その最初の場面を書き残しています。

当事者本人(NPO法人どーもわーく職員・宮脇愛実さん/ウェブメディア soar の記事)

吃音仲間に出会えたこともまた、私にとって大きな支えでした。大学生とき、インターネットで検索して見つけた団体をきっかけに、人と人とのつながりで年の近い吃音のある方たちに出会うことができたのです。「一人じゃなかった、同じ仲間がこんなにいる。」私以外にも吃音を持っている人がいるのだと、ホッとして嬉しさがこみ上げてきました。

5歳のとき、保育園で蝶が苦手だと先生に伝えに行って「蝶々の“ちょ”」が全く出てこなかった。小学校では音読のある国語の授業が嫌で、1週間前から不安だった。就職活動では入退室の「失礼いたします」の「し」が出ず、相談したキャリアカウンセラーからは隠しておくよう助言された。その時期を越えた大学生のときの場面が、引用した一節です。本人はこのあと、変わったのは話し方ではなく、「吃音があるから私は引っ込み思案なんだ」という自分についての説明のほうだった、と書いています。同じ立場の人に会うこと自体に何が起きているのかは、研究の側でも調べられています。

出典: 吃音に悩みながらも自分らしくいられる仕事に就職。宮脇愛実さんが伝えたいこと(soar)(台帳: V0111)

南アフリカで自助グループに通う20歳から58歳の成人13人に、通う理由を聞いた研究があります。会に出て、吃音とともに生きているのは自分だけではないと気づいたと述べた人は7人(約54%)。会に出ることで自分の吃音を受け入れられるようになったと述べた人は8人(約62%)。会が、自分の話が聞かれ、安全で、くつろげて、居場所があると感じられる場だったと述べた人は9人(約69%)でした。

ただし、この研究には会に出ても吃音の見方は変わらなかったと答えた人も1人いて、その理由として周りの聞き手の反応や世間の見方を挙げています。世の中の見方が変わらない以上、流暢に話せないことへの否定的な見方が自分の中に残る、という趣旨の語りです。会に行けば必ず何かが変わる、という話ではありません。

助けられる側から、関わる側へ

日本吃音協会の公式サイトには、理事長以外の当事者の手記も載っています。そのうちの一つは、NPOに参加することを決めた理由と、決めるまでの迷いの両方を書いています。

NPOに参加した当事者・やっちさん(29歳・製薬会社の研究員/同協会のサイトに載った手記)

私はまだ吃音を克服できていません。克服できていないにもかかわらず、人を助ける側に立っても良いのだろうかと考えることもありました。

ただ、克服できていないからこそ吃音者を助けたいという気持ちが風化することなく、熱意を保ちながら活動に取り組むことができると思うのです。

手記は自己紹介から始まります。製薬会社で研究員として働く29歳で、両親によると3歳のころから吃音があった。「吃音で友達ができない。孤独な学校生活を送っている。」——そういう状況にいる人の助けになりたいと思ってNPOに参加することを決めた、と冒頭に書いたうえで、そう思うきっかけになった学生時代を振り返っていきます。中学1年までは話すことが好きな子どもだった、とも書かれています。引用したのは、その手記の締めくくりにあたる部分です。当事者の会が、支えを受け取るだけの場ではないことは、研究でも触れられています。

出典: 学生時代の吃音の経験とNPOにかける思い(NPO法人日本吃音協会)(台帳: V0116)

先ほどの13人の研究では、会は与えることと受け取ることが同時に起きる場だと強調した人が3人(約23%)いて、洞察・励まし・支え・助言といった言葉が挙がっています。他の吃音のある人から話し方や対処の工夫を学べることに価値を見いだしたと述べた人は7人(約54%)でした。

若い世代についての報告もあります。当事者団体が開く数日間の大会に参加した10代を追った研究では、大会の前と直後をくらべると、吃音の否定的な影響を測る質問紙の得点が下がっていました(偶然のばらつきでは説明しにくい差です)。参加者への面接からは、仲間・共同体をつくること、参加者どうしの学び合い、考え方と話し方の変化、自分を受け入れること、吃音を特別なことでなくしていくこと、という5つのテーマが見いだされています。ただし原典は、自助団体は吃音の否定的な影響を減らすうえで有益「かもしれない」とし、従来の言語療法に「加える」選択肢として検討する価値がある、という書き方をしています。言語療法の代わりになるとは書いていません。

