まず結論から
- 模擬面接の動画を使った実験では、吃音のある応募者は全体として低く評価されました。ところが面接の冒頭でひと言、吃音があると伝えた条件では、吃音のない応募者との評価の差が消えました。
- これまでの研究18本を集めてまとめた報告では、15本で伝えることに良い方向の影響があり、言い方を比べた研究では謝らない言い方のほうが、謝る言い方や伝えない場合より好意的に受け止められていました。
- ただしこの実験が測ったのは、聞き手が応募者をどう見たかであって、面接の合否そのものではありません。
- 日本の吃音のある成人180人への調査では、自分から吃音を伝える度合いは、同じものさしで測った米国の調査に答えた人たちより低く、自助グループに参加した経験がある人ほど高い、という関係が報告されています。
ただし、伝えたことで採用の場が冷えた、と語る当事者も実在します。研究が示すのは大勢を平均したときの傾向であって、あなたの面接で何が起きるかを保証するものではありません。
面接で伝えると、面接官の見る目はどう動くのか
いちばん知りたいのはここでしょう。「伝えたら不利になるのか、それとも楽になるのか」。まず、一次面接で落ち続けたあとに伝える側へ回った人の記録から見ていきます。
当事者の声(福井春香さん・大学4年生/NHK障害福祉賞 受賞作の全文)
「私は吃音を持っているため、言葉に詰まってしまうことがありますが、ご了承いただけると幸いです」
すると、面接官はこのように言ってくださいました。「全然大丈夫ですよ。吃音を気にして話すことをためらうのではなく、時間がかかっても構わないので、思っていることをしっかりと話してくれると嬉しいです」。私はこの言葉に救われ、その面接では詰まりながらも、焦らず自分の想いを全て伝えることができました。それ以降の面接でも、冒頭で吃音を伝えるようにしてみると、想像していた以上に、多くの企業が吃音を前向きに受け止め、耳を傾けてくださいました。
三歳のころから吃音があり、約二十年吃音とともに生きてきた、と書く福井さん。言葉が喉で詰まって声にならず、母音が出にくい。電話や人前での発表で強く出る。自分から吃音を打ち明けたことは、それまでほとんどなかったといいます。建設業界の事務職を中心にエントリーし、書類は通っても一次面接で落ち続け、初めての面接から七社連続で不合格でした。志望動機も自己PRも頭の中にはあるのに、面接官を前にすると声にならず、伝えたかった内容の半分も出せずに終わる。そんな面接が続いたあとに読んだネットニュースをきっかけに「一度正直に伝えてみよう」と決めた、その一回目がこの場面です。伝えることで聞き手の見え方がどう動くかは、面接に近い場面で実際に測られています。
出典: 伝えられなかった言葉と、伝わった想い(第60回NHK障害福祉賞 ハートネット賞受賞作品・NHK厚生文化事業団)(台帳: V0155)
米国の大学で行われた実験では、参加した学生58人が模擬面接の動画を2本ずつ見て、応募者を7段階(1=とても悪い〜7=とても良い)で評価しました。自分にも吃音があると答えた5人を除いた53人分が分析されています。吃音のある応募者が何も言わなかった条件では評価の平均は4.38で、吃音のない応募者の5.71を下回りました。ところが応募者が面接の冒頭でひと言(英語で「念のためお伝えしますが、私には吃音があります」にあたる一文)を添えた条件では、吃音のある応募者が5.08、吃音のない応募者が5.02となり、両者の差は消えました。
ただし、この4つの数字の読み方には注意が要ります。吃音のある応募者どうし(伝えた条件の5.08と、伝えなかった条件の4.38)をこの総合評価で直接くらべたときには、差がはっきりしたとは言い切れませんでした。印象をたずねた項目だけを取り出したときには差があった、という書き分けです。研究チームは、冒頭で伝えることが聞き手の受け取りを良い方向へ動かしたと結論づけていますが、この実験がはっきり示したのは「伝えた条件では、吃音の有無による差が出なかった」という形の結果です。
研究チームは、伝える位置がやりとりのはじまりだったことを重要な条件として挙げ、あくまで推測としながら、先に断りがあると聞き手は相手の言動を受け取り直す余地を持てる、という以前からの説明につないでいます。ただし、この実験の参加者は大学生だけで、面接を演じたのは実際には吃音のない俳優でした。研究チーム自身が、この2点を結果を読むときの限界として書いています。
伝えるなら、謝るのではなく事実として
