吃音カードに何を書く?|ヘルプマークとの違い・自作した人の声

目次

「吃音があります」と口で説明したいのに、その説明の一言目から詰まってしまう——窓口やレジの前で、そんな行き止まりに立ったことのある人は少なくありません。だから、渡すだけで伝わる一枚がほしい。「吃音カード」「吃音ヘルプマーク」という言葉にたどり着くのは、たいていその順番です。

この記事では、実際にカードやマークを作った・手に入れた4人の記録を並べたうえで、「そこに何と書くか」について研究が言えているところまでを整理します。手がかりにするのは、日本吃音・流暢性障害学会の解説と厚生労働省の資料、そして筑波大学やテキサス大学オースティン校の研究チームが調べてきた「自分から吃音があると伝えること」の研究です。確かめられないことは、確かめられないと書きます。

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吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。気になる症状があるときは、言語聴覚士やことばの教室にご相談ください。

まず結論から

  • 「自分には吃音がある」と相手に知らせることを、研究では自己開示と呼びます。カードやマークは、それを口で言わずに済ませるための道具です。
  • 伝え方を条件として比べた研究では、謝るような言い方や何も言わない場合より、謝らない言い方のほうが好意的に受け止められていました。カードの文面を考えるときの、いちばん確かな手がかりです。
  • ただし、どんな場面で伝えるかによる違いは、そもそも調べた研究が少ないと同じ報告が断っています。紙を見せるという形そのものを比べた研究は、まだありません
  • 日本の吃音のある成人を対象にした調査では、自分から伝える度合いは米国の調査に答えた人たちより低いという結果でした。持たない・見せないという選び方も、少数派ではありません。
  • 学校や職場で配慮を求める根拠は法律の側にありますが、その際に医師の診断書や言語聴覚士の報告書の提出を求められる場合があります。カード1枚とは別の手続きです。

ただし、この記事は「このカードを持てば伝わる」と請け合うものではありません。公的なヘルプマークの配布対象に吃音が含まれるかどうかを確かめられる資料は手元になく、配布の窓口や案内も自治体によって異なります。ここに書けるのは、実際に作った人・手に入れた人が残した記録と、研究が言えている範囲までです。

カードに何と書くか——自分で作った人は「標準病名」を入れた

市販の一枚を探すより先に、自分で作ってしまう人がいます。何を書くかを自分で決めなければならないので、その一枚には作った人の考えがそのまま残ります。

当事者の声(音楽教室を主宰する吃音当事者/個人ブログ)

吃音症の方で

店でのオーダー、

窓口でのやり取り、

初対面での会話…

などなど

「その人にとって必要がある時」にこれを見せることで周りに理解してもらえると信じています!

人生で初めてヘルプマークを取得したその日に、本人はもう一枚、自分用の説明カードを作っています。写真を添えて公開されたその一枚には、標準病名も書き入れたと本人は書き添えました。想定されているのは、店での注文・窓口でのやり取り・初対面の会話という、ごく短い受け答えの場面ばかりです。常に使うものではなく、必要なときのために、そして持っているだけでも多少は安心につながるように——本人はそういう置き方をしています。カードに何を書くか、どう書くかについては、研究の側でも条件を分けた比較が重ねられてきました。

出典: 【ヘルプマークと初の試み】(アメーバブログ「川舩芯悟のBelieve it...」)(台帳: V0431)

この人が最後に書き添えた一文が、カードという道具の急所を突いています。説明するにも喋らないといけない——説明そのものが難しい場面があるから、紙が要るのだ、というわけです。

では、その紙に何と書くか。手がかりになるのは、就職面接を模した実験です。338人の観察者が、同じ話し手の動画を、冒頭の一言だけ変えて見ました。事実として伝える条件で話し手が言ったのは、「始める前にお伝えしておきます。私には吃音があります。音や語句を繰り返すことがありますが、分かりにくいところがあれば遠慮なく聞き返してください」にあたる一文です。吃音があるという事実/何が起きるか/相手にしてほしいことの3つが、謝罪の言葉を挟まずに並んでいます。

就職面接を模した実験で好意的に受け止められた側の一言を、3つに分けて示した図。①事実として伝える——「私には吃音があることをお伝えしておきます」。謝罪の言葉を挟まずに置き、原典の台本では名乗りのすぐあとの一言だった。②何が起きるかを伝える——「音や語句を繰り返すことがあるかもしれません」。相手が戸惑う前に、これから起きることを先に知らせる。③してほしいことを伝える——「分からないところがあれば、遠慮なく聞き返してください」。求めるのは我慢ではなく具体的な手助けで、ここを場面に合わせて書き換える。この一言は就職面接を模した動画の台本として作られ、口で言う形で比べられたもので、紙やカードに書いて見せる形そのものを比べた研究はまだ見あたらない
図1: 謝らない伝え方は、事実・起きること・してほしいことの3つでできている。3つへの分け方は本記事によるものです。出典: Byrd, Croft, Gkalitsiou & Hampton (2017) J Fluency Disord. / Coalson et al. (2026) J Fluency Disord.