近くに行ける場所があるかどうかを、どう確かめるか

特定の団体の名前から入ってきた場合でも、実際に足を運べるかどうかは住んでいる場所で決まります。地域の当事者会を探す入口として公開されているのが、全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧です。北海道・東北、関東、中部、関西、中四国、九州・沖縄のブロックごとに団体名が並んでいます。ただしこのページに載っているのは団体名だけで、連絡先や例会の日時、活動内容までは書かれていません。

同じサイトには、加盟団体のない都道府県が名指しで挙げられています青森県、秋田県、福島県、鳥取県、長崎県、沖縄県の6県です。全国組織は、吃音のある人どうしが体験を語り分かち合うセルフヘルプグループを全国に広げたい、すべての都道府県に少なくとも1カ所の活動拠点を築きたいが、まだゴールは見えていない、と書いています。近くに見つからないのは、探し方が悪いからとは限りません。

実際の会の形は、公開されている案内から読み取れます。東京言友会は、例会が月に2回、第2週土曜は巣鴨の事務所で、第4週金曜は三田の東京都障害者福祉会館で開かれると案内しています。当事者とその家族・支援者については入会前の見学が歓迎されており、事前連絡も要らず、途中参加・途中退室も問題ないと明記されています。費用は、非会員の例会参加費が初回無料・2回目以降500円、会員は無料で年会費は3,000円です。オンラインの交流会もあり、こちらは参加時にビデオオフ・音声オフでも問題ないと書かれています。

会は一種類ではありません。よこはま言友会は、横浜例会、川崎日曜例会、こども若者例会、吃音改善トレーニング部と、目的も曜日も会場も違う複数の集まりを並べて案内しています。こども若者例会は毎月第一日曜に川崎で開かれ、対象は吃音のある小学3年生から高校生、参加費は無料で申し込みが必要です。同会は、ことばの教室は小学校にしかないため支援が行き届かなくなる中学生・高校生に対して吃音の支援ができる場である、として県の賞を受けたことも告知しています。なお、ここに挙げた日程や金額は資料を取得した時点のものなので、行く前に各団体の公式の案内で確かめてください。

近くに会が無い場合や、人前で話すこと自体が不安な場合の道も、研究の側から示されています。先ほどの13人の研究は、対面とオンラインを組み合わせると場所の壁が減って参加しやすくなると提案する一方で、オンラインに必要な手段を持たない人がいることも考える必要があると書いています。話したくない人は発言しなくてよいと参加者に伝えるべきだ、とも述べています。オンラインのグループについては、利点と課題の両方が報告されたうえで、対面の経験と組み合わせて使うことで当事者どうしの支えを得る手段になりうる、というのが結論です。東京で実際に開かれている場の様子は、吃音カフェと当事者会の記事にまとめています。

個別の困りごとは、どこへ持っていくか

ここまで見てきたのは、当事者が集まる場の話です。困っていることが具体的で、自分一人の状態を見てほしいときには、行き先が別にあります。

公的な解説は、線引きをはっきり書いています。セルフヘルプグループは当事者の集まりなので、言語聴覚士のように、吃音についての学術的な知識や、吃音改善のための専門的な指導や支援が受けられるわけではありませんその代わり、同じ問題を持つ仲間と出会い、当事者どうしでないと感じることのできない連帯感のなかで悩みを聞いてもらったり、同じ悩みを持つ者どうしという立場で具体的な助言をもらったりできる、とも同じ資料は書いています。どちらか一方ではなく、役割が違うということです。

個別の指導・支援を担うのは言語聴覚士です。国家資格で、養成課程の中に吃音が含まれています。ただし、言語聴覚士の取り扱う業務は多岐にわたるため、必ずしも全ての言語聴覚士が吃音の指導や支援を行えるわけではありません希望する場合は、あらかじめ病院に直接問い合わせるか、日本言語聴覚士協会や各都道府県の言語聴覚士会に尋ねるのが確実だとされています。子どもの場合の学校内の相談先はことばの教室ですが、これは小学校にしか置かれていないため、中学生・高校生には届きにくい、という事情が当事者団体の側から指摘されています。

次のようなときは、団体の名前を調べ続けるより先に、相談を考えてみてください(あくまで目安で、当てはまらなくても相談して構いません)。

  • 話す場面を避けることが増えて、生活や仕事の選択肢が狭まってきた
  • 学校や職場で配慮を頼みたいが、何をどう頼めばいいか分からない
  • 子どもの吃音が続いていて、就学や進級の時期が近づいている

