まず結論から
- 吃音に特徴的な話し方は3つあります。音を繰り返す(連発)、音を引き伸ばす(伸発)、ことばが出せずに間があいてしまう(難発、ブロック)です。そして思春期以降は、このうち難発が中心になるとされています。
- 大人の場合、チェックの本番はむしろ話し方の外側にあります。言いにくい語を言い換えるなどの工夫をすると吃音は目立たなくなりますが、実際には吃音が出ないかを日々警戒しながら生活することになる、と学会の解説は書いています。
- だからこの記事のチェックは、話し方の3項目に加えて、言い換え・場面の回避・困りの度合いまでを数えます。吃音の問題は「ことばがどもって」「困ること」の2つからなり、問題の大きさは主に後者で決まる、という考え方があるためです。
- ただし、自分でつけた重さと、生活が実際にどれだけ妨げられているかは、関連していても同じものではありません。吃音のある成人346人に尋ねた調査は、この2つを入れ替えて使えるものとして扱うべきではないと結論づけています。
- 相談に進むときは、いつから・どんな場面で・何に困っているかを書き出して持っていくと話が早くなります。専門家による評価は、話し方だけでなく生活への支障までを含む6つの領域を見るからです。
ただし、ここに挙げたのは集団を対象にした研究や公的な解説の話であって、このチェックであなたの診断が決まるわけではありません。当てはまった数が少なくても、困っているのなら相談してかまいません。
チェックの前に — 何を「吃音らしいつまり」と数えるのか
セルフチェックがあてにならなくなるいちばんの原因は、数えるものがずれていることです。まず、何を数え、何は数えないのかをそろえておきます。
吃音ポータルサイトは、吃音の現れ方を、音を繰り返す・音を引き伸ばす・つまって出てこないの3つに整理しています。日本吃音・流暢性障害学会の解説も、この3つを吃音に特徴的な中核症状として挙げ、順に連発・伸発・難発(ブロック)と呼んだうえで、思春期以降は連発や伸発よりも、最初の音が出しにくくなる難発が中心になるとしています。大人が自分の話し方を思い返すと「繰り返してはいない」と感じやすいのは、このためです。
いっぽうで、数えなくてよいものもあります。米国の専門職団体の知見にもとづく解説は、「えー」のような音やことばを差しはさむ、単語をまるごと繰り返す(「クッキー、クッキーとミルク」)、言いかけて言い直す、考えがまとまらず途中で止まる——こうした言いよどみは多くの人に起こるもので、それ自体は吃音とはみなされないと書いています。吃音のほうで多く、また種類も違う形であらわれるのは、音や音節そのものの繰り返し・引き伸ばし・つまり(ブロック)のほうです。
もうひとつ、チェックの手がかりになるのが「出方のむら」です。学会の解説は、歌を歌うとき、2人で声を合わせるとき、独り言を言うときなどには一時的に流暢になる人が多いと述べています。同じ解説は、調子の良い状態や悪い状態が数週間から数か月にわたって続く人も多く、この変動を「波」と呼ぶとしています。歌えるのに話せない、先月は平気だったのに今月はつらい——それは矛盾ではなく、むしろ吃音でよくみられる形だということです。
大人の吃音症セルフチェックリスト(10問)
次の10問のうち、思い当たるものがいくつあるかを数えてみてください。1〜3が話し方そのもの、4〜9が話し方の外側にあらわれるもの、10が困りの度合いです。これは診断ではなく、専門家に相談するかどうかを考えるための目安です。各項目は、上で引いた公的な解説の記述に1つずつ対応させています。
- 語の出だしで、同じ音を何度も繰り返してしまうことがある(連発。例「ぼ、ぼ、ぼく」)
- 音を長く引き伸ばしてしまうことがある(伸発。例「ぼーーーく」)
- 言おうとしてもことばが出せず、間があいてしまうことがある(難発、ブロック。例「・・・ぼく」)
- なんとか声を出そうとして、顔や体に力が入ったり、余計な動きが出たりすることがある
- 言いにくいことばを、別の言い方に置き換えることがある
- 言いやすいことばを先に言う、話すこと自体を避けるなど、どもらずに済ませるための工夫をしている
- 職場の電話応対・発表・面接など特定の場面を避ける、あるいは話し始める前から不安を感じる
