吃音?場面緘黙?|小声・返事が出ない話し方の見分け方と相談先

目次

いつも小さい声でしか話さない。名前を呼ばれても返事が出てこない。人と話すのを避けているように見える。そういう話し方を見て「これは吃音(きつおん)なのだろうか」と思ったとき、たいていはその場で確かめる手立てがないまま終わります。本人に聞くわけにもいかず、調べても「内気」「人見知り」といった言葉に行き着くだけ、ということが起こります。

この記事は、話し方の様子から誰かの状態を言い当てるための記事ではありません。実際の医療の現場が何を手がかりに見分けているのか、見分けが必要な状態として何が挙げられているのか、そして気になったときにどこへ行けばよいのかを順に並べます。拠り所にするのは、発達性吃音の治療法とガイドライン作成に取り組んだ研究班がまとめた幼児吃音臨床ガイドライン2021、国立障害者リハビリテーションセンターの医師が日本耳鼻咽喉科学会会報に書いた総説、そして吃音のある人自身が残した4本の記録です。

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吃音当事者。研究論文と当事者の声をもとに、吃音の情報を出典つきで発信しています。

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の判断に代わるものではありません。気になる症状があるときは、言語聴覚士(ことばの専門職)やことばの教室にご相談ください。

まず結論から

  • 吃音かどうかは、声の大きさや口数ではなく「中核症状」と呼ばれる3つの出方——音や言葉の繰り返し、音の引き伸ばし、声が出ないまま詰まること——が、どのくらいの頻度で出るかで判断されています。
  • その頻度の基準は、検査で数えた中核症状が100文節あたり合計3以上あることとされています。幼児の場合も同じ数え方が示されており、さらに半年程度以上にわたって症状が見られていることを条件とすることがあります。
  • 「言葉が出ない」ように見える状態は吃音だけではありません。幼児期に吃音と見分けが必要な状態として、場面緘黙(かんもく)、チック、自閉スペクトラム症、知的障害、薬の副作用などが並べて挙げられています。
  • 無口・内気に見えることは、原因ではなく結果として起きている場合があります。声を出して参加するのをためらう、あるいはできないことが、周りから内気・引っ込み思案と受け取られ、そのために仲間関係が築きにくくなるという筋道が指摘されています。
  • 「性格がそうだからどもる」という見方は、就学前の子どもで実際に測った研究では支持されませんでした。一方で、吃音のある成人には人前での強い不安を抱える人が多いと報告されています。

ただし、ここに並べたのはすべて現実の人について報告されていることです。作品の中の人物や、それを演じている人に診断名を当てるための材料ではありません。手元に版元の資料が無いため、特定の作品の設定やせりふには立ち入りません。そして見分けの物差しは、自分や身近な人をその場で判定するためのものでもありません。数えるのは検査を行う専門職で、短い時間の診察では症状が出ないことも多いと注意されています。

小さい声で話す人は、声が小さいのではないかもしれない

いつも小さい声で話す人がいます。声量の問題として扱われ、「もっと大きい声で」と言われる場面も多いところです。けれども、小さい声そのものが目的になっていることがあります。中学1年でPTAのバザーの店番をした当事者の記録に、その理由がそのまま書かれていました。

当事者本人の声(2歳で発症したと自己紹介する書き手。NPO法人日本吃音協会が運営するメディアの「吃音の体験談」への一人称の寄稿・2021年)

会場はとても賑やかだったので、声を張り上げても人の話し声や、他のお店の呼び込みの声でかき消されてしまっていました。

太田さんは部活で掛け声を出すこともあり、大きな声を出すことが得意でした。一方で私は吃音があり、自分の声を聞かれないように普段から小さい声で話すようにしていたので、大きい声をだすことが得意ではありませんでした。

混み合った体育館で、二人一組の呼び込みが始まります。片方は部活で声を出し慣れている同級生(記事には仮名として名前が添えられています)、もう片方が書き手です。ここで書かれているのは「声が小さい人」と「声が大きい人」の差ではありません。自分の声を聞かれないように、普段から小さくしていた——つまり小さい声は、長い時間をかけて選ばれた習慣のほうでした。同じ記事には、当時は吃音について誰にも相談できていなかったとも書かれています。声の大きさだけを見ていると、その下にある事情には届きません。実際、吃音の判断に使われている物差しに、声量は入っていません。