伝えると決めたとして、次に効いてくるのは言い方です。同じ「伝える」でも、謝る形で言うのか、事実として置くのかで、聞き手の受け取りが変わることが分かっています。ここでは、面接では必ずいちばん最初に伝えると決めていた人の書いたものを見ます。
当事者の声(さっくんさん・21卒の大学生/個人ブログ note)
吃音が理由で業務上の配慮が欲しいと思っているときは、選考中に吃音を伝えることが望ましいのかなと思います。吃音を隠したまま内定をもらって、入社後に配慮を求めるとなると、針の筵に座る思いになりますからね。
あと声を大にして就活生に伝えたいのは、多くの面接官(人事の方)は吃音症を知っているということです。最近は障がい者雇用も進んでいるということもあって(?)、僕がこれまで出会った面接官で吃音を知らないという人はいませんでした。「あ~、そうなんだね。わかったよ~」という感じで、拍子抜けした記憶があります。
障害者手帳を取らず、一般の選考枠で就職活動をした21卒の学生です。小学1年生から吃音があり、ふだんは言い換えでしのいでいるので周りには気づかれないが、発表やプレゼンでは詰まることが多い、と自分で書いています。面接では必ず最初に伝えると決めていて、理由を三つ挙げます。畏まった場では吃音が出ると分かっていたこと。伝えないまま内定をもらっても心から喜べないと思ったこと。すぐ答えられないことを「考えずに行動している人」と誤解されたくなかったこと。ただし本人は、この判断は悩みに悩んで導いたもので、伝えるか否かに正解はないとも書き添えています。この「必ず最初に、事実として伝える」という形は、研究が比べた三つの言い方のうち、謝らずに事実と見通しを置いた型——聞き手の評価がいちばん高かった型——と重なります。
出典: 吃音症の大学生の就活体験記(note)(台帳: V0105)
その研究では、模擬面接の冒頭で話し手が言うせりふを3通り用意し、338人の観察者(18〜90歳・平均29.4歳)に動画を見て印象を答えてもらいました。事実として伝える言い方は「始める前にお伝えしておきます。私には吃音があります。音や語句を繰り返すことがありますが、分かりにくいところがあれば遠慮なく聞き返してください」にあたる一文。謝る言い方は「始める前にお伝えしておくべきですね、私は吃音があるので、ところどころ話しづらいかもしれません。お付き合いください」にあたる一文でした。
事実として伝えた話し手は、何も言わなかった話し手より「友好的」「外向的」「知的」「自信がある」の評定が高く、「不安げ」の評定は低くなりました。いっぽう謝る言い方は、「自信がある」の評定だけは何も言わない場合より高かったものの、ほかの項目では差が出ませんでした。
伝える場所は、大きく3つに分かれます。
- エントリーシート・履歴書に書く:面接の前に伝わっているので、当日に切り出す負担がない。
- 面接の冒頭で伝える:自己紹介に織り込む。実験で差が消えたのはこの位置で、早いほうが効きやすいことは以前の研究でも報告されている、と研究チームは書いています。
- 詰まった場面で短く伝える:「吃音があるので、少し待ってください」と、起きたその場で説明する。
伝えても報われないことがある
ここまでは「伝えることが効いた」側の話です。けれど、伝えたことでその場が冷えた、という記録も同じだけ存在します。研究が示すのは大勢を平均したときの傾向であって、一人ひとりの面接がそのとおりに動く保証はありません。
当事者の声(インタビュー番号35・21歳の大学看護学部生/障害学生の語りデータベースの逐語録)
バイトで、接客業とかだと、やっぱりなんか吃音の話すると結構、険しい顔されて、それで駄目だったところが結構、何個かあったりとかしたりとか
小学校低学年で「きこえとことばの教室」に通い、そこで自分に吃音があることを知っていった、関東地方の男性です。高齢者施設でのボランティアをきっかけに医療や福祉に関心を持ち、看護学部で学んでいます。接客業のアルバイトに応募しては断られることが続き、吃音のある友人もコールセンターやカフェではなかなか採用されないと聞いてきました。いまは高齢者住宅で配膳の仕事に就いていますが、そこにたどり着くまでに何軒も落ちています。それでも本人は、悔しさと少しの悲しさを口にしたうえで「それが現実かな」と受け止め、アルバイトは探せば山ほど出てくるのだから、相性のいいところを頑張って探すようにしている、と語ります。実験でも、吃音があること自体は、全体として低い評価のほうへ働いていました。
