まず結論から
- 吃音でいう「リスクマネジメント」は、いま困っていることを解決する相談ではなく、この先に起きそうなことを見越して先に備えておくという意味で使われています。小学校以降の支援は「毎年のリスクマネジメントの積み重ね」と説明されています。
- 備える先は具体的に挙がっています。日直の号令、音読、発表、かけ算の九九、学習発表会、卒業式といった場面で困ることがあるため、本人に具体的に尋ねることが困り感の早期発見につながるとされています。
- 学齢期には約半数がいじめやからかいを経験するので対策が重要だと報告されており、別の解説でも吃音のある子の過半数が笑われたりからかわれたりしていると述べられています。
- 『吃音のリスクマネジメント:備えあれば憂いなし』は、2014年9月に学苑社から出た128ページの単著です。市販の書籍なので、本文をまるごと無料で読めるPDFは配られていません。一方で、同じ考え方に沿った公的な資料はPDFで無料公開されています。
- 「この子の吃音は続くのか」の手がかりは分かってきていますが、それぞれの要因がどの程度まで見通しを言い当てられるかは明らかになっていません。
ただし、ここで挙がる「リスク」は大勢を集めて平均した傾向であって、目の前の一人の子がこうなると決まっているわけではありません。研究自身も、これは群どうしの比較であって個々の子どもを代表するものではないと断っています。
吃音でいう「リスクマネジメント」は何を指すのか
この言葉は、学校や会社の危機管理という意味でも広く使われています。そのため資料を探すと、まったく別分野のものが混ざってきます。吃音の文脈では、もっと限られた意味で使われています。
発達障害ナビポータルにある吃音の解説は、「小学校以降の支援:毎年のリスクマネジメントの積み重ね」という見出しを立てています。中身はこうです。吃音のある子どもは話す場面でしか症状が出ないため、悩みが過小評価されることが多い。他の子どもから話し方を真似されたり、笑われたり、「なんでそんな話し方なの?」と質問されることが多い。
だから、担任の先生・保護者・支援者が本人に「真似されていない?」「笑われていない?」「話し方を質問されていない?」とオープンに聞くことが、吃音の話をオープンにするきっかけになる、と書かれています。そして、学校では毎年クラス替えがあり、真似・笑い・質問を受けるリスクがあるため、早期発見とその対応法をオープンに話すことが予防につながるとしています。
つまり「リスクマネジメント」は、何かを治す話ではなく、起きやすいことをあらかじめ言葉にして、毎年確かめ直すという段取りの話です。同じ解説は、相談に来た子が目の前では流暢に話すために「気にならないですね」「軽い吃音ですね」と言われがちで、そうした言葉が保護者にプラスに働くことは少ない、とも指摘しています。
「場面によって困り方が違う」ことは、国の調査でも確かめられています。吃音・トゥレット症・場面緘黙をひとつの群として調べた厚生労働科学研究では、吃音について180名分のデータを集め、吃音のある人は特定の場面で困り感が増すことが分かったと報告しています。この研究は、困難度を調べる問診票を幼児7項目・学童期5項目・青年期以降4項目とライフステージごとに分けて作り、信頼性と妥当性を検証しています。年代が変われば、備える場面も変わるということです。
本そのものについても触れておきます。九州大学の教員データベースには、『吃音のリスクマネジメント:備えあれば憂いなし』が学苑社から2014年9月に出た単著(総ページ数128)として記載されています。著者は九州大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科の医師で、上に引いた発達障害ナビポータルの解説も同じ人が書いています。本の中身をここで写すことはできませんが、同じ枠組みがどこに、無料で置かれているかは示せます。それがこの記事の後半です。
発表会の前に、先生と何を決めておくか
幼稚園や保育園の劇・発表会は、保護者が最初に「先に手を打っておきたい」と思う場面です。セリフがある、みんなの前で立つ、しかも一年で一番の晴れ舞台になっている。ある家庭は、劇の前に園の先生と相談を済ませていました。役は本人が立候補し、言いづらいときは何人かで一緒に言う、得意なことを見せる場面も作る——そこまで決めて当日を迎えています。迎えに行った母に、次男が返したのはこんな言葉でした。
保護者の声(年長の次男に吃音がある母・3兄弟の母/個人ブログ note)
「全然、上手くできなかった…」
涙目
「上手くしゃべれなかった、どうしてしゃべれないの?なんで○○だけこんな変なしゃべり方になっちゃうの??」それを聞いて、胸がギュッとつかまれたような、なんとも言えない悲しい気持ちになりました。
