まず結論から
- 吃音の分野でいうシャドーイングは、語学の勉強法ではなく、青年期・成人の言語訓練のひとつとして挙げられている方法です。
- 公的資料の書きぶりは、適切な速度の発話でスピーチ・シャドーイングを3ヶ月程度続けると、最初の音が出てこないまま固まる状態(この資料では「阻止(ブロック)」、一般には「難発」と呼ばれます)が解消する症例もある、という水準です。万人に効くと確かめられた方法ではありません。
- 一方、聞こえ方や話し方の条件を変えると、その場のどもりが減ることは実験で確かめられています。吃音のある9人を対象にした実験では、自分の声を少し遅らせて返す条件と、声の高さを変えて返す条件で、通常の速さでも速い速さでも吃音の頻度が、偶然では説明しにくい差として(統計的に有意に)減りました。
- 子どもの場合は事情が違います。学童期には、みんなで声をそろえて読むこと(斉読)やリズムに合わせた朗読が、なめらかに話しやすい状態を引き出しやすいため、これで話すことに自信を持ってもらう訓練がよく行われるとされています。
- すべての患者に一様に効く治療法はありません。治療の中心は、周りの人の接し方や場面のほうを変えること(これは「環境調整」と呼ばれます)、言語訓練、カウンセリング、心理療法や行動療法で、その人に合わせて組み合わせるのが基本です。
ただし、ここまでで確かめられているのは「その場で話しやすくなる条件がある」ところまでで、シャドーイングそのものの効き目が大勢の人で確かめられているわけではありません。合わない・つらいと感じたら中止して、言語聴覚士など専門家に相談してください。
まず、英語学習のシャドーイングとの違い
シャドーイングとは、一般には、聞こえてくる音声を、少し遅れて追いかけるように、そのまま声に出して復唱していく練習のことだと説明されます。影(shadow)のように音声を追うことから、こう呼ばれます。この呼び方や中身の説明は、この記事で参照している公的資料や研究が定義しているものではありません。
語学のシャドーイングは、外国語の音声を追いかけて、発音・リズム・スピードを身につけることが目的です。「シャドーイング 吃音」で検索したときに語学系の記事ばかり出てくるのは、この用法のほうが圧倒的に多いからです。
一方、吃音の分野でのシャドーイングは、目的が語学の上達ではありません。公的資料は、青年期・成人の治療の項で、速度が適切な発話を対象にスピーチ・シャドーイングを3ヶ月程度継続して行うと、阻止(ブロック)の解消がみられる症例もある、と紹介しています。同じ言葉でも指しているものが違う、と最初に切り分けておくと、情報を集めるときに迷いません。この記事で扱うのは、後者のほうです。
音読だけは、言い換えが効かない
吃音のある人の多くが、話す場面ごとに違う苦しさを語ります。そのなかで、教室の音読は特別な位置を占めています。理由は、はっきりしています。
当事者の声(名義 ゆーた・幼少期から吃音。個人ブログ note)
始めに言葉が出づらいなと感じたのは幼稚園の時でした。
小学生になるとその症状は悪化していき、学校の国語の音読の時間は苦痛でした。
決まった文章をみんなの前で一語一句正確に読まないといけないと思うと、声が出なかったです。
それでもなんとか吃りながら声に出していました。
幼稚園のころから言葉が出づらく、小学校に入ってからは国語の音読の時間は苦痛だった、と本人は書いています。同じ記事のなかで、中学の1分間スピーチでは、実際に書いてきた文章ではなく言いやすい言葉に置き換えて発表していた、とも振り返っています。置き換えられる場面と、置き換えようのない場面がある——その差が、音読という課題の性質そのものです。そして学会の解説は、この経験が積み重なったときに何が起きるかを書いています。
出典: 言葉が伝えられないもどかしさ・・・(note)(台帳: V0033)
日本吃音・流暢性障害学会の解説は、学齢期について、吃音をからかわれたり、発表や音読で思ったようになめらかに話せない経験をすることで、吃音を否定的にとらえ、自分自身もマイナスに捉えるような認識が起こってくると、最初の音が出しにくくなる難発が強くなったり、言い換えの工夫をしたりするなど、吃音の状態が悪化していくことにつながる場合がある、と述べています。
発達性吃音の研究プロジェクトの解説も、同じ時期に起きる循環を説明しています。吃る不安があると発話という行為が意識的になり、自動的に行うことが難しくなる。そのためになめらかに出なくなり、その結果さらに発話が意識的になる——という悪循環です。音読は、順番が決まっていて、読む言葉も決まっていて、しかも全員が聞いている。この循環がいちばん回りやすい条件がそろっています。
一人だと読めるのに、教室だと声が出ない
練習の話に入る前に、どうしても先に置いておきたいことがあります。家でうまくいったことが、そのまま教室で起きるとは限らない、という点です。