この言い方をした話し手は、謝る言い方をした話し手よりも、また何も言わなかった話し手よりも、友好的だと評価されました。自信があるという評価では差がいちばん大きく、謝る言い方であっても、何も言わない場合よりは高く評価されています。三十年ぶんの研究を集めて整理した報告でも、伝え方を条件として比べた13件のうち12件で、謝る形や伝えない場合より謝らない形のほうが好意的に受け止められていました。著者らは、謝らない形で伝えることが、「どもる人はこういう人だ」という決めつけを向けられるかもしれないという負担——研究ではステレオタイプ脅威と呼びます——をやわらげると結論づけています。

カードに落とすなら、「ご迷惑をおかけしますが」から始める必要はない、ということになります。上の当事者が入れた「標準病名」も、謝罪ではなく事実の側の情報です。なお、この記事では印刷してそのまま使える配布物は用意していません。文面の型は示しますが、どの言葉を選ぶかは、見せる相手と場面で変わります。

「吃音でも使えるのかな」——ヘルプマークを探した保護者

もう一つの道は、すでにある公的なマークを使えないか調べることです。吃音のある子の親が、そこで最初にぶつかるのは「うちの子は対象なのだろうか」という問いでした。

保護者の声(吃音のある子の母/個人ブログ)

ヘルプマークの活動をされている当市議会議員の方に

「突然で申し訳ございませんが・・・」と連絡をして、とりあえず

数個いただきました

この母親は、ヘルプマークという制度の存在をブログで紹介したうえで、吃音のある人も活用できるのではないかと思いついたところから動いています。窓口に問い合わせたのではなく、地元でヘルプマークの活動をしている市議会議員に直接連絡を取った。返ってきたのは実物と、すでに吃音のある人で活用している人がいるという情報、そして、吃音のある人だけでなく、分かってもらえない・目に見えない障害のある人にこそ活用してほしいという言葉でした。県議会議員からも連絡が来た、と本人は書いています。一人の親が動いて、一つの経路が開いた記録です。制度の側が吃音について何を定めているのかは、別に確かめる必要があります。

出典: ヘルプマーク(アメーバブログ「吃音と母の歩み〜第2章?〜」)(台帳: V0432)

ここで正直に書いておきます。公的なヘルプマークの配布対象に吃音が含まれるかどうかを確かめられる一次資料は、この記事の参考資料の中にありません。配布の窓口も対象の書き方も自治体ごとに異なるため、実際に受け取れるかどうかは、お住まいの自治体の案内で確かめるほかありません。上の記録は「この経路で手に入った人がいる」という一例であって、どこでも同じように手に入るという意味ではありません。

一方で、マークやカードを持つかどうかとは別に、学校や職場で配慮を求める根拠のほうは、法律の側にはっきり書かれています2016年に施行された障害者差別解消法により、学校や職場での吃音に対する差別的な言動や扱いは禁止されており、発表や電話応対の免除、試験などでの面接時間の延長といった配慮(合理的配慮)を求めることができるとされています。ただし、その際に医師の診断書や言語聴覚士の報告書の提出などが求められる場合があるとも書かれています。つまり、一枚のカードを見せることと、制度として配慮を申し出ることは、別の手続きです。申し出のしかたは合理的配慮の記事で、手帳の話は障害者手帳の記事で詳しく扱っています。

マークそのものを作る人たち——「見える化」という発想

カードを自作する人がいる一方で、吃音を含む「声とことば」の困りごと全体を指すマークを、新しく作ろうとしている人たちもいます。

当事者の声(大学医学部助教・吃音当事者/新聞記事)

吃音(きつおん)や失語症などの当事者らが、声や言葉に関する疾患のあることを知らせる「声とことばマーク」を作り、25日に公表した。発案者で吃音の当事者でもある慶応大医学部の富里周太助教(40)は「これらの疾患は外見からは分かりにくいことが多い。困難を『見える化』し、周囲に理解と配慮を広げるシンボルにしたい」と話す。