わたしは、次男に吃音が出たとしてもそれはこの子の特性で、隠すことでもないし、どうしていけばいいか、その都度一緒に考えて行けばいいかと、ある意味、かなり気楽に考えていました。
備えは無駄ではなく、舞台には立てています。側転の場面ではどよめきも起きた。けれども、親が見ていた出来栄えと、本人が感じていた手応えは別のところにありました。母親はこの直後に、もう一度言語聴覚士に相談して何かできることはないか動いてみよう、と決めています。相談の場に持ち込まれるのは、こうして本人が自分の話し方を意識し始めたという変化であることが少なくありません。
出典: 吃音年長次男「ことばの教室」に通うことになったきっかけ(note)(台帳: V0009)
学会の解説によれば、4歳(早い子は2〜3歳でも)になると、自分でも「言いにくい」「他の子の話し方と違う」と気づき始めます。同じころ、周囲の子どもも違いを不思議に思う時期になり、おおむね4歳ごろには「○○ちゃんはなんで、『あああ』ってなるの?」というような指摘が始まることがあります。こうした指摘をきっかけに、発話に力が入り、声が出しにくくなったり、体を動かしながら話そうとしたりする子も出てきます。幼児期の備えが「発表会の日」だけの話にならないのは、このためです。
この時期に「様子を見ましょう」と言われたとき、何もしないわけではありません。ガイドラインは、積極的な指導を始めるまでの期間にやることを具体的に書いています。保護者が過度に心配しないように資料を渡しながら、吃音の知識と家庭・集団での望ましい関わり方を伝え、定期的な面談で経過を見る。家庭では日々の症状を記録してもらい、面談ではその記録をもとに変化を評価する。1年が経つなかで悪化が認められる場合は言語聴覚士につなぐ、という段取りです。
いつ専門的な指導へ切り替えるかの目安も示されています。話すときに苦しそうな様子や力みがあるか、悪化する傾向があるか、そして就学1年前ごろになっても改善の傾向がないか——この2点が、言語治療を始める判断として挙げられています。
毎年のクラス替えが、確かめ直す節目になる
小学校に入ると、話す場面が時間割の中に固定されます。順番が回ってくることがあらかじめ分かっていて、しかも毎年、聞いている顔ぶれが入れ替わる。のちに吃音を専門にする医師になった本人は、入学後に健康観察の「はい、元気です!」が言えない時期があったこと、音読の宿題の「すらすら読めるように」というチェック項目が何度読んでも埋まらずに泣いた記憶があることを書き残しています。両親が動いたのは、その次の年でした。
当事者の声(九州大学病院 耳鼻咽喉科の医師・菊池良和さん。3歳前後で吃音が始まった本人が自分の子ども時代を振り返った記事/個人ブログ note・本人執筆)
小学2年生の時に両親が心配し、吃音のある子を集めた「音読練習会」のような所に連れていかれた記憶があります。自分と同じと聞かされていたが、他の児童は流暢に話せていたが、自分が一番吃音が重いのではないか、と思っていました。半年ぐらい、月に2回通っていましたが、多分、私が行かない、と言ったためか、それ以降は吃音のことを両親とは話すことはなかったです。
両親は心配して、実際に動いていました。ところが連れて行かれた先で本人が見ていたのは、他の児童との比べ方のほうでした。困っていない時期のほうが長かったとも本人は書いていて、毎日つらかったという話ではありません。それでも最後の一行は重い——半年で通うのをやめたあと、吃音の話題そのものが家庭から消えています。備えの手順が「毎年オープンに話す」ことを中心に置いているのは、この沈黙が起こりやすいからです。
出典: 自己紹介2(吃音がある中学生が、医師を目指した理由)(note)(台帳: V0128)
困りやすい場面は、推測ではなく一覧になっています。発達障害ナビポータルの解説は、日直の号令、音読、発表、かけ算の九九、学習発表会、卒業式などの特定の場面で困ることがあるため、より具体的に質問することが困り感の早期発見につながる、と書いています。「学校どう?」ではなく「音読の順番は?」と聞く、ということです。
放っておいた場合に何が起きるかも、数字で示されています。日本耳鼻咽喉科学会会報の総説は、学齢期に約半数がいじめやからかいを経験するので対策が重要であり、診断書などで対応すると述べています。研究プロジェクトの解説はさらに踏み込んで、吃音のある子の過半数が笑われたりからかわれたりしており、これによって自尊感情の低下や不登校といった二次障害——吃音そのものではなく、そのまわりで後から起きてくる問題——が生じやすくなる、としています。だからこそ本人の意向を聞きながら、クラスや学校の環境を整えるのだ、というのがこの解説の順序です。