- 歌うとき、声をそろえて言うとき、独り言のときには、比較的なめらかに話せる
- 日や時期によって調子に波があり、良い状態・悪い状態が数週間から数か月続くことがある
- 話すことについて、恥ずかしさ・いらだち・不安・自信のなさなど、困っている実感がある
読み方は2つあります。ひとつは、1〜3だけでなく4〜9にも当てはまるかどうか。もうひとつは、10に当てはまるかどうかです。当てはまった数が多いほど相談を考える目安にはなりますが、数だけで決まるわけではありません。その理由を、このあとの「見えにくい側」「言い換えと回避」「点数より、どれだけ困っているか」の3つの節で、当事者の言葉と研究の両方から見ていきます。そして最後の「チェックのあと」で、結果を持ってどこへ行くかを整理します。
チェックしようと思った時点で、あなたはたぶん「見えにくい側」にいる
大人になってから自分の話し方を調べる人の多くは、周囲から「そんなに気にならないよ」と言われた経験を持っています。まわりに見えているものと、本人が抱えているものが、そもそもずれている——そこから始まります。
22歳・働き始めたばかりの当事者(自助団体のメディアに寄せた一人称のエッセイ)
私は、吃音を持っていることを誰にも言ったことがありません。
なぜかと言うと、正直なところ吃音と診断されたことが無いからです。
病院に行く勇気がないのです。
自己診断で吃音じゃないかしらと思っています。
それに、私の症状はそこまで客観的に認識できるほど表に出ないのです。
癖なのか、吃音だとバレない振る舞いをしています。積極的に喋らず、喋っても言いやすい言葉を並べ、そして相手に話させます。
難発による変な間は、身ぶりをしたり忘れたフリをしたりして誤魔化しているのです。
同じ文章で、この書き手は職場での日々も記しています。報告・連絡・相談を早く済ませればいいと分かっているのに、「うまく喋れるかな」「話しかけるのが怖いな」という懸念が先に立ち、相手から声をかけてくれるのを待ってしまう。電話は呼び出し音が鳴るだけで身構え、鳴っていないときでさえ、今鳴るのではないかと怯えて業務に集中できない。周囲からは「電話が苦手なんだね、すぐ慣れるよ。」と言われている——そう書いています。つまりこの人にとって、吃音がいちばん強く出ているのは、話し方そのものではなく行動のほうです。そして、こうした話し方の外側は、機械による自動判定でも十分には捉えられていないと報告されています。
出典: 吃音者が感じる仕事のハードル。不安が募り業務に集中できないことも。(HAPPY FOX・NPO法人日本吃音協会)(台帳: V0024)
この「見えにくさ」は、学会の解説にもはっきり書かれています。吃音を巧みに隠そうとして言いにくい単語を言い換えるなどの工夫をすると、吃音は目立たなくなる。しかし実際には、吃音が出ないかを日々警戒しながら生活しているため、ストレスや悩みを抱え込みやすくなる、というものです。目立たないことは、軽いことではないわけです。
それでは、機械に判定してもらえば客観的になるのでしょうか。人工知能を使った吃音の自動検出について44件の研究を集めてまとめた報告は、多くのシステムが吃音を「聞き手が気づける、表に出た話し方のふるまい」として定義していて、話し手が経験している広い側面——話す前の身構え、絞り出そうとする努力、コントロールを失う感覚——までは捉えきれていないと述べています。同じ報告は、現在のシステムが主に測っているのは表に出た発話行動であり、話し手が生きて経験している吃音を十分には捉えていないと結論づけています。機械でさえ表に出た部分しか見ていないのなら、自分で自分を採点するチェックが、表に出ていない部分を数え落とすのは当然です。だからこの記事のチェックは、4問目から先を長く取りました。
言い換えと回避は、症状の「外」ではなく「内」にある
チェック項目の5番と6番——言い換えと、言いやすいことばを先に言う工夫。これを「症状」だと思っている人は多くありません。多くの人にとっては、単なる自分の癖か、要領のよさに見えています。次の一節は、その工夫がどこまで生活に染み込むのかを教えてくれます。
吃音歴25年・主に難発の当事者(note。五十音の行ごとに言いにくさを段階分けした記事の、比較的言いやすい行についてのくだり)