当事者の声(吃音歴40年超・福祉業界で約20年、事業所責任者。自助団体メディアの体験談)
吃音を持っている人誰もが最も苦しいと感じるのは、自己紹介と音読だと思います。
小学校の担任の先生は、日付と出席番号をかぶせて生徒に音読をさせました。事前に自分が音読する日が分かるのです。本当に地獄でした。
前日に泣きながら布団の中で練習したこともありました。全然吃りませんでした。しかし、みんなの前で音読すると吃ってしまいました。
担任は、その日の日付と同じ出席番号の生徒に音読をさせた。だから、自分の番が来る日が前もって分かってしまう。前の晩、布団のなかで泣きながら読む練習をした——そのときは、まったく吃らなかった。翌日、教室で音読すると吃った。本人は、汗が止まらず、くすくす笑いが聞こえたとも書いています。一人の練習と教室とで、いったい何が違ったのか。神経生物学の総説が、この差そのものを研究の主題として扱っています。
出典: 私の吃音との向かい方(HAPPY FOX・NPO法人日本吃音協会)(台帳: V0067)
この総説は、よく知られた現象として、人に向けてではない場面では吃音のある人もなめらかに話せることを挙げ、声に出した独り言には吃音が出ないとしています。反対に、人や聴衆に向けられた発話、あるいは何かを伝えることを目的とした発話では吃音が現れ、症状の重さは、誰に向かって話しているかという文脈と、時間の切迫によって変わるとされています。
そのうえで著者らは、「話すときには吃音が出るのに歌うときには出ないのはなぜか」「伝えようとする場面では出るのに、そうでない発話では出ないのはなぜか」を、まだ解けていない謎として挙げています。つまりこれは、原因がはっきり分かっている現象ではありません。ただ、「一人で練習したときの手ごたえは、そのまま教室での結果にはならない」という当事者の実感は、研究の側でもよく知られた現象として共有されている、ということです。練習の効き目を、本番の場面での結果だけで判定しないほうがいい理由が、ここにあります。
「お手本をまねる」という練習のかたち
では、練習として何をするのか。シャドーイングの中身を、当事者の言葉から見ていきます。
当事者の声(名義 Kay・幼少期から吃音/現在も言語聴覚士のもとで訓練中。自助団体メディアへの寄稿)
それは、誰かが話しているときの真似をしてみるということです。
話す際に、吃ってしまう自分自身へ意識が向いてしまうと、余計に発話しづらくなってしまうと思います。
そこで、音読の上手な友達や、芸能人などの話し方を真似してみると良いのではないかと思います。
小学校の音読では、最初の文字が言いやすい段落で順番が回ってくることを祈り、どうしても出ないときは漢字が読めなくて考えているふりをしてしのいだ——同じ記事には、そう書かれています。その人が、当時の自分にアドバイスするとしたら何を勧めるかと考えて挙げたのが、この「誰かの真似をしてみる」でした。文章の終わりのほうでは、いま自分は言語聴覚士の助言のもとで、いつもよりゆっくりした速度で音読をする練習を続けている、とも書いています。公的資料は、青年期・成人の項でスピーチ・シャドーイングを挙げています。手本の話し方に乗って声を出すという点では、この「誰かの真似をしてみる」と発想が似ています(本記事の整理)。
出典: タイムマシンに乗って当時の自分に教えたい!音読時の不安解消法(HAPPY FOX・NPO法人日本吃音協会)(台帳: V0219)
公的資料が書いている目安は、次の2つだけです。ひとつは速度が適切な発話を対象に行うこと。もうひとつは3ヶ月程度継続すること。これで阻止(ブロック)の解消がみられる症例もある、とされています。速く追いかけることが目的ではない、という点がここに含まれています。
同じ資料には、学童期の項に別の書き方も出てきます。みんなで声をそろえて読む斉読や、リズムに合わせた朗読は、なめらかに話しやすい状態を引き出しやすいので、これによって話すことに自信を持ってもらう訓練がよく行われる、というものです。手本や他の人のペースに乗るという発想は、大人の訓練と子どもの訓練で共通しています。
ただし、期間の目安が示されているのはシャドーイングだけではありません。同じ資料は、頭の中で話す場面を思い描く練習を中心にした方法(メンタルリハーサル法)について、2年程度かかることと、実施できる臨床家の数が少ないことを問題として挙げています。方法によって、かかる時間も、受けられる場所の多さも違います。
「ゆっくり」は、何をゆっくりにするのか
「適切な速度」と言われても、具体的に何をどうするのかは分かりません。ここは、当事者の書き方と研究の書き方が、めずらしくぴたりと重なるところです。
当事者の声(筆名 砂張五・難発/28歳ごろにほとんど気にならなくなったと自述。個人ブログ note)