発案したのは、吃音のある本人でもある大学医学部の助教です。赤い吹き出しに白い十字を配し、優しい表情を組み合わせたデザインで、きっかけは2023年に本人が所属する吃音の当事者団体が開いた交流会でした。そこで吃音以外の疾患のある人とも接し、電話が苦手だ、話し終えるのを待ってほしい、といった困りごとが重なっていることに気づいたといいます。この記事で本人の言葉として確かめられるのはここまでで、続きは会員限定です。注目したいのは、この発想が個人用の説明カードではなく、同じ困りごとを持つ人たちで共有する記号だという点です。誰が見せても同じ意味になる記号は、個別の説明文とは働き方が違います。そして、この違いを比べた研究は、実はまだほとんどありません。

出典: 吃音や失語症など知らせる「声とことばマーク」誕生 当事者らが公募し決定(中日新聞Web)(台帳: V0435)

ここが、この記事でいちばん誠実に書いておきたいところです。自己開示について三十年ぶんの研究を集めて整理した報告は、18件の量的研究のうち15件で全体として好意的な影響が示されたと述べています。しかし同じ報告は、どんな場面で伝えるか・話し手や聞き手の年齢・吃音の頻度や重さ・聞き手が吃音のある人と知り合いかどうかについては、そもそも調べた研究が少ないと断っています。比べられてきたのはほとんどが「口で言う言い方」で、紙やバッジを見せるという形は、研究の外にあります

もう一つ、見せる人によって受け取られ方が変わりうることも報告されています。開示の有無を比べた別の実験では、自分から伝えた話し手のほうが友好的・外向的・自信があると選ばれやすい一方で、女性の話し手は男性の話し手より知的でない・自信がないと選ばれやすく、見ている側も気が散ったと答えやすい傾向がありました。同じ一枚を見せても、相手の受け取りは一律ではない、ということです。研究が示しているのは大勢を平均した傾向であって、あなたの職場や窓口で起きることの保証ではありません。

学校に向けたカード——教師に理解を促す一枚

カードを必要とするのは、大人だけではありません。学校で言葉が出ないとき、困っている相手は本人であると同時に、事情を知らない先生でもあります。

当事者(20歳・専門学校2年生)についての新聞記事。本人の発言部分は会員限定のため、記事冒頭の紹介文を引用

言葉が出にくい「吃音[きつおん]」の症状がある熊本デザイン専門学校2年の嶋本一平さん(20)=熊本市東区=が、教師らに吃音への理解を促す「啓発カード」づくりに卒業制作で取り組んでいる。

デザインを学ぶ専門学校生が、卒業制作の題材に選んだのが「啓発カード」でした。宛先は同級生でも一般の人でもなく、教師です。本人には症状に悩んで不登校になった経験があり、学校現場の理解について語ったところで、この記事の無料で読める範囲は終わっています。ここから分かるのは、カードという形が自分の身を守る道具としてだけでなく、相手に知ってもらうための作品としても作られていることです。作ったものは県立美術館で展示されると報じられています。誰に向けて、どんな言葉で書くか——その選択が、日本ではどのくらい取られているのかを調べた研究があります。

出典: 「吃音」への理解、カードで深めて 不登校経験がある熊本市の専門学校生・嶋本さん制作(熊本日日新聞)(台帳: V0433)

筑波大学などの研究グループは、自分から吃音を伝える度合いを測る尺度の日本語版を作り、自助グループ(当事者どうしの集まり)などを通じて集めた日本の吃音のある成人を対象に調べました。その水準は、同じ尺度を使った米国の調査に答えた人たちより低いものでした。伝える度合いが高いことと結びついていたのは、男性であること、自助グループに参加した経験があること、自分を受け入れている度合いが高いこと、そして吃音のある自分自身に否定的な見方を向けてしまう気持ち(自己スティグマ)が弱いことでした。研究チームは、この低さを社会文化的な違いの反映かもしれないとしています。

この結果は、カードを作った人の記録と矛盾しません。持つ人がいることと、持たない人が多いことは同時に成り立ちます。「みんな使っているらしいのに自分は使えていない」と感じる必要はない、というところまでが、この調査から言えることです。

カードを見せたあと、職場や学校に頼めること

カードは、相手に何かを頼むための入口です。では、その先で何を頼めるのか。職場については、国が事業主に向けて望ましい取り組みを具体的に挙げています。採用試験では、応募者の希望を踏まえた点字や拡大文字の活用、手話通訳者などの派遣、試験時間の延長や休憩の付与といった、能力を適切に評価できるような配慮が挙げられています。障害の特性を踏まえた相談・指導や、職場内の意識啓発も同じ並びに入っています。