出典: 接客業のバイトの面接で吃音のことを伝えると険しい顔をされて不採用のことが何度かあった(障害学生の語り・ディペックス・ジャパン)(台帳: V0100)
模擬面接の実験では、伝えた・伝えないをまたいで見たとき、吃音のある応募者は全体として低く評価されていました。冒頭で伝えることは、その低い側からの引き上げとして働きうるという結果であって、はじめから不利がないという話ではありません。
研究をまとめた報告のほうも、全部が同じ方向を向いていたわけではありません。集められた18本のうち、伝えることに良い方向の影響が確かめられたのは15本。言い方を条件として比べた13本のうち、謝らない言い方のほうが好意的に受け止められたのは12本でした。裏を返せば、そうならなかった研究もあるということです。この報告は、伝える場面の違い・年齢・吃音の頻度や重さ・聞き手が吃音のある人と知り合いかどうかについては、そもそも調べた研究が少ないとも書いています。
「言わない」を選んだ人がどう過ごしているか
ここまで読んで「伝えたほうがよさそうだ」と思った方もいるかもしれません。けれど、伝えないことを選んだ人がその後どう過ごしているかを見ないと、判断の材料は片側だけになります。
当事者の声(やっちさん・29歳の製薬会社研究員/自助団体メディア「HAPPY FOX」への寄稿)
就活に大きな不安があった私は、このチャンスを逃さないために吃音があることを隠すという選択をします。結果として、入社はできましたが罪悪感のようなものを抱えることになりました。また、今でも吃音を隠しながら毎日を過ごしています。
これまでにカミングアウトを何回も考えましたが、吃音があることを上司や幹部がどう思うのかを想像すると怖くなり、実行できていません。
両親によると3歳のころから吃音があった、という製薬会社の研究員です。中学1年生までは話すことが好きな子どもでしたが、中学2、3年から吃音を強く意識するようになり、仲の良い友達以外との会話を避けるようになります。高校では友達が一人もできないまま3年間を過ごしました。大学院時代も孤独ではあったものの、一人の時間が多かったぶん研究に打ち込むことができ、その縁で恩師から現在の会社の研究職を紹介されます。就職活動そのものに大きな不安を抱えていた人にとって、その紹介は逃せない機会でした。隠すという選択は、そこで生まれています。伝える度合いがその人の置かれてきた状況と結びついて動くことは、日本の当事者を対象にした調査でも示されています。
出典: 学生時代の吃音の経験とNPOにかける思い(HAPPY FOX・NPO法人日本吃音協会)(台帳: V0116)
筑波大学などのグループは、日本の吃音のある成人にオンラインで調査を行い、自分から吃音を伝える度合いを尺度で測りました。自助グループなどを通じて集めた180人分を分析した結果、その水準は、同じ尺度を使った米国の調査に答えた人たちより低いというものでした。伝える度合いが高いことと結びついていたのは、男性であること、自助グループに参加した経験があること、自分を受け入れられている度合いが高いこと、そして「吃音のある自分はだめだ」という自分に向けた思い込みが弱いことでした。伝えるかどうかは性格や勇気だけの話ではなく、その人が何を経験してきたかとつながって動いている、と読める結果です。
そして「言わない」は、何もしていないことではありません。吃音のある人の経験を整理した総説は、聞き手からは見えにくい反応——どもりそうだと思ったときに別の語に言い換える、特定の音や場面そのものを避ける——が、吃音のある人にはよく見られると述べています。面接の場で滑らかに話しているように見える人が、その裏で言葉を選び直し続けていることは、珍しくありません。
伝えたあと — 面接より、入ってからのほうが長い
面接は数十分ですが、入った先で働く時間はその何万倍もあります。伝えるかどうかを面接の勝ち負けだけで決めると、そこから先が見えなくなります。
当事者の声(Oさん・20代男性/愛媛言友会「吃音当事者からのメッセージ」)
現在はその派遣先ではありませんが、派遣から正社員雇用され『包装機械メーカー』で働いております。現在6年目になります。吃音のことは会社にカミングアウトしております。業務は社外からの電話対応、ユーザーさんとの直接のやり取りは免除してもらっている反面、自分でもやれることは無いか?部所内の業務負担を減らせられることはないか?と常に考え周囲と相談をおこないながら助け合い仕事をおこなっております。吃音で業務上困ったことがあった場合については社内でおこなわれる年2回の個人面接時に、社長、取締役、上司2名と相談を行い、まわりに周知が必要な場合、社員全員へアナウンスして頂いております。