YouTubeで「この人の喋り方聞き取りやすいな」と思う人の喋りを、同じスピードで復唱してみると、普段の自分の話す速さが速いことに気付く。それを自分の速さとして植え直すイメージだ。何かのモノマネをするときは吃りにくいことがあるが、それは自分の速さで喋っていないからだと俺は解釈している。
聞き取りやすいと感じた人の話し方を、同じ速さで復唱してみる。すると、普段の自分がどれだけ速く話しているかに気づく——本人はそう書いています。この人は、中学生から22歳ごろが最も重く、28歳ごろにはほとんど気にならなくなったと自ら記しています。この復唱は、自分に最も効果があった「話すスピードを極端にゆっくりにすること」のやり方として書かれています。ただしその手順は、自分で速さを落とそうとするのではなく、手本の速さに自分を合わせ直す、という順序です。あくまで一人の実感として書かれたもので、誰にでも効く方法として述べられているわけではありません。では、速さを落とすと吃音が減るのはなぜなのか。発話の神経回路をコンピュータ上に再現したモデル研究が、この点を扱っています。
出典: 吃音の苦しみを壊した話(note)(台帳: V0066)
このモデル研究では、動きの速さを半分にすると、聞こえた音と目標の音とのずれが小さくなり、その結果として音・音節の繰り返しが減ることが、シミュレーション上で確かめられています。
そのうえでこの論文は、「ゆっくり話す」という指示の受け取られ方に問題があるとも指摘しています。先行研究を引きながら、吃音のある人は語そのものを伸ばすより、語と語の間の休止を長くするほうを選びがちだと述べています。だからこそ、多くの吃音の訓練プログラムでは、休止ではなく音そのものを引き伸ばすやり方を教えるとされています。同じ「ゆっくり」でも、中身が違うということです。
もうひとつ、速さについて押さえておきたい実験があります。音読の課題で5%以上のなめらかでない発話が出た吃音のある9人が、各300音節の文章を8つ音読するあいだ、自分の声の聞こえ方を4通り(そのまま・雑音を重ねる・少し遅らせて返す・高さを変えて返す)に変え、さらに通常の速さと速い速さの2通りで読んだ、という実験です。
結果は、少し遅らせて返す条件と、高さを変えて返す条件で、通常の速さでも速い速さでも吃音の頻度が有意に減った、というものでした。著者らはここから、聞こえ方を変えて話しやすさが増すのに、話す速さを落とすことは必ずしも必要ではない、と述べています。そして、話しやすさが増す背景には、自分の声が耳に返ってくる聞こえ方を変えることと、発話のやり方そのものが変わることという、互いに関係し合う2つの要因があるのではないかと提案しています。
学校の音読は、どう頼めばいいか
ここまでは本人が自分でできることでした。しかし、教室の音読は本人だけでは動かせません。何を頼めばいいのか、当事者自身が具体的に書き残しています。
当事者の声(名義「派遣 優@吃音」。自助団体メディアの体験談)
中学生時代のあの日、先生が「じゃあここは全員で読もう。」と言ってくれていたら、あんなに学校を休むことはなかっただろう、もっと楽しく、笑顔で中学校生活を送っていただろうと思います。
小学4年のある授業中に、いちばん仲のよかった近所の子に話し方を真似され、教室中が笑った。中学では、その日の日付と同じ出席番号の生徒が読むことになり、15日は本人の番だった。以後、5日・15日・25日にも指名されるようになり、前の晩から不安に耐えられず、5のつく日を休むようになった。休みが目立たないようにと前後の日も休み、やがて2週間も休むようになった——本人はそう書き残しています。振り返って挙げたのは、免除でも特別扱いでもなく、「全員で読む」という一言でした。学会の解説も、本人が望む場合には学校に配慮を求めることを挙げています。
出典: 音読中に吃音を笑われて学校を休んだ中学生時代。1人音読の必要性を疑問視(HAPPY FOX・NPO法人日本吃音協会)(台帳: V0045)
「全員で読む」は、思いつきの願いではありません。公的資料は、学童期の訓練として、斉読や、リズムに合わせた朗読はなめらかに話しやすい状態を引き出しやすく、これによって話すことに自信を持ってもらう訓練がよく行われる、と書いています。教室で一人だけ読み方を変えるのではなく、読む形そのものを変えるという頼み方です。
学会の解説は、中高生以上について、本人が望む場合には、学校に対して苦手な場面(たとえば発表や音読)への配慮や支援を求め、本人が安心して学校生活を送れるように環境を整えることが大切だ、としています。頼み先が分からないときは、幼児・学齢期であれば、小児を扱う言語聴覚士や、ことばの教室の教員に相談するよう勧められています。
症状が重い場合には、別の選択肢も挙がっています。公的資料は、重症では自分の声を少しだけ遅らせて耳に返す装置(遅延聴覚フィードバック、略してDAF)を授業中に使うのも選択肢になるとしています。ただしこの装置は、付けているあいだだけ効果があるとされており、数か月以上にわたって使い続けると吃音の頻度そのものが下がるという研究もある、という書き方です。
