まず結論から
- ダウン症のある人には吃音が多い——日本吃音・流暢性障害学会と幼児吃音臨床ガイドラインの両方が、同じ向きのことを書いています。学会は「必ず起きるわけではない」と断ったうえで、ダウン症や早口言語症では吃音を生じる人が、それらの障害がない人より多いとしています。ガイドラインは、知的障害のある子では吃音を合わせもつこと(併発)がやや多く、ダウン症ではさらに多くて、少なくとも15%以上に吃音の併発が報告されていると述べています。
- ただし、その「15%以上」の元になっているのは1966年と1973年の報告で、日本の幼い子どもで確かめた数字はありません。日本の3歳児健診で行われた調査では、ダウン症か注意欠如・多動症(ADHD)があると答えた保護者が1,983人のうち1人しかおらず、意味のある解釈はできなかったと報告されています。
- ダウン症のある子の吃音は、始まる時期がずれることがあります。吃音はある程度ことばが育ってから始まるので、知的な発達に伴って話すことの発達にも遅れがあると、吃音が始まるのが学齢期以降になることがある、とガイドラインは書いています。
- 「幼児の吃音は多くが自然に治る」という見通しを支える研究は、ダウン症のある子を対象から外して作られています。就学前の子の吃音のリスク要因とふるい分けの方法を調べた研究のまとめは、ダウン症(21トリソミー)などを併せもつ子を扱った研究を除外しています。
- 相談先は、幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる医療機関や、言語聴覚士のいる地域の児童発達支援センターです。訓練の目標は「なめらかに話せること」に固定されず、本人の生活と能力に合った伝え方を保ちながら、話す技能を伸ばせるかを検討する、とガイドラインは示しています。
ただし、ダウン症のある子の吃音について「何割が続き、何割が治まるか」「どの方法が効くか」を示した強い根拠は、この記事が引ける資料の中にはありません。ガイドライン自身も、併存する問題は種類が多く、同じような例を数多く集めて研究することが難しいため、強い根拠のある吃音の治療法はあまりないと書いています。一人ひとりの見通しは、専門職の評価のうえで考えるものです。
「ダウン症では吃音が多い」——その数字は、どこから来ているのか
まず、二つの公的な資料が同じ向きのことを言っています。日本吃音・流暢性障害学会の解説は、吃音が出やすくなる障害があるとしたうえで、必ず起きるわけではないが、ダウン症や早口言語症(早口で、なめらかに話せない状態。あとで説明します)では吃音を生じる人が、それらの障害がない人より多くいる、と書いています。同じ解説は、吃音に比較的多い併存症(合わせもつことのある状態)として、学習障害・注意欠如・多動症(ADHD)・自閉スペクトラム症(ASD)・知的障害・てんかん・構音障害を並べてもいます。
幼児吃音臨床ガイドラインは、もう一歩踏み込んでいます。原因を扱う章で、知的障害のある子でも吃音の併発(合わせて起きること)がやや多いが、ダウン症ではさらに多く、少なくとも15%以上に吃音の併発が報告されていて、単なる知的障害や発達性吃音とは異なる要因もある可能性がある、と述べています。知的障害が併存する場合の対応を扱う設問でも、比較的高い併存率を示す知的障害はダウン症候群である、と繰り返されています。
ここで、数字の出どころを見ておきます。ガイドラインが「15%以上」の根拠として挙げている引用文献は1966年と1973年の報告です。半世紀前の数字であり、日本の子どもを対象にした新しい数字は、ガイドラインの本文には示されていません。「多い」という方向は複数の資料が一致して書いているのに、「何%」と言える数字は古いものしか無い——これが、この話題の出発点です。
日本の数字を探してみます。国立障害者リハビリテーションセンター・筑波大学・北里大学・九州大学・金沢大学などの研究者が、5つの県の市町村に協力を得て、3歳児健診を受けた子どもの保護者に質問紙を配った調査があります。健診の時点で吃音があった子はおよそ6.5%、過去にあった子を含めると8.9%でした。保護者が「子どもに病気や障害がある」と答えた割合は、吃音のある群で11.7%、無い群で5.1%と差がありました。しかし、ダウン症とADHDについては、著者らは、吃音との関連が報告されている状態だと前置きしたうえで、両群のあいだに偏りは見つからず、そもそも答えた保護者1,983人のうちダウン症かADHDがあると報告したのは1人だけで、意味のある解釈はできない、と書いています。日本の幼い子どもで「多い」を確かめた数字は、まだ無いということです。