これらの行ならメニューを指差さなくても言えたり言えなかったりします。それ以外にも部活や進学先、就職先や好きなキャラに至るまで、これらの行で選んできたことが多いです。言いやすいかどうかを基準に物事を決めるのは吃音者あるあるだと思います。
この記事の書き手は、あ行・か行・た行を「無理」、が行・だ行・は行・ぱ行を「やばい」というように、五十音の行を言いにくさで段階分けしています。「ありがとう」「お会計」「タクシー」「トイレ」のように日常でよく使う語がその行に集中していること、飲食店では言えない品名を避けて別の呼び方で注文していること、電話の「もしもし」を「はい、〇〇です」に置き換えると楽になること——具体例はすべて日々の場面から出てきます。引用した箇所はその末尾で、避けているのはことばだけではなく、部活や進学先や就職先も同じ基準で選んできた、と書いています。こうした「どもらないための工夫」は、学会の解説でも吃音にともなうものとして具体的に挙げられています。
出典: 【吃音】言いにくい行Tier表(note・わをん)(台帳: V0031)
公的な解説も、この層を吃音の一部として書いています。学会の解説は、どもらないための工夫として「ことばを言い換える」「言いやすい言葉を最初に言う」を挙げ、さらに吃音があることを恥ずかしいと思うようになると、それを隠そうとして発話を避けるためのさまざまな工夫をするようになる、としています。米国の専門職団体の知見にもとづく解説も、吃音には話すことへの緊張や否定的な感情がともなうことがあり、人にどう思われるかが気になって吃音を隠そうとしたり、電話のように詰まりやすい場面や特定のことばを避けたりすることがあると書いています。
また、声を出そうとして顔や体に力が入り、必要のない体の動きが出ることがあります。学会の解説は、こうした動きを、話し方そのものの中核症状に対する二次的な症状(二次症状)と位置づけ、「随伴症状(随伴運動)」と呼んでいます。手足を振り下ろす、飛び跳ねる、体を前や後ろに曲げる、息を荒げる、顔をしかめる、目を固くつぶるといった形であらわれます。チェックの4番はここを見ています。自分では気づきにくいので、家族や親しい人に「話しているとき、体に力が入って見えることはある?」と聞いてみるのが早道です。
点数より、「どれだけ困っているか」
ここからが、チェックの結果の読み方です。当てはまった数を並べても、実は次の一歩は決まりません。決めるのは、困りの中身のほうです。
50歳・能登在住の当事者(note。本を読んで自分の吃音を振り返った記事の、困りごとを数え上げたくだり)
言い換えで周りくどい思いをする。正確に伝わっていないのではないか。
内向的な性格を生み出した。
聞き上手になろうと決めた。それが特技だと思っていた。
自分のことを話さない。
小さい頃から吃音に悩まされ、周りからの防衛と劣等感が当たり前だった、と同じ記事の書き手は振り返ります。一生逃れられないもの、嫌でも付き合っていかなければならないものと思っていたが、いまは違和感がないほど共存している——50歳になったこの年齢だからこそ、その本を冷静に読めたのかもしれない、とも書いています。引用した箇所に並んでいるのは、話し方の記録には一つも残らないものばかりです。聞き役に回ることを自分の特技だと思ってきた、というのがその典型でしょう。吃音の問題の大きさは、どもること自体よりも「そのことで困ること」のほうで決まる、という考え方があります。
出典: どもる体を読んで自分と向き合う(note・ちび)(台帳: V0025)
吃音ポータルサイトは、吃音の問題を「(1) ことばがどもって (2) 困ること」の2つで整理し、問題の大きさは主に(2)によって決まるとしています。同サイトが挙げる「困ること」の中身は、恥ずかしい思いをする、言いたいことが言えずにいらいらする、周囲からのからかいや特別視——といった、話し方そのものではなく生活の側で起きることです。仮に(1)がとても多く見られても(2)がなければ問題は大きくならず、逆に(1)があまり見られなくても(2)が大きければ問題は大きい、という考え方です。