どこまで期待していい?「症例もある」という水準
シャドーイングが吃音に良い可能性は書かれています。ただ、期待値は正しく持っておいたほうが、あとで落ち込まずに済みます。
まず、公的資料は、すべての患者に一様に効く治療法は存在しない、とはっきり述べています。治療の中心は環境調整・言語訓練・カウンセリング・心理療法や行動療法で、その人に応じて、しばしば組み合わせて選ぶと、有効率がある程度は得られることが多い、という書き方です。シャドーイング単独ですべてが解決する、という位置づけではありません。
次に、シャドーイングについての記述はあくまで、阻止(ブロック)の解消がみられる症例もある、という水準です。何人中何人で、どのくらい減ったか、という数字は示されていません。青年期・成人では、言語訓練の組み合わせだけで改善する症例は少なく、過半数では、人前で話す場面などに強い不安が続く状態(社交不安障害)など、心の面を評価して対応することも必要になるとされています。
装置のほうも同じです。成人については、症状が重い場合にはDAFも選択肢になるが、効果があるのは半数程度である、と書かれています。装置と聞こえ方の話をもう少し詳しく知りたい方は、別記事の聴覚フィードバックと吃音にまとめてあります。
もうひとつ、力の入れ方についての注意があります。学会の解説は、幼児・学齢期の子どもについて、吃音を恥ずかしいと思ってなんとか吃音を出さないようにと力を入れてもがくと、吃音は悪化するとしています。公的資料も、考え方や行動の癖に働きかける心理療法(認知行動療法)を用いた治療では、吃るか吃らないかにはこだわらず、コミュニケーションを楽にすることを目標にするほうが、発話という行為そのものから注意が外れるので、かえって発話の症状も改善しやすいと述べています。練習を「吃らないための努力」に変えてしまうと、向きが逆になりかねない、ということです。
どこに相談すればいい?(受診科・相談先)
シャドーイングを含め、吃音の練習は自己流で始める前に、専門家に相談するのが基本です。相談先として名前が挙がっているのは、次の2つです。
- 言語聴覚士:学会の解説は、幼児・学齢期については、小児を扱う言語聴覚士に相談するよう勧めています。中高生以上でも、本人が治療を希望する場合には、言語聴覚士による発話訓練を受けるという選択肢があるとされています。
- ことばの教室:学齢期の子どもについては、ことばの教室の教員も相談先として挙げられています。
幼児期については、意識的に発話を修正することが難しいため、まず環境調整を行うとされています。そのうえで、悪化が見られる、吃音が出始めてから1年半から2年以上経過している、就学の1年前までに治らない、吃音の家族歴などの危険因子がある——こうした場合には訓練を行う、というのが公的資料の書き方です。
大人の場合、話しづらさで困っている、電話や面接などの場面で支障が出ているときは、一人で抱えずに相談してください。就労や進学の場面では、障害者差別解消法により、発表や電話応対の免除、試験等での面接時間の延長といった、困りごとに合わせて対応を変えてもらうこと(合理的配慮)を求めることができます。ただしその際に、医師の診断書や言語聴覚士の報告書の提出などが求められる場合があるとされています。
シャドーイングで陥りがちな3つの落とし穴
落とし穴1 − 速く・長くやればいいと思ってしまう
公的資料が書いているのは「適切な速度の発話」を対象に行うことで、速く追いかけることではありません。しかも「ゆっくり」の中身も分かれます。語と語の間の休止だけを長くするのではなく、音そのものを引き伸ばすやり方を訓練プログラムは教えるとされています。無理に速く追いかけたり、長時間やりすぎたりすると、負担だけが増えます。
落とし穴2 − 「吃らないため」の努力に変えてしまう
力を入れてなんとか吃音を出さないようにともがくと、かえって悪化するとされています。吃るか吃らないかにはこだわらず、コミュニケーションを楽にすることを目標にするほうが、発話そのものから注意が外れてかえって改善しやすい、という考え方も示されています。どの人にも一様に効く方法はないので、シャドーイングを「唯一の方法」と決めつけないでください。
落とし穴3 − 変化がわからないまま続けてしまう
吃音は日によって出やすさに波があり、練習の手応えも見えにくいものです。しかも、一人での練習と人前とでは条件が違います。人に向けてではない発話では吃音が出にくいことが、よく知られた現象として挙げられているからです。話した状況や調子を日々書き留めておくと、練習の場と本番の場を分けて見返せるようになり、相談のときの材料にもなります。
まずは日々の発話を記録することから小さく始め、続けられる範囲で取り組むのが現実的です。言語聴覚士など専門機関に相談できる場合は、そちらが確実です。
よくある質問
シャドーイングをすれば吃音は治りますか?