出典: 吃音で声が出ない、窮地に立った私を救ってくれた…(HAPPY FOX)(台帳: V0144)

では何を見ているのか。吃音は、呼吸と発声・構音の器官に形の問題や動きの制限が原則として無いうえで、中核症状と呼ばれる出方——音や言葉の繰り返し、音の引き伸ばし、声が出ないまま詰まること(阻止・ブロック)——が生じる発話の障害だと説明されています。診断の基準は、検査で中核症状が100文節あたり合計3以上あることとされています。文節というのは「わたしは/きのう/がっこうで」のように文を区切ったまとまりのことで、およそ100個ぶんの発話の中に3回以上その出方が混じるかどうか、という数え方です。

幼児についても、ガイドラインは同じ基準を示しています。幼児の吃音は、発話に中核症状が100文節あたり3以上見られることで診断されるとされ、あわせて幼児期は吃音でなくても言いよどみがあるので注意が必要だと書き添えられています。この時期の言いよどみがどれくらい違うのかも数値が示されていて、吃音がある幼児のモーラ(拍)の繰り返しの頻度は100文節あたり平均12.0、吃音がない幼児では1.0だったと、ガイドラインが先行研究を引いて報告しています。つまり違いは声の大きさではなく、この出方の多さのほうに現れます。

吃音がある幼児と吃音がない幼児で、モーラ(音のまとまり)の繰り返しの頻度を比べた横棒グラフ。100文節あたりの平均は、吃音がある幼児が12.0、吃音がない幼児が1.0。声の大きさではなく、この出方の多さに違いが現れる。
図1: 見分けに使われているのは声量ではなく、繰り返しの頻度。出典: 「発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」研究班「幼児吃音臨床ガイドライン(第1版)2021」(ガイドラインが小澤ら2016から引く値)。

答えは分かっているのに、返事が声にならない

もうひとつ、外からは同じに見えて中身が違うものがあります。返事をしない子と、返事が声にならない子です。小学校でその只中にいた人が、当時の教室の様子を場面ごとに書き残していました。

当事者本人の声(愛媛言友会の公式サイト「吃音当事者からのメッセージ」に寄稿した20代男性。3名の原稿が並ぶページの1本)

当時、毎朝の健康観察では『はい、元気です』の言葉がでない。前の人から順番に選択問題を『ア』『イ』『ウ』で答えなさいと言われても、『ア』という声さえも詰まって出ない。まわりの友達が小さい声で『正解ア やで』と教えてくれる度に『正解は知っとるや、声がでないんや』と心の中で思っていました。また、視力検査で方向が言えない、日直のスピーチや号令が話せられない、『はい』という返事でさえ声が出ませんでした。無理に出そうとすれば呼吸ができず、過呼吸に近い状態になることも頻繁にありました。

健康観察、選択問題、視力検査、日直の号令——並んでいるのは特別な場面ではなく、学校の一日のどこにでもある手続きです。この書き手は、同じ記事の前半で、小学校で朗読中にどもってクラス全員に笑われたこと、それ以降は最初の言葉が一切出ない型に変わっていったことも書いています。教室の外から見れば「答えられない子」ですが、本人の側には答えが分かっているという意識があり、しかも無理に出そうとすると呼吸のほうが先に苦しくなる。声が出ないという一点だけが共通していても、その内側で起きていることは状態によって違います。だからこそ、見分けが必要な状態がガイドラインで一覧になっています。

出典: 吃音当事者からのメッセージ(愛媛言友会)(台帳: V0223)

幼児期に発達性吃音と見分けが必要な状態、あるいは一緒に起きていることを疑う状態として、ガイドラインは次のように列挙しています——脳の損傷などによる吃音、音のとらえ方の問題、ことばの発達の遅れ、発音の障害、声の障害、話す動作を組み立てられなくなる状態、場面緘黙、チック、トゥレット症候群、話す速さが極端に速くなる状態、脳性麻痺、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、知的障害、薬の副作用など。日本耳鼻咽喉科学会会報の総説も、見分けが必要な状態としてことばの発達の問題、発音の障害、声の障害、チック、場面緘黙、脳の損傷などを挙げています。場面緘黙は、家では話せるのに学校など特定の場面では話せなくなる状態で、この一覧の中に入っています。