周囲の人に向けた仕組みもあります。一般の従業員を主な対象に、精神障害・発達障害について正しい理解を促し、職場での応援者を育てる講座(精神・発達障害者しごとサポーター養成講座)が全国で開かれています。カード1枚で理解を求めるより、こうした仕組みに乗るほうが早い場面もあります。

国が事業主に「望まれること」として挙げている措置を3つの場面に分けて示した図。義務として定められたものとは別の位置づけ。採用試験のときは、応募者の希望を踏まえ能力を適切に評価できるような配慮として、点字や拡大文字の活用、手話通訳者等の派遣、試験時間の延長や休憩の付与。働き始めてからは、障害特性を踏まえた相談・指導及び援助(作業工程の見直し、勤務時間・休憩時間への配慮、援助者の配置など)と、職場内の意識啓発(職場全体の障害および障害者についての理解や認識を深める)。周りの人に向けては、精神・発達障害者しごとサポーター養成講座が、一般の従業員を主な対象に全国で開催されている。カードを見せることと制度として配慮を申し出ることは別の手続きで、申し出の際は医師の診断書や言語聴覚士の報告書の提出を求められる場合がある
図2: カードを見せたあと、職場に頼めることとして挙がっているもの。出典: 厚生労働省「事業主の方へ 〜従業員を雇う場合のルールと支援策〜」/ 日本吃音・流暢性障害学会「吃音(きつおん)について」

学校や職場で配慮を求める根拠そのものは、先に触れたとおり障害者差別解消法にあります。発表や電話応対の免除、試験などでの面接時間の延長といった例が挙げられており、その際に医師の診断書や言語聴覚士の報告書の提出などが求められる場合があるとされています。カードは会話の入口で、制度の申し出は別の手続き——この2つを分けて考えておくと、「カードを見せたのに何も変わらなかった」という落胆を避けられます。話す代わりに書いて伝える方法については、筆談の記事で場面ごとに整理しています。

相談先としては、言語聴覚士やことばの教室のほか、当事者どうしの自助団体があります。1965年に発足した「言友会」は日本で最も歴史が古く、近年は若者を対象とした団体や、女性の集いを開く団体も設立されています。先ほどの日本の調査でも、自助グループに参加した経験は、自分から伝える度合いと結びついていた要因の一つでした。

吃音カードを用意するときの3つの落とし穴

落とし穴1 − 「ご迷惑をおかけしますが」から書き始めてしまう

いちばん書きやすいのは謝罪の言葉ですが、研究上は、謝る形の伝え方が最も有利だったわけではありません。伝え方を条件として比べた13件のうち12件で、謝る形や伝えない場合より謝らない形のほうが好意的に受け止められていました。面接を模した実験でも、事実として伝えた話し手のほうが友好的・自信があると評価されています。事実(吃音があります)/何が起きるか(言葉が出にくいことがあります)/してほしいこと(少し待ってください、聞き返してください)の3つを、謝罪抜きで並べる。それが、いまの研究から言える書き方の型です。カードの上で謝らなければならないことを、あなたは何もしていません。

落とし穴2 − 「持てば伝わる」と期待して、伝わらなかったときに落ち込む

自己開示の研究で好意的な影響が示されたのは18件中15件で、全部ではありません。面接の実験を行った研究チーム自身も、吃音を伝えることがすべての状況・すべての人にとって有益とは限らないと結論に書いています。さらに、この実験が就職面接という場面で行われたことは研究チームも明示しており、他の場面にそのまま当てはめられるわけではないと断っています。そもそも紙を見せるという形を比べた研究はまだありません。うまく伝わらなかったとしても、それはあなたのカードの書き方が悪かったからだとは限りません。

落とし穴3 − カードを用意することを、制度の手続きと取り違える

ヘルプマークやカードを持つことと、学校・職場で配慮を申し出ることは、別々の道です。配慮を求める根拠は障害者差別解消法にありますが、診断書や言語聴覚士の報告書の提出を求められる場合があります。障害者雇用の枠は手帳を持っている人が対象という定義になっており、カードの有無とは関係がありません。どちらの道を選ぶにしても、どんな場面で・どのくらい話しにくいのかを書き留めておくと、相談や申し出のときの材料になります。まずは気づいたことを記録しておくところから小さく始め、言語聴覚士やことばの教室に相談できる場合はそちらが確実です。

よくある質問

吃音カードとは何ですか?

決まった規格のあるものではなく、吃音のある人が「自分には吃音がある」ことを相手に知らせるために持つ一枚の総称です。自分で作る人もいれば、公的なヘルプマークと組み合わせて使う人もいます。研究では、こうして自分から知らせることを自己開示と呼びます。

吃音でもヘルプマークはもらえますか?