では、自分でつけた「重さ」は、困りの実態をどこまで言い当てるのでしょうか。この点を正面から調べた調査があります。中国の吃音のある成人346人に、7段階で自分の重症度を1問で答えてもらい、あわせて生活への影響を4つの領域で測る質問紙に回答してもらったものです。自己評価の重さは、影響の全体得点と4領域すべてに正の関係がありました。とくに関係が強かったのは、全体得点と「日常場面でのコミュニケーション」の領域でした。年齢・性別・言語療法を受けた経験・自助グループへの参加を統計的に調整しても、この関係は残りました。
ただし、この調査の結論は「自己評価で十分」ではありません。著者らは、自己評価の重さと多面的な影響は中程度から強く関連するものの、この2つを入れ替えて使えるものとして扱うべきではない、と述べています。そのうえで、短い自己評価でも、生きられた経験の臨床的に意味のある部分をとらえられる可能性があり、話し手を中心に置いた補助的な指標として実用的だとしています。セルフチェックの立ち位置も同じです。役に立つが、代わりにはならない。
困りが心の面に及ぶこともあります。人と関わる場面や人前で話す場面に強い不安を感じ、生活に支障が出る状態は「社交不安症」と呼ばれます。吃音のある成人200人と、年齢や男女比をそろえた吃音のない成人200人を比べた研究では、吃音のある人のほうが不安の得点が高いという結果でした。さらに、両群から無作為に選ばれた50人ずつに診断のための面接を行ったところ、吃音のある人で社交不安症のある割合は、ある時点で少なくとも40%と推定されました。集団を対象にした推定なので、あなたがそうだという意味ではありません。ただ、話すことへの不安や落ち込みが強いときには、話し方の訓練だけでなく、その心の面も相談の対象になる、ということです。
チェックのあと — 何を持って、どこへ
セルフチェックの最大の落とし穴は、当てはまった数を眺めて終わってしまうことです。その先で多くの人がつまずくのは、「自分の状態を、専門家でない相手にどう説明するか」でした。
吃音と付き合って30年の当事者(note。学生時代、焼き肉屋のアルバイト初日にホールへ回され、接客が言えずに上司へ打ち明けた場面のあとのくだり)
そして、「脳に障害がある」という嘘もついてしまった。吃音はまだ完全には解明されていないものであることは事実ですが、
脳に障害がある、というのは嘘です。「きつおん」「どもり」といっても多分伝わらないだろうと思って、遠回しに言い過ぎた結果、嘘をついてしまうという最悪の展開。
キッチン希望で応募したのに、初日にホールへ回された日のことです。「失礼します」も「本日はご来店ありがとうございます」も出てこず、開店初日の最初の接客でつまずいた書き手は、いてもたってもいられず上司に打ち明けます。「言葉が上手く言えない病気なんです」と切り出すと、返ってきたのは「え?どういうこと?全然普通にみえるよ?」でした。伝わらないと思って言い足したひと言が、引用したとおりの結果になります。その日を境にホールには出なくなり、代わりにキッチンの仕事にのめり込んでいった、とも書いています。説明の言葉を手元に持たないまま切り出すと、こういうことが起こる。いっぽう専門家による評価は、話し方だけでなく、背景の情報や生活への支障までを含む6つの領域を見ることが、合意としてまとめられています。
出典: 吃音のせいで失敗したこと アルバイト編(note・【吃音×サラリーマン】オールナイト)(台帳: V0036)
吃音の評価に何を含めるべきかを、12人の専門の臨床家・研究者の合意としてまとめた指針があります。そこでは、包括的な評価に共通して含まれる中核として6つの領域が示されました。(1) 吃音に関する背景の情報、(2) ことば・言語・気質の発達(とくに年少の相談者について)、(3) 話しことばの流暢さと吃音のふるまい、(4) 本人の吃音への反応、(5) 周囲の人の吃音への反応、(6) 吃音によって受けている生活上の支障、の6つです。これらは、相談者の年齢と必要に応じて程度を変えながら含めるべきものだとされています。10問のチェックが触れられるのは、このうち(3)と(4)と(6)の一部にすぎません。逆に言えば、残りは相談の場であなたが話すことになります。