面接や電話に、どう先回りするか
思春期をすぎると、症状の出方そのものが変わります。学会の解説によれば、連発(「ぼぼぼぼくは」と繰り返す)や伸発(「ぼーーーくは」と引き伸ばす)よりも、難発(最初の音が出しにくくなる)が中心になります。そして中高生では部活動や入学面接、大学生ではゼミの発表や就職活動、社会人では職場の電話応対が、話しにくさを感じやすい場面として挙げられています。ここでの「備え」は、本人が自分で選ぶものになります。
当事者の声(理系大学生・卒業後はコンサルティングファームに入社予定/個人ブログ note)
面接中に吃ったらどうしよう…そう悩んでいる人は少なくないのではないでしょうか。面接冒頭から吃音持ちであることを伝えることができればこの不安は和らぐと思います。少なくとも僕はそうでした。
ここ最近吃音症の認知も広がってきたように感じます。
この学生は、大学名と学部学科、力を入れたことに続けて、自己紹介の流れの中に「吃音がある」と伝える一言を組み込んでいました。話しているのは面接の結果ではなく、面接が始まる前の自分の状態です。詰まったらどうしようと身構えたまま座るか、先に言ってしまってから座るか。本人は、就職活動をした時期には少なく見積もっても半数以上の面接官が吃音症を知っていて、詰まっても気にしなくていい、一度深呼吸してもらってかまわない、といった気遣いの言葉をもらえる企業ばかりだったとも書いています。この「先に伝える」という振る舞い自体は、自己開示(自分から「吃音があります」と相手に伝えること)として30年にわたり研究されてきました。
出典: 面接で吃音はカミングアウトすべきなのか...!?(note)(台帳: V0002)
その研究をまとめた系統的レビュー(決めた手順で論文を集めて結果を突き合わせる方法)は、18件の量的な研究を対象に、自己開示には全体として好意的な影響があったと報告しています(18件中15件・83.3%)。伝え方を比べた研究では、謝る形の開示や開示しない場合よりも、謝らない形の開示のほうが好意的に受け止められていました(13件中12件・92.3%)。ただし同じレビューは、効き方を左右しうる要因として、伝え方・伝える場面・話し手や聞き手の年齢・吃音の頻度や重さ・相手が吃音のある人を知っているかどうか、を挙げています。誰にでも同じように効く技法として書かれてはいません。
制度の側の備えもあります。入学試験や大学入試の面接で事前に吃音があることを伝えておくと、「過重な負担」となる範囲を除いて、寛容な聞き手の姿勢や時間的な余裕といった合理的配慮——負担が重くなりすぎない範囲で、周りがやり方を変えて不利をなくす対応——を受けられるとされています。職場では、電話が難しい場合に他の人に取ってもらう人員配置や、口頭ではなくメールで報告する手順への変更が例に挙がります。「合理的」とは雇用主に過大な負担を生じさせない範囲、という意味です。ただし民間企業では合理的配慮が法的義務になっていないため、診断書があっても配慮されない場合もあると説明されています。電話が苦手な人のために、2021年から総務省が主体となって公共インフラのひとつになった「電話リレーサービス」も使えます。
「この子は続くのか」は、どこまで分かっているのか
先回りして備えようとすると、必ず突き当たるのが「そもそもこの先も続くのか」という問いです。発達障害ナビポータルの解説は、これが保護者の最大の関心事だと書いたうえで、吃音を発症したあと男児では3年で6割、女児では3年で8割が自然回復するとしています。そして、相談時に「将来、吃音はなおりますか?」と尋ねられても、「男児で家族歴がある場合は、なおりづらい」としか返答できない状況だ、と率直に述べています。
その「なおりづらい」の中身を数字にしたのが、就学前の子どもを追いかけた複数の研究をまとめたメタ分析(同じ問いを扱った研究の結果を統計的に統合する方法)です。家族に吃音のある人がいる子は、いない子より吃音が持続しやすく、その比は1.89倍と報告されています(推定のぶれの幅は1.27〜2.82倍)。男児は女児より持続しやすく、その比は1.48倍です(同じくぶれの幅は1.10〜2.00倍)。また、吃音が持続した子は回復した子より、吃音が始まった年齢が遅かったという差も報告されています。
ただし、ここから先が大事なところです。ガイドラインは、発症や治癒に関連する要因として家族歴・性別・吃音の症状・音の発達・ことばの発達・他の障害の併発・気質と社会的/情緒的な安定を挙げたうえで、これらの要因どうしの関連や、それぞれがどの程度の予測力を持つかは明らかになっていないと明記しています。予後を予測することについては、十分な根拠がないので勧められない、という評価が付いています。