この3つは相談を考えるきっかけとして挙げたもので、特定の資料が「受診の目安」として定めているものではありません。なお、すべての言語聴覚士が吃音の指導・支援を行えるわけではないので事前に問い合わせる、という手順のほうは公的な解説が実際に示しているものです。どこに何を相談できるかは吃音の相談先の記事にまとめています。

特定の団体名を調べるときの3つの落とし穴

落とし穴1 − 名前が似ているというだけで、その団体の公式だと思い込む

吃音の団体は名前の形が似ていて、公式かどうかを名前だけで見分けることができません。よこはま言友会は、団体と無関係の者が同会の旧ホームページのドメインを利用して別名のホームページを開設していること、その相手と同会は一切関係がないことを、自分のサイトで告知しています。当事者団体自身が、自分の名前をめぐる混同に注意を呼びかけているという事実は、それだけ紛らわしい状況があることを示しています。正式な加盟団体の一覧は全国組織が公開しているので、連絡する前に、その団体自身の公式サイトで正式名称と連絡先を確かめてください。

落とし穴2 − 「その団体に入れば話し方が変わる」と期待する

自助グループでは、言語聴覚士のような学術的な知識や、吃音を改善するための専門的な指導・支援が受けられるわけではない、と公的な解説ははっきり書いています。研究の側も、自助団体は吃音の否定的な影響を減らすうえで有益「かもしれない」、従来の言語療法に加える選択肢として検討する価値がある、という慎重な書き方にとどめています。会に出ても吃音の見方は変わらなかった、と答えた人の記録も残っています。指導や訓練を求めているなら、行き先は言語聴覚士です。

落とし穴3 − 団体を調べることに時間を使って、目の前の困りごとが後回しになる

当事者のコミュニティに関わっている成人は、英語圏のデータをもとにした推定で1%前後とされています。同じ論文は、脱落や重複の数え上げのため実際の関与はこれより低かったはずだとも述べています。どの団体にもつながっていない人のほうが圧倒的に多数で、それは失敗ではありません。まずは日々の話しにくさ——どんな場面で出やすいか、そのとき周りがどう応じたか——を書き留めておくところから小さく始め、困りごとが具体的なら言語聴覚士やことばの教室に相談するのが確実です。記録が残っていれば、相談の場で伝えられることが増えます。

よくある質問

日本吃音協会とは、どんな団体ですか?

この記事が手元で確かめられる一次の資料は、NPO法人日本吃音協会の公式サイトに置かれた本人の手記と、所属する当事者が答えたインタビューです。そこには、吃音のある本人が立ち上げたNPO法人であること、吃音のある小中学生向けの学習教室やオンラインサロン、啓発活動、相談のメンター制度を整えていることが、本人の言葉で書かれています。第三者が実施状況を確かめた記録ではないため、この記事では実績や評判の判定はしません。名前が似た学会・言友会・臨床研究会との違いは、日本吃音・流暢性障害学会の公開資料などをもとに別の記事に整理しました。

「吃音」「日本吃音協会」は何と読みますか?

吃音は「きつおん」と読み、日本吃音協会は「にほんきつおんきょうかい」と読みます。吃音は話し言葉が滑らかに出ない発話障害のひとつで、発話の滑らかさやリズミカルな流れが乱れる話し方が吃音と定義されています。言葉が出ずに時間が止まったように感じる「難発」のほか、音を繰り返したり引き伸ばしたりする症状もあります。

協会や当事者の会に入ると、吃音は改善しますか?

自助グループは当事者の集まりなので、言語聴覚士のような学術的な知識や、吃音改善のための専門的な指導や支援が受けられるわけではない、と公的な解説は明記しています。研究の側も、自助団体は吃音の否定的な影響を減らすうえで有益かもしれず、従来の言語療法に加える選択肢として検討する価値がある、という書き方にとどめています。改善のための指導を希望する場合は、言語聴覚士に相談してください。

近くに当事者の会があるかどうかは、どう調べればいいですか?