相談先の中心になるのは言語聴覚士です。日本言語聴覚士協会は、聞こえやことばの障害、飲み込みの障害のある人を支援する専門職が言語聴覚士であり、検査・訓練・指導や援助を行うと説明しています。同協会は「ことばの障害」の説明のなかで、スムースに話をすることが難しい吃音と呼ばれる問題も、ことばの障害に含まれると明記しています。大人が相談してよいのか迷う必要はありません。
ただし、実務上の注意が1つあります。吃音ポータルサイトは、言語聴覚士を育てる課程に吃音は入っているものの、この資格が受け持つ仕事の幅は広いため、どの言語聴覚士でも吃音の指導や支援を担えるとは限らない、としています。そのうえで、働く場は病院の耳鼻咽喉科やリハビリテーション科が多いとされ、支援を希望するなら、日本言語聴覚士協会や都道府県ごとの言語聴覚士会に尋ねるか、病院などへあらかじめ直接問い合わせるよう案内しています。「近くの病院に言語聴覚士がいる」だけでは足りず、吃音を担当しているかを先に確かめる、ということです。
もうひとつの行き先が、当事者どうしの集まりです。同サイトは、こうした集まりでは言語聴覚士のような学術的な知識や専門的な指導が受けられるわけではないと断ったうえで、自分と同じ悩みを抱えた人と知り合えること、当事者でなければ味わえない一体感のなかで話を聞いてもらえること、近い立場からの具体的な助言をもらえることは、この集まりでなければ得られないものだ、と書いています。学会の解説も、自助団体に参加してほかの吃音のある人と出会うことが、吃音を否定的に捉えることが減るといった心理的な変化のきっかけになることもある、としています。先ほどの346人の調査でも、自助グループに参加している人は、多くの指標で生活への影響の得点が低いという関連がみられました。ただしこの調査は、同じ時点で一度に測った匿名のオンライン調査なので、参加したから下がったとまでは言えません。
職場についても、道はあります。学会の解説は、社会人の場合、吃音について上司や同僚に相談することによって、職場の配置や電話業務などで配慮を得られることがある、としています。持っていくものは、チェックの結果と、いつから・どんな場面で困っているか・話し方以外に何が起きているかのメモです。専門家は背景の情報から生活への支障までを含めて総合的に見るため、この2つがあるだけで相談は具体的になります。
セルフチェックで陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − ネットのチェックだけで白黒つけてしまう
「当てはまったから吃音だ」「当てはまらないから違う」と決めるのは早すぎます。専門家による評価でさえ、話し方だけでなく背景の情報・本人の反応・周囲の反応・生活への支障までを含む6つの領域を見ることが、合意としてまとめられています。10問で触れられるのはその一部です。セルフチェックは相談のきっかけであって、診断ではありません。
落とし穴2 − 「目立たないから大丈夫」と切り捨てる
言い換えや場面の回避で吃音が目立たなくなっても、実際には吃音が出ないかを日々警戒しながら生活しているため、ストレスや悩みを抱え込みやすくなるとされています。問題の大きさは、どもりの多さより「そのことで困っているかどうか」で決まる、という見方もあります。困りがあるなら、軽く見えても相談してかまいません。
落とし穴3 − 一度きりの印象だけで判断する
吃音には、良い状態や悪い状態が数週間から数か月続く「波」があり、歌うときや独り言のときには一時的に流暢になる人も多いとされています。調子の良い日にチェックすれば軽く、悪い日なら重く感じられます。一度の印象より、話しにくかった場面と日付を少しずつ書き留めておくほうが、実態に近づきます。
専門家の評価がそこまで広い範囲を見るのなら、いつから・どんな場面で・何に困っているかを、思い出せる範囲で書き出しておくところから始めるのが現実的でしょう。毎日の発話や、詰まった場面・調子の波を記録して「見える化」しておくのも一つの方法です。記録はあくまで経過を把握し、相談のときに共有するための支援であって、診断や治療に代わるものではありません。成人の相談先としては、言語聴覚士・セルフヘルプグループ・心理カウンセラーが挙げられています。相談できる状況なら、記録を持ってそちらへ進むのが先です。
よくある質問
大人の吃音症は自分でチェックできますか?