高校で資格の取得に力を入れ、電気工事の会社に就職して8年在籍したのち、ほかの会社を知りたいと派遣社員になった人です。最初の派遣先では、派遣会社の担当者のすすめで吃音を伝えずに働き始めました。就業初日の自己紹介で吃音が出て笑われ、挨拶で声が出なければ嫌味を言われ、陰口も言われて、1週間で辞めています。そのとき本人が感じたのは、伝えずに働くと周りの理解や周知が得られないこと、業務の上での配慮も受けられないことでした。次の派遣先では事前に吃音を連絡して理解を得たといい、いまの会社では伝えたうえで、年2回の面談を相談の場として使っています。伝えることと配慮を受けることは、制度の上でもつながっています。
出典: 吃音当事者からのメッセージ(愛媛言友会)(台帳: V0223)
働くうえで必要な手助けを本人が申し出て、職場に対応してもらう仕組みを合理的配慮と呼びます。障害者雇用促進法は事業主に対し、募集・採用にあたって障害のある人から申し出があった場合に、障害の特性に配慮した必要な措置を講じることを義務づけています(事業主にとって過重な負担となる場合を除く)。あわせて、募集・採用では障害のない人と均等な機会を与えなければならず、賃金・教育訓練・福利厚生その他の待遇について、障害があることを理由に不当に差別的な取扱いをしてはならない、とされています。
ただし、申し出れば自動的に配慮が受けられる、という単純な話ではありません。吃音の研究プロジェクトによる解説は、「合理的」の客観的な基準が無いために実際には会社や上司の裁量の幅が大きいこと、そして配慮を受けるには吃音を開示したうえで、どういう配慮を希望するのかを具体的に示して相談・交渉する必要があることを指摘しています。同じ解説は、吃音のある成人の多くは障害者手帳を持たないまま一般の就労をしており、吃音があるからといって一律に手帳を申請する必要はない、とも書いています。
面接の外側で起きていること — 就労のデータ
面接そのものではなく、その先の働き方についても数字があります。米国で青年期から成人期まで14年・4回にわたって追跡した全国調査を分析した研究では、4回すべてに回答し吃音についての質問にも答えた13,564人のうち、261人が「自分は吃音がある」と答えました。年齢や学歴、いっしょに抱えている状態などの違いを差し引いたうえでも、吃音のある人の年収は、男性で約7,600ドル、女性で約7,200ドル低いという推定になりました。
ただし、この数字を「吃音のせいで収入が下がる」と読むことはできません。研究チーム自身が、この結果をもとに吃音と労働市場の結果のあいだに因果関係を読み取る前には慎重であるべきだ、と明記しています。米国のデータであること、年収の分析に入った吃音のある人が男性71人・女性30人と少ないことも、あわせて押さえておく必要があります。数字が言えるのは「差が観測された」ところまでで、その差がどこから来たのかは、この研究では決まっていません。
ひとりで決めきれないときの相談先
就職活動そのものの相談先として、ハローワークには「障害学生等雇用サポーター」が配置されています。障害があることを開示して就職することを希望している学生などに対して、就職の準備段階から職場に定着するまでを通した専門的な支援を行う担当者です。同じくハローワークの「精神・発達障害者雇用サポーター」は、障害の特性を踏まえた就職支援と職場定着支援を行っています。就職したあとの職場への慣れについては、職場まで支援員が来て手助けをする仕組み(ジョブコーチ支援)もあります。これらはいずれも障害のある人に向けた窓口です。吃音は一般的な意味で「障害」に分類されるとされていますが、自分が使えるかどうかは、窓口で相談して確かめてください。
症状そのものの相談先は、言語聴覚士のいる医療機関です。学齢期から通っている人であれば、ことばの教室も窓口になります。話すことで日常生活に支障が出ている、面接や電話の場面を避け続けている、という状態が長く続くときは、就職活動の相談とは別に、一度専門家に相談する道があります。大学に在籍しているなら、キャリア支援窓口や学生相談室も、考えを整理する場所になります。同じ経験をした当事者と話せる自助グループ(言友会など)も、判断の材料をくれる場所です。