全国言友会連絡協議会が、ブロックごとに加盟団体を並べた一覧を公開しています。ただし、加盟団体のない都道府県として青森県・秋田県・福島県・鳥取県・長崎県・沖縄県が名指しで挙げられており、近くに無い場合もあります。全国組織は個別の相談には原則として応じられず、近くの加盟団体へ、と案内しているので、連絡先は各団体のサイトで確かめてください。

人前で話すのが不安でも、参加できますか?

団体によっては、そのための入口が用意されています。東京言友会は入会前の見学を歓迎していて、事前連絡は要らず、途中参加・途中退室も問題ないと案内しています。オンラインの交流会では、参加時にビデオオフ・音声オフでも問題ないとされています。研究の側も、話したくない人は発言しなくてよいと参加者に伝えるべきだと述べています。

まとめ

  • 「吃音」は「きつおん」。話し言葉が滑らかに出ない発話障害のひとつで、言葉が出ずに間があく「難発」や、音の繰り返し・引き伸ばしがある。
  • 「協会」「言友会」と名の付く吃音の団体の多くは当事者どうしの集まりで、学術団体である日本吃音・流暢性障害学会とは集まる人も目的も違う。地域の会は全国言友会連絡協議会の加盟団体一覧から探せるが、加盟団体のない県も6つある。
  • 日本吃音協会について手元で確かめられる一次の資料は、同協会の公式サイトに置かれた当事者本人の手記と、所属する当事者のインタビューだけ。この記事はそこに書かれている範囲だけを扱い、活動の実績や評判は判定しない。
  • 当事者の会に通う成人13人に理由を聞いた研究では、自分だけではないと気づいた人が7人、吃音を受け入れられるようになった人が8人いた一方、見方は変わらなかったと答えた人も1人いた。10代の大会参加では、前と直後で吃音の否定的な影響の得点が下がったが、原典は言語療法に「加える」選択肢という書き方にとどめている。
  • 自助グループでは専門的な指導・支援は受けられない。個別の困りごとの行き先は言語聴覚士で、ただし全員が吃音を扱えるわけではないので事前の問い合わせを。当事者のコミュニティに関わっている成人は英語圏の推定で1%前後にとどまる。

参考文献

  1. 注文に時間がかかるカフェ(吃音カフェ)公式ページ「吃音とは?」ほか
  2. 日本吃音・流暢性障害学会「日本吃音・流暢性障害学会とは(学会概要・目的)」(jssfd.org)
  3. 特定非営利活動法人 全国言友会連絡協議会「加盟団体」(zengenren.org)
  4. 東京言友会 公式サイト(例会案内・参加費改定のお知らせ・オンライン交流会の案内)
  5. 特定非営利活動法人 よこはま言友会 公式サイト(例会案内・こども若者例会・お知らせ)
  6. 吃音ポータルサイト「成人の方 — 相談や支援」(kitsuon-portal.jp)
  7. Bloye, Abdoola & Eslick (2023) Why do people who stutter attend stuttering support groups? S Afr J Commun Disord.(プレトリア大学ほか)
  8. Iimura, Takahashi, Aoki et al. (2026) Relationships between psychosocial aspects of stuttering and self-disclosure of stuttering in a Japanese sample. J Fluency Disord.(筑波大学ほか)
  9. Gerlach, Hollister, Caggiano et al. (2019) The utility of stuttering support organization conventions for young people who stutter. J Fluency Disord.(アイオワ大学ほか)
  10. Ma, An, Bin et al. (2025) Psychosocial Outcomes of Support Group Participation for Adults Who Stutter: Evidence from an Online Peer Community in China. Folia Phoniatr Logop.(パデュー大学フォートウェイン校ほか)
  11. Raj, Daniels & Thomson (2023) Facebook groups for people who stutter: An extension of and supplement to in-person support groups. J Commun Disord.(モンマス大学ほか)
  12. Gattie, Lieven & Kluk (2025) Adult stuttering prevalence II: Recalculation, subgrouping and estimate of stuttering community engagement. J Fluency Disord.

当事者の声の出典: V0367(NPO法人日本吃音協会の公式サイト「Fujimoto's Story 〜SCWにかける思い〜」・藤本浩士さんの手記)/ V0500(note「メディシェアJAPAN」・山崎拓也さんへのインタビュー)/ V0111(soar・宮脇愛実さんの記事)/ V0116(NPO法人日本吃音協会のサイト「学生時代の吃音の経験とNPOにかける思い」・やっちさんの手記)。いずれも公開記事。引用は原文どおり。

更新履歴: 2026-09-12 公開