相談すべきかどうかを考える目安にはなりますが、診断ではありません。専門家による評価は、話し方に加えて背景の情報・本人や周囲の反応・生活への支障まで、6つの領域を総合して見ることが合意としてまとめられています。自分でつけた重さと生活への影響は関連していますが、入れ替えて使えるものではないとされています。
「えー」「あの」が多いのも吃音ですか?
「えー」のような音やことばを差しはさむ、単語をまるごと繰り返す、言いかけて言い直す——こうした言いよどみは多くの人に起こるもので、それ自体は吃音とはみなされないとされています。吃音のほうで多くみられるのは、音や音節そのものの繰り返し・引き伸ばし・つまり(ブロック)です。
チェックで当てはまる項目が多いと、吃音症ということですか?
いいえ、数だけで決まるわけではありません。吃音の問題の大きさは、どもりの多さよりも「そのことでどれだけ困っているか」で考えるとよいとされています。当てはまった数に一喜一憂せず、生活のどこでどのくらい困っているかを言葉にしてみてください。
何科・どこに相談すればいいですか? チェックの結果は持って行けますか?
相談先の中心は言語聴覚士で、吃音もことばの障害に含まれると職能団体が明記しています。働く場は病院の耳鼻咽喉科やリハビリテーション科が多いとされますが、吃音を受け持っている言語聴覚士ばかりではないため、病院などへ直接問い合わせるか、協会や都道府県ごとの言語聴覚士会に尋ねることがすすめられています。評価は背景の情報から生活への支障までの6領域を総合して見るとされているので、チェックの結果と、いつから・どんな場面で困るかのメモがあると、相談は具体的になります。
アプリやAIで吃音かどうかを判定できますか?
研究は進んでいますが、いまのところ診断の代わりにはなりません。人工知能による吃音の自動検出をまとめた報告は、多くのシステムが吃音を「聞き手が気づける、表に出た話し方のふるまい」として定義しており、話す前の身構えや、コントロールを失う感覚といった本人が経験している側面までは捉えきれていないと述べています。
まとめ
- 吃音に特徴的な話し方は、繰り返し(連発)・引き伸ばし(伸発)・つまり(難発)の3つで、思春期以降は難発が中心になるとされる。
- 大人では、言い換え・言いやすいことばを先に言う工夫・場面の回避によって吃音は目立たなくなるが、日々警戒しながら生活することになる。だからチェックは話し方の外側まで数える。
- 当てはまった数より「どれだけ困っているか」。自分でつけた重さと生活への影響は関連するが、入れ替えて使えるものではないとされる。
- 相談の中心は言語聴覚士。ただし吃音を受け持つ人ばかりではないため、事前の問い合わせがすすめられている。
- 持って行くのは、チェックの結果と、いつから・どんな場面で・何に困っているかのメモ。評価は6つの領域を総合して見るため、この2つで相談が具体的になる。