この記事の参考資料の中に、公的なヘルプマークの配布対象を定めた一次資料がないため、対象になる・ならないをここで断定することはできません。配布の窓口や対象の書き方は自治体によって異なるので、お住まいの自治体の案内でご確認ください。記事本文では、地元の市議会議員に連絡して実際に受け取った保護者の記録を紹介していますが、これは一つの例であって、どこでも同じ経路で手に入るという意味ではありません。

カードには何と書けばいいですか?

研究上は、謝るのではなく事実として伝える言い方のほうが好意的に受け止められています。実験で使われたのは「始める前にお伝えしておきます。私には吃音があります。音や語句を繰り返すことがありますが、分かりにくいところがあれば遠慮なく聞き返してください」にあたる一文でした。事実・何が起きるか・してほしいことの3つを並べ、3つ目を場面に合わせて書き換えるのが、そのままカードの型になります。

カードを見せれば配慮してもらえますか?

約束できるものではありません。自己開示の研究で好意的な影響が示されたのは18件中15件で、研究チーム自身も、すべての状況・すべての人にとって有益とは限らないと断っています。また、学校や職場で配慮を求めるときには、医師の診断書や言語聴覚士の報告書の提出を求められる場合があるとされています。カードは会話の入口で、制度の申し出とは別の手続きだと考えておくほうが確実です。

障害者手帳がないとカードは使えませんか?

自分で作るカードに、手帳が前提という決まりはありません。ただし制度の側を見ると、障害者雇用率制度の対象は手帳を持っている人という範囲で定義されており、精神障害者保健福祉手帳や身体障害者手帳が交付されることで福祉的就労の対象になるとされています。手帳とカードは目的の違う道具です。手帳そのものの条件や手続きは、障害者手帳の記事で詳しく扱っています。

まとめ

  • カードやマークは、「自分には吃音がある」と相手に知らせること(自己開示)を、口で言わずに済ませるための道具。実際に自分で作った人は、店での注文・窓口・初対面の会話という短い受け答えの場面を想定していた。
  • 何と書くかは、謝らずに事実・何が起きるか・してほしいことを並べる形が、いまの研究から言える型。伝え方を比べた13件のうち12件で、謝らない形のほうが好意的に受け止められていた。
  • ただし、紙を見せるという形そのものを比べた研究はまだ無く、場面による違いは調べた研究が少ない。受け取られ方は見せる人によっても変わりうる。
  • 公的なヘルプマークの配布対象に吃音が含まれるかを確かめられる資料は手元に無い。受け取れた保護者の記録はあるが、どこでも同じ経路で手に入るとは言えない。配布の案内は自治体ごとに確かめる。
  • 日本の吃音のある成人は、自分から伝える度合いが米国の調査に答えた人たちより低かった。持たない選択も少数派ではない。配慮を求める根拠は法律の側にあり、診断書などの提出を求められる場合がある。職場については、試験時間の延長や休憩の付与といった配慮が事業主向けに具体的に挙げられている。

参考文献

  1. 日本吃音・流暢性障害学会「吃音(きつおん)について」(広報委員会作成・2023年10月)
  2. 厚生労働省「事業主の方へ 〜従業員を雇う場合のルールと支援策〜」(雇用の分野における障害者の差別禁止及び合理的配慮の提供義務)
  3. Byrd, Croft, Gkalitsiou & Hampton (2017) Clinical utility of self-disclosure for adults who stutter: Apologetic versus informative statements. J Fluency Disord.(テキサス大学オースティン校)
  4. Byrd, McGill, Gkalitsiou & Cappellini (2017) The Effects of Self-Disclosure on Male and Female Perceptions of Individuals Who Stutter. Am J Speech Lang Pathol.(テキサス大学オースティン校)
  5. Coalson, Rodriguez, Albaum, Allen & Byrd (2026) Self-disclosure of stuttering: A systematic review. J Fluency Disord.(テキサス大学オースティン校)
  6. Iimura, Takahashi, Aoki et al. (2026) Relationships between psychosocial aspects of stuttering and self-disclosure of stuttering in a Japanese sample. J Fluency Disord.(筑波大学)

当事者の声の出典: V0431(アメーバブログ「川舩芯悟のBelieve it...」・川舩芯悟さん)/ V0432(アメーバブログ「吃音と母の歩み〜第2章?〜」・吃音のある子の母)/ V0433(熊本日日新聞・嶋本一平さん)/ V0435(中日新聞・富里周太さん)。いずれも公開記事。引用は原文どおり。

更新履歴: 2026-09-12 公開