海外の大きなデータも見ておきます。ドイツの吃音当事者団体と大学の研究者が、公的医療保険の加入者の記録を使って、2017年に吃音の診断がついていた0〜19歳の子ども(男の子11,096人・女の子3,896人)に、ほかにどんな診断がついていたかを集計した研究です。ダウン症の診断があった割合は、男の子で0.17%(19人)、女の子で0.31%(12人)でした。保険の加入者全体では男の子0.12%・女の子0.10%なので、吃音の診断がある子のほうがダウン症の診断も多く、「何倍か」の目安(オッズ比)は男の子で1.43倍、女の子で2.99倍です。同じ表で、軽度の知的障害の診断があった割合は男の子1.31%・女の子0.77%で、加入者全体の0.31%・0.20%に対して4.28倍・3.90倍でした。
ただし、この数字はガイドラインの「15%以上」とは向きが逆です。ガイドラインが引いているのは「ダウン症のある人のうち、吃音のある人の割合」で、ドイツのデータが数えているのは「吃音の診断がある子のうち、ダウン症の診断もある子の割合」です。同じ「多い」でも、そのまま比べることはできません。人数も19人と12人で多くはなく、著者ら自身がこの研究を探索的なものと位置づけ、検定を繰り返すときの補正も行っていないと明記しています。診断コードに基づく集計なので、診断がつかなかった子は数えられていません。この「診断がつかない」という問題は、あとの節でもう一度出てきます。
発達性吃音と同じものか——始まる時期・話す速さ・ことばの育ち
子どものころに始まる吃音を発達性吃音と呼びます。定義と分類そのものは吃音の定義と分類の記事に譲り、ここではダウン症のある子について、ガイドラインが書いている三つの点を見ていきます。
一つ目は、始まる時期です。ガイドラインは、知的障害、特にダウン症では吃音症状を示すことが多く報告されている、としたうえで、吃音はある程度の言語発達が見られてから発症するので、知的な発達の遅れに伴って発話の発達にも遅れがあると、吃音が始まること(発吃)は学齢期以降になることがある、と書いています。一般の幼児吃音の好発時期は2〜3歳です。「もう小学生だから、今から吃音が始まるはずはない」とは言えない、ということです。ことばの発達に遅れがある場合、吃音への対応は暦年齢ではなく言語の発達年齢に応じたものになる、ともガイドラインは述べています。
二つ目は、成り立ちです。ダウン症で吃音が多いことについて、ガイドラインは「単なる知的障害や発達性吃音とは異なる要因もある可能性がある」と書いています。何がどう違うのかは書かれていません。ただ、この一文は「知的障害があるから吃音が出る」という単純な説明では足りないかもしれない、という留保として読めます。
三つ目は、早口言語症(クラタリング)です。ガイドラインは、幼児期に発達性吃音と見分ける必要がある状態・併存を疑う状態として、構音障害(発音を正しく作れない状態)、言語発達遅滞(ことばの育ちの遅れ)、早口言語症、知的障害などを並べています。早口言語症は、吃音の中核症状とは違う、誰にでもある範囲の言いよどみのほうが目立ち、話す速さが速いか不規則に速くなる衝動的な話し方で、症状への自覚が少ないという特徴があります。吃音と併存して生じることが多く、対応が異なる部分があるので見分ける視点は重要ですが、幼児期に確定診断することは難しく、多くは10歳頃から鑑別診断が可能になる、とされています。ダウン症との関係では、ガイドラインが「比較的高い併存率を示す知的障害はダウン症候群である」と述べる箇所で引用文献に挙げている一つが、ダウン症の早口言語症を扱った2008年の報告です。ただし、ダウン症のある人のどのくらいが早口言語症なのかは、ガイドラインの本文には書かれていません。構音障害・早口言語症と吃音の見分け方そのものは構音障害と吃音の違いの記事にまとめています。
つまり、ダウン症のある子の話しにくさを前にしたとき、候補は一つではありません。発達性吃音、早口言語症、ことばの発達そのものの途中にある言いよどみ、発音の育ちの問題——ガイドラインが幼児期に見分ける必要がある状態として並べているのは、この四つを含む一覧です。どれに当たるかは、印象で決めるものではなく、専門職の評価で分けるものです。
「幼児の吃音は多くが自然に治る」は、ダウン症のある子にも当てはまるのか
一般の幼児吃音について、ガイドラインは、好発時期は2〜3歳で、自然に治る割合は70〜80%と高く、吃音が始まってから2〜3年のあいだに治ることが最も起こりやすい、と書いています。「様子を見ましょう」という助言の根拠は、ここにあります。