「必ず治る」とは言えません。公的資料は、すべての患者に一様に効く治療法は存在しないとしています。シャドーイングについては、適切な速度の発話で3ヶ月程度続けると阻止(ブロック)の解消がみられる症例もある、という水準の書き方です。期待しすぎず、専門家と相談しながら取り入れるのが安全です。
英語学習のシャドーイングと同じですか?
言葉は同じですが、目的が違います。語学のシャドーイングは発音やリスニングのための練習で、吃音の分野では青年期・成人の言語訓練のひとつとして挙げられています。検索で語学の記事ばかり出てくるのは、この違いによるものです。
どれくらい続ければいいですか?
公的資料では、適切な速度の発話で3ヶ月程度続けることが目安として挙げられています。ただし、合う音源や1回あたりの時間は人によって異なります。同じ資料は、頭の中で場面を思い描く練習を中心にした方法だと2年程度かかるとも書いており、方法によって期間はまったく違います。自己流で決めず、専門家に相談してください。
子どもにもシャドーイングをさせていいですか?
公的資料がスピーチ・シャドーイングを挙げているのは青年期・成人の項です。幼児期は意識的に発話を修正することが難しいため、まず環境調整を行うとされています。学童期については、みんなで声をそろえて読む斉読や、リズムに合わせた朗読で話すことに自信を持ってもらう訓練がよく行われるとされています。年齢や状態に合うかは、専門家に相談してください。
学校の音読が苦しいとき、何を頼めばいいですか?
学会の解説は、中高生以上について、本人が望む場合には学校に対して苦手な場面(たとえば発表や音読)への配慮や支援を求めることを挙げています。公的資料の側には、学童期には斉読や、リズムに合わせた朗読で話すことに自信を持ってもらう訓練がよく行われるという記述があります。相談先としては、小児を扱う言語聴覚士やことばの教室の教員が挙げられています。
まとめ
- 吃音の分野でいうシャドーイングは語学の勉強法ではなく、青年期・成人の言語訓練のひとつとして挙げられている方法です。目安は「適切な速度」で3ヶ月程度で、阻止(ブロック)の解消がみられる症例もあるという水準です。
- 「ゆっくり」の中身は2通りに分かれます。休止を長くするのではなく、音そのものを引き伸ばすやり方が訓練では教えられるとされています。一方、吃音のある9人を対象にした実験では、聞こえ方を変える条件で、速さを落とさなくても吃音の頻度が有意に減りました。
- 一人での練習と教室とでは条件が違います。人に向けてではない発話では吃音が出にくいことが、よく知られた現象として挙げられています。手ごたえを本番の結果だけで測らないでください。
- 学校の音読では、免除ではなく「全員で読む」形が選択肢になります。斉読や、リズムに合わせた朗読は話すことに自信を持ってもらう訓練としてよく行われるとされ、本人が望む場合には学校に配慮を求めることも挙げられています。
- どの人にも一様に効く治療法はないため、自己流で決めずに専門家に相談してください。学会の解説は、幼児・学齢期については小児を扱う言語聴覚士やことばの教室の教員に相談すること、中高生以上で本人が治療を希望する場合には言語聴覚士による発話訓練を受けるという選択肢を挙げています。