面接カミングアウトの3つの落とし穴
落とし穴1 − 謝るところから入ってしまう
「すみません」「ご迷惑をおかけするかもしれませんが」から入る言い方は、研究上、伝えない場合とほとんど評価が変わりませんでした(差が出たのは「自信がある」の評定だけです)。伝えると決めたのなら、謝るのではなく、事実と見通しを淡々と置く。あなたは面接の場で謝らなければならないことを、何もしていません。
落とし穴2 − 「伝えれば通る」と考える
研究が測っているのは聞き手の印象であって、面接の合否ではありません。伝えたのに険しい顔をされた、という当事者の記録も実在します。伝えることは誤解を減らす道具のひとつと位置づけて、面接の中身の準備に力を割くほうが実際的です。
落とし穴3 − 面接の日だけで決めようとする
伝えるかどうかは、内定したあとに配慮を相談できるかどうかにつながっています。配慮を受けるには吃音を開示したうえで希望する内容を具体的に示して相談する必要があるとされており、面接で伏せたまま入社してから切り出すのは、順番として重くなりがちです。「面接に通るか」だけでなく「入ってからどう働くか」まで含めて考えたほうが、判断の材料は増えます。
よくある質問
面接で吃音はカミングアウトすべきですか?
「すべき」と言い切れるものではありません。模擬面接を使った実験では、冒頭でひと言、吃音があると伝えた条件で、吃音のない応募者との評価の差が見られなくなったと報告されています。ただし伝えるかどうかを決めるのは本人で、伝えない選択をして働いている当事者もいます。
伝えるとしたら、どう言えばよいですか?
研究上は、謝るのではなく事実として伝える言い方のほうが、聞き手の受け取りが良いとされています。実験で使われたのは「始める前にお伝えしておきます。私には吃音があります。音や語句を繰り返すことがありますが、分かりにくいところがあれば遠慮なく聞き返してください」にあたるひと言でした。伝える場所は、エントリーシート・面接の冒頭・詰まった場面での短い説明が主な選択肢になります。
言わないと不利になりますか?
実験では、吃音のある応募者が何も言わなかった条件で、吃音のない応募者より低く評価されました。ただしこれは模擬面接での印象評価であって、実際の合否を追ったものではありません。言わない選択にも、伝える時期を自分で決められるという面があります。日本の当事者への調査では、伝える度合いは米国の調査に答えた人たちより低いと報告されています。
面接で配慮をお願いすることはできますか?
障害者雇用促進法は、募集・採用にあたって障害のある人から申し出があった場合、事業主が障害の特性に配慮した必要な措置を講じることを義務づけています(過重な負担となる場合を除く)。実際に配慮を受けるには、開示したうえで希望する内容を具体的に示して相談する必要があるとされています。ハローワークには、開示して就職することを希望する学生を支援する担当者が置かれています。
障害者手帳がないと配慮は受けられませんか?
吃音のある成人の多くは手帳を持たないまま一般の就労をしており、吃音があるからといって一律に手帳を申請する必要はない、とされています。ただし手帳の有無で使える制度が変わる部分はあります。ハローワークや地域障害者職業センターなどによる支援は、「心身の障害があるために長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な方」が対象とされています。
まとめ
- 模擬面接の実験では、吃音のある応募者は全体として低く評価されたが、冒頭でひと言伝えた条件では吃音のない応募者との差が消えた。ただし参加者は大学生、演じたのは俳優で、合否そのものは測っていない。
- 伝えるなら謝らずに事実として。謝る言い方は、「自信がある」の評定を除いて、伝えない場合とほとんど変わらなかった。
- 研究をまとめた報告は18本中15本で良い方向の影響を認めているが、そうならなかった研究もある。伝えたのに冷たくされた当事者の記録も実在する。
- 日本の当事者180人の調査では、伝える度合いは米国の調査に答えた人たちより低く、自助グループの経験や自分の受け入れ方と結びついていた。「言わない」は例外的な選択ではない。
- 伝えることは、内定後の合理的配慮の申し出につながる。配慮を受けるには、開示したうえで希望を具体的に示して相談する必要がある。迷ったらハローワークのサポーター・大学のキャリア支援窓口・言語聴覚士・自助グループへ。