では、この前提を支えている研究は、誰を対象にしていたのでしょうか。ブラジルの大学の研究者が、就学前の子どもの吃音と早口言語症について、リスク要因とふるい分けの方法を扱った2020〜2025年の研究を集めて整理した文献調査(範囲を地図のように描き出す手法で、スコーピングレビューと呼ばれます)があります。2,091件から最終的に11件に絞られたこの調査は、研究を選ぶ条件として、知的障害・神経や運動の障害・ADHD・ASD・21トリソミー(ダウン症)を併せもつ子を扱った研究を除外しています。就学前の吃音の「危ない要因」「ふるい分けの道具」は、ダウン症のある子を外した集団の上で作られている、ということです。
ガイドラインの側にも、同じ向きの但し書きがあります。積極的な介入を始める時期について、ガイドラインは、年少組までは経過観察的な支援を基本とし、年中組では開始を検討し、年長組では開始を推奨する、という一般の目安を示したうえで、併存する障害またはその疑いがある場合は、吃音に優先して介入を行う必要がある可能性にも注意する、と付け加えています。併存する問題がある場合の原則を扱う設問では、幼児期は吃音も併存する問題も症状や重症度が常に変化する可能性を念頭に置き、必要に応じて再評価を繰り返し、それに応じて優先順位や対応方法も調整する、とされています。
まとめると、「自然に治る」の前提がダウン症のある子にも当てはまるかどうかを示した資料は、この記事が引ける範囲にはありません。言えるのは三つです。一般の目安の元になった研究がダウン症のある子を除いていること。吃音の始まる時期そのものがずれうること。そして、併存がある場合は再評価を繰り返す前提で対応が組まれること。「様子を見ましょう」と言われたあとに何を記録して次の面談に持っていくかは、小児吃音外来の記事にまとめています。
大きな診断名の影で、吃音は記録に残りにくい
先ほどのドイツの研究は、限界の節で率直なことを書いています。診断コードからは、主たる障害と副次的な障害を区別できない。たとえば水頭症や染色体の異常が重い子どもでは、吃音や早口言語症が目立つ障害として取り上げられないままになる可能性が高い、と。
同じ研究の別の表は、その構造を数字で見せています。ダウン症の診断は、吃音の診断がある子よりも、「ことばの発達の障害」(発音やことばの遅れを指す診断の区分)の診断がある子のほうにずっと多くついていました。男の子で0.49%(加入者全体の7.08倍)、女の子で0.61%(11.53倍)です。吃音の診断がある子では、前の節で見たとおり0.17%・0.31%でした。記録の上では、ダウン症のある子の話しことばの困りごとは「ことばの発達の障害」という名前で置かれやすく、「吃音」という名前では置かれにくい——著者らの限界の記述と合わせると、そう読めます。
吃音が医療の記録に残りにくいこと自体は、別の研究でも確かめられています。アメリカのヴァンダービルト大学の病院で、診断の請求コードだけを手がかりに電子カルテから吃音の記録を拾い出したところ、約9万3千件の記録から返ってきた発達性吃音はわずか90例(0.01%)で、人口の中で期待される1〜3%を大きく下回っていました。著者らはその理由を三つ挙げています。吃音の評価と治療を行うのは医師ではなく言語聴覚士で、その多くが公立学校や民間のクリニックで行われるため、記録が病院のカルテに入らないこと。吃音は受診の目的とは別のことが多く、記録に値しないと判断されがちなこと。そして、吃音は変動するので診察のあいだ出ないこともあり、本人が話し方について尋ねられない限り気づかれないことです。
ダウン症のある子の家族にとって、これは他人事ではありません。ダウン症で通っている病院や療育の場でどもりのことを聞かれなければ、それは記録に残りません。診察の短い時間のあいだ、たまたま出ないこともあります。ガイドラインは医療者に向けて、短時間の診療場面では吃音の症状を示さないことが多いが、保護者は心配して来院しているので、安易に「吃音なし」「心配なし」と決めつけないよう求めています。そして経過観察の期間には、家庭での日々の吃音の症状を記録してもらい、面談ではその記録をもとに症状の変化を評価する、としています。大きな診断名の影で見えにくくなるものを見えるようにする材料は、家庭の記録になります。
相談先と、目標の置き方——「治す」より「伝わる」
相談先から整理します。ガイドラインは、「吃音かな?」と思ったときにつなぐ先として、幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する発達や言語の相談室を挙げ、地域の児童発達支援センターには言語聴覚士が在籍する場合が多く、吃音の相談窓口となっている、と書いています。就学後は小学校の通級指導教室である「ことばの教室」が指導にあたります。ただし、相談に対応する機関の多くは治療には対応できないことも多い、という注意も添えられています。ダウン症で通っている先に言語聴覚士がいれば、そこでどもりのことを別の項目として伝えるところから始められます。日本には吃音の専門家の認証や登録の仕組みがまだ無い、というのもガイドラインの記述です。