メタ分析の側も同じ注意をしています。今回の結果は群どうしの比較にもとづくもので、どの子にも当てはまるものでも、個々の子どもを代表するものでもない、と述べています。実際の評価では、重症度の印象だけを見るより、どんな詰まり方がどのくらい出ているかを分析するほうが、見通しの手がかりを得やすいとも書かれています。
備える側の受け止め方としては、これで十分です。手がかりは「相談に行くかどうかの後押し」には使えるが、「この子はこうなる」という予言には使えない——その線引きを持っておけば、数字に振り回されずに済みます。
無料で読める公的な資料と、相談できる場所
ここからが、本を探しに来た方への実際の答えです。同じ「先回りして備える」考え方に沿った資料は、無料で公開されています。
幼児吃音臨床ガイドライン(第1版)2021は、研究班がまとめたもので、PDFがそのまま公開されています。月2回以上の積極的な指導をいつ始めるかについて、年少組までは経過観察を基本とし、年中組では開始を検討、年長組では開始を推奨する、と学年で区切って書かれています。しかも、あまりに早く始めれば自然に改善したはずの多くの子に不要な指導を行うことになり、遅すぎれば十分な改善を得られないまま就学を迎える子が出る、と両側の失敗を並べて説明しています。備えの前倒しと様子見のどちらにも根拠が要る、ということが読み取れる部分です。
厚生労働科学研究の報告は、研究成果データベースで公開されています。吃音・トゥレット症・場面緘黙を「顕在化しにくい発達障害」としてひとつの群にとらえ、重症度と生活困難の指標をはっきりさせること、簡便なスクリーニングの道具や声を使わない伝達の道具をつくること、支援機関で対応するための支援マニュアルをつくることを目的に掲げています。年代別の問診票と支援マニュアルは、この研究の成果です。
日本吃音・流暢性障害学会の解説は、症状の説明から年代ごとの経過まで一続きで読めます。発達障害ナビポータルの吃音のページは、この記事が何度も引いてきたとおり、学校以降の備え方がまとまっています。
本や冊子そのものを探したい場合は、目録があります。全国言友会連絡協議会は体験談集を発行していて、さまざまな年代や立場の吃音のある人の体験に触れることができると案内しています。日本吃音臨床研究会も、書籍と教材の一覧を出しています。いずれも頒布の案内で、本文そのものが置かれているわけではありませんが、どんな本が誰の立場から書かれているかを見渡す入口になります。
相談できる場所も、ガイドラインが並べています。幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する発達や言語の相談室などです。地域の児童発達支援センターには言語聴覚士が在籍する場合が多く、相談窓口になっています。就学後は、小学校に置かれた通級指導教室「ことばの教室」が指導にあたります。
同じガイドラインは、相談に応じている機関の多くが治療には対応できないことも多い、と注意しています。相談できる場所と、指導を受けられる場所は、必ずしも同じではありません。
「備える」で陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 学校の危機管理と同じ意味で読んでしまう
同じ言葉が別分野でも使われているため、資料が混ざります。吃音でのこの言葉は、真似・笑い・質問を受ける可能性や、音読・発表といった場面をあらかじめ言葉にして、毎年確かめ直すという意味で使われています。組織の事故防止の話ではありません。混ざった資料をたどっても、必要な情報には着きません。
落とし穴2 − 「気にならないですね」で安心して、そこで止める
相談の場では、子どもが目の前で流暢に話してしまうことが多くあります。そこで「気にならないですね」「軽い吃音ですね」と言われても、保護者にとってプラスに働くことは少ないと指摘されています。本人が困るのは日課の側、つまり日直の号令や音読や発表です。その場の印象ではなく、場面を名指しして尋ねるほうが確かです。
落とし穴3 − 続きやすさの手がかりを、一人の子の見通しとして読む
家族歴や性別といった手がかりは確かに報告されていますが、要因どうしの関連やそれぞれの予測力は明らかになっていません。メタ分析自身も、群どうしの比較であって個々の子どもを代表しないと断っています。手がかりは相談に行く後押しには使えますが、将来を決めつける材料にはなりません。
日々の様子を書き留めておくと、面談でその記録をもとに変化を見てもらえます。まずは気づいたことを記録することから小さく始め、言語聴覚士やことばの教室に相談できる場合はそちらが確実です。
よくある質問
『吃音のリスクマネジメント』は無料のPDFで読めますか?
この本は2014年9月に学苑社から刊行された128ページの単著で、市販の書籍です。本文をまるごと無料で読めるPDFは配られていません。ただし、同じ「先回りして備える」考え方に沿った公的な資料は無料で公開されていて、幼児吃音臨床ガイドライン2021のPDFや、厚生労働科学研究の報告がそれにあたります。
吃音の「リスクマネジメント」とは何を指す言葉ですか?
いま困っていることを解決する相談ではなく、この先に起きそうなことを見越して先に備えておくことを指して使われます。発達障害ナビポータルの解説は「小学校以降の支援:毎年のリスクマネジメントの積み重ね」として、毎年クラス替えがあり真似・笑い・質問を受けるリスクがあるため、早期発見と対応法をオープンに話すことが予防につながると述べています。
学校では、どんな場面に先回りしておけばよいですか?
日直の号令、音読、発表、かけ算の九九、学習発表会、卒業式などの場面が挙げられています。本人に「真似されていない?」「笑われていない?」「話し方を質問されていない?」と具体的に尋ねることが、困り感の早期発見につながるとされています。学齢期には約半数がいじめやからかいを経験すると報告されているため、対策が重要だとされています。
吃音が続きやすいかどうかは、前もって分かりますか?
手がかりは報告されています。家族に吃音のある人がいる子は1.89倍、男の子は女の子より1.48倍、吃音が持続しやすいとされています。ただしガイドラインは、これらの要因どうしの関連や、それぞれがどの程度の予測力を持つかは明らかになっていないと明記しています。メタ分析自身も、群どうしの比較であって個々の子どもを代表するものではないと述べています。
どこに相談すればよいですか?
幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する発達や言語の相談室などが挙げられています。地域の児童発達支援センターも相談窓口になっており、就学後は小学校の通級指導教室「ことばの教室」が指導にあたります。ただし、相談に応じている機関の多くは治療には対応できないことも多い点に注意が必要です。
まとめ
- 吃音でいう「リスクマネジメント」は、先に起きそうなことを言葉にして毎年確かめ直す段取りのこと。小学校以降の支援は「毎年のリスクマネジメントの積み重ね」と説明されている。
- 備える先は具体的に挙がっている——日直の号令、音読、発表、かけ算の九九、学習発表会、卒業式。「学校どう?」ではなく場面を名指しして尋ねるほうが早く気づける。
- 学齢期には約半数がいじめやからかいを経験するとされ、過半数が笑われたりからかわれたりしているという解説もある。自尊感情の低下や不登校につながりうる。
- 青年期の備えは本人が選ぶものになる。自己開示は全体として好意的な影響が報告され、謝らない伝え方のほうが好意的に受け止められていたが、効き方を左右する要因も挙げられている。制度の側では合理的配慮や電話リレーサービスがある。
- 本のPDFは無料で配られていないが、同じ考え方に沿った公的資料は無料で読める。幼児吃音臨床ガイドライン2021と厚生労働科学研究の報告が入口になる。