次に、複数の困りごとがあるときの原則です。ガイドラインは、それぞれの問題に対して並行して対応するのが原則だが、併存する問題のために吃音への対応が難しい場合、あるいはその逆の場合は、問題の間で優先順位をつけ、併存による困難を軽減する方法を工夫するか妥協点を探る、としています。
そのうえで、知的障害が併存する吃音への対応を扱う設問が、この記事の中心になります。ガイドラインは、発達年齢(発達の水準を年齢で表したもの)と生活年齢(実際の年齢)の双方、吃音の重さ、そして自己発話認識力(自分の話し方に気づく力)の程度を考慮し、知的障害の面で必要と考えられる自立支援や、本人の生活や能力に合ったコミュニケーションスタイルの維持を図りつつ、発話技能の向上の可能性を検討する、と示しています。非流暢性(なめらかに話せないこと)を改善する技能を身につけられる可能性がある場合は、その時点での目標設定から始め、方法は併存症のない発達性吃音への対応に準じるが、ことばの理解の面への配慮に留意する、とされています。
目標は一律ではありません。ガイドラインは、目標は吃音と知的障害それぞれの重さによって大きく異なるとして、9人の子どもの例を使った概念モデルを示しています。吃音よりも知的障害の程度が重い場合は自立支援やソーシャルスキルの獲得が優先目標になり、吃音への対応が可能な水準と判断できるなら発話技能の習得を優先目標にしてもよい、という考え方です。発話技能の習得を目標にできるかの目安として、会話中にアイコンタクトが可能であること、発声や動作の模倣ができること、簡単な指示が理解できること、の三つが挙げられています。
そして、この設問の留意点にこう書かれています。発話技能の習得を目標にした場合にも、言語や発話への介入・目標達成にこだわるのではなく、コミュニケーションや、非言語を含むコミュニケーションの道具の幅を広げていくことが大切である。発話の改善はゆっくりであっても可能であることを念頭に置いて対応する。課題の例としては、絵カードで物や動物の名前を言う、物の使い方をまねる、本を読む(字が読めない場合は絵を描く)といった、ことばの理解とやりとりを促す活動が挙げられ、通常は環境調整法(周りの人の接し方や場面のほうを変えること)から始めるとされています。
「治す」より「伝わる」——この記事の言い方はここから取っています。ガイドラインが置いている目標は、話し方を直すことではなく、伝える手段の幅を広げることで、その中に話す技能の向上が含まれる、という順序です。家庭でのことばのやりとりの整え方は子どもの吃音への対応の記事に、発達障害全般との併存の考え方は吃音と発達障害の関係の記事にまとめています。
「ダウン症と吃音」で陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 −「ダウン症だから、どもるのは当たり前」で、吃音を別の項目として見なくなる
染色体の異常が重い子どもでは、吃音や早口言語症が目立つ障害として取り上げられないままになる可能性が高い、とドイツの研究は自らの限界として書いています。吃音は診察のあいだ出ないこともあり、尋ねられなければ記録に残りません。ガイドラインも、短時間の診療で症状が出ないからといって「吃音なし」と決めつけないよう医療者に求めています。家庭で気づいた場面を書き留めておくと、相談のときに「ダウン症の特徴」とは別の項目として伝えられます。
落とし穴2 − 一般の幼児吃音の目安を、そのまま当てはめる
「2〜3歳で始まり、多くが数年で治まる」という目安の元になった研究は、ダウン症のある子を対象から外しています。ガイドラインも、ことばの発達の遅れに伴って吃音が始まるのが学齢期以降になることがあると書いており、対応は暦年齢ではなく言語の発達年齢に応じたものになるとしています。併存がある場合は、症状も重さも変わりうることを前提に再評価を繰り返す、というのがガイドラインの原則です。
落とし穴3 −「なめらかに話せること」だけを目標にする
知的障害が併存する吃音について、ガイドラインは、言語や発話への介入・目標達成にこだわるのではなく、非言語を含むコミュニケーションの道具の幅を広げていくことが大切で、発話の改善はゆっくりであっても可能であることを念頭に置くよう求めています。目標は吃音と知的障害それぞれの重さで大きく変わり、一律に決まるものではありません。まずは、どんな場面で・どんなふうに話しにくいかを書き留めることから小さく始め、言語聴覚士のいる医療機関や児童発達支援センターに相談できる場合は、そちらが確実です。
よくある質問
ダウン症のある子は、吃音が多いのですか?
多いとされています。日本吃音・流暢性障害学会は、必ず起きるわけではないが、ダウン症や早口言語症では吃音を生じる人がそれらの障害がない人より多いと解説しています。幼児吃音臨床ガイドラインも、ダウン症では少なくとも15%以上に吃音の併発が報告されていると述べていますが、その根拠は1966年と1973年の報告です。日本の3歳児の調査では該当する子が1人しかおらず、意味のある解釈はできなかったと報告されています。
ダウン症の子のどもりは、発達性吃音と同じものですか?
同じと言い切れる資料はありません。ガイドラインは、ダウン症では単なる知的障害や発達性吃音とは異なる要因もある可能性があると書いています。始まる時期もずれることがあり、ことばの発達に遅れがあると吃音が始まるのが学齢期以降になることがあるとされています。早口言語症や、ことばの発達の途中の言いよどみ、発音の問題と見分ける必要もあり、それは専門職の評価で分けるものです。
幼児の吃音は自然に治ると聞きました。ダウン症の子にも当てはまりますか?
当てはまるかどうかを示した資料は、この記事が引ける範囲にはありません。一般の幼児吃音では自然に治る割合が70〜80%と高いとされていますが、就学前の吃音のリスク要因を整理した研究のまとめは、ダウン症を併せもつ子を扱った研究を除外しています。ガイドラインも、併存する障害やその疑いがある場合は吃音に優先して介入が必要な可能性に注意し、再評価を繰り返すよう求めています。
どこに相談すればいいですか?
幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学教育学部に付属する相談室、言語聴覚士が在籍する地域の児童発達支援センターが挙げられています。就学後はことばの教室が指導にあたります。ただし、相談に対応する機関の多くは治療には対応できないことも多いとされています。ダウン症で通っている先に言語聴覚士がいれば、そこでどもりのことを伝えるところから始められます。
訓練では、何を目標にするのですか?
一律ではありません。ガイドラインは、発達年齢と生活年齢の双方、吃音の重さ、自分の話し方に気づく力を考慮し、本人の生活や能力に合ったコミュニケーションスタイルを保ちながら、話す技能を伸ばせるかを検討するとしています。目標は吃音と知的障害それぞれの重さで大きく異なり、言語や発話への介入にこだわるのではなく、非言語を含む伝える手段の幅を広げることが大切で、発話の改善はゆっくりであっても可能とされています。
まとめ
- ダウン症のある人に吃音が多いことは、学会とガイドラインの両方が書いている。ただし「15%以上」の根拠は1966年と1973年の報告で、日本の3歳児の調査では該当が1人しかおらず解釈できなかった。
- ドイツの保険データでは、吃音の診断がある子のうちダウン症の診断もある子は男の子0.17%・女の子0.31%で、全加入者より多い。ただし「ダウン症のうち吃音」とは向きが逆で、人数も少なく、著者らは探索的な研究と位置づけている。
- ダウン症のある子の吃音は、始まる時期が学齢期以降にずれることがあり、単なる知的障害や発達性吃音とは異なる要因もある可能性がある。早口言語症との見分けは幼児期には難しい。
- 「幼児の吃音は多くが自然に治る」の目安を作った研究は、ダウン症のある子を対象から外している。診断名が大きいと吃音は記録に残りにくく、家庭の記録が材料になる。
- 相談先は言語聴覚士のいる医療機関や児童発達支援センター。目標は「なめらかに話せること」に固定されず、伝える手段の幅を広げる中で話す技能の向上を検討する。発話の改善はゆっくりであっても可能とされている。