幼児期に発達性吃音との見分けが必要な病態・併存を疑う病態としてガイドラインが列挙しているものの一覧。神経原性吃音(脳の損傷などによるもの)、音韻障害、言語発達遅滞、構音障害、発声障害、発話失行、場面緘黙(かんもく)、チック、トゥレット症候群、早口言語症(クラタリング)、脳性麻痺、反復言語(palilalia)、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、知的障害、薬剤副作用。並びは原典の列挙のとおりで、見分けが必要な病態と併存を疑う病態の両方を含む。
図2: 「言葉が出ない」ように見える状態として並べられているもの。出典: 「発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」研究班「幼児吃音臨床ガイドライン(第1版)2021」Q3。

一覧に入っているということは、どちらか一方とは限らないという意味でもあります。場面緘黙を主な困りごととして指導を受け、その場面緘黙が良くなったあとに吃音の問題が表面化した小学2年の男児について、1年3か月の経過を報告した研究があります。その報告では、セラピストとの練習場面では重症度の評定と言いよどみの頻度に明らかな低下が見られなかった一方で、母親との遊びの場面での重症度の評定は下がったとされています。同じ子でも、相手と場面が変わると見えるものが変わる、という記録です。

「無口な人」に見えているとき、何が起きているのか

話す量が少ないことは、外からはいちばん分かりやすい特徴として扱われます。ただ、量が減った経緯は本人の側にしかありません。転職して入った開発の現場で、自分がどう黙っていったのかを書いた記録があります。

当事者本人の声(2008年にIT企業へ転職し客先の開発現場に入ったと記す書き手。NPO法人日本吃音協会が運営するメディアの「吃音の体験談」・2021年)

また、開発現場の雰囲気に圧倒されてしまい劣等感や絶望感に苛まれました。自分は未経験なのに、みんなは経験者ばかりで仕事のできる人しかいないと思ったからです。

この劣等感から無口になり、報連相もできなくなりました。 ビジネス上のコミュニケーション能力が欠如していると判断 されましたが、吃音があったことで自分から積極的に話しかけることが難しかったことも原因だったと思います。

体育館2個分ほどの広さがあったとこの人が書く開発フロアで、質問の回数が減り、報告も相談も止まっていきます。ここで本人が分けて書いているのは、周囲が下した判定と、自分の側にあった事情です。現場からは「話す力が足りない人」として扱われ、後日には吃音は気にしなくていいから質問には3秒以内に答えるように、と言われたことも記されています。外から見えていたのは沈黙だけで、その沈黙が何でできているかは見えていませんでした。学校でも似た筋道が指摘されていて、吃音のある子は集団の場で声を出して参加するのをためらう、あるいはできないことが多いと述べられています。

出典: 吃音が原因で起こった仕事での出来事(HAPPY FOX)(台帳: V0201)

この「見え方」の問題は、研究の側でも正面から扱われています。吃音のある子どもが学校で受け入れられるかどうかが問題になる理由として、彼らは授業や集団の場で声を出して参加することをためらったり、うまく参加できなかったりすることが多いからだ、と説明されています。そしてその結果として内気・引っ込み思案と受け取られ、そう見られることによって仲間関係が築きにくくなり、いじめの標的になりやすくなるのではないか、という筋道が示されています。順番が逆になっている、というのがこの指摘の要点です。内気だから話さないのではなく、話しにくいことが積み重なった結果が内気という印象として外に出ています。

「性格のせい」と言われたとき、それは本当なのか

話し方が「その人の性格」に紐づけられるのは、家庭の中でも起こります。40代の当事者が、子どもの頃に親から返ってきた反応と、その後の自分の変化を続けて書いていました。引用の直前には、自分の親には吃音が無いという一文が置かれています。

当事者本人の声(広島言友会の「体験談」ページに掲載された40代男性。約10年前に当事者会に初めて参加したと記す)

だから、私がどもると「何でゆっくりしゃべらないんだ。あわてなくていいのに・・・」と、情けないような目で見たり、怒ったりしていました。

そのような毎日でしたので、成長するにつれて、「どもることは悪いことであり、恥ずべきことなのだ」という思いが強くなっていきました。

「何でゆっくりしゃべらないんだ」という一言は、どもりを本人の急ぎ方の問題として扱っています。この記録が並べているのは、その扱われ方が毎日続いたあとに、本人の側で「どもることは恥ずべきことだ」という受け止めが育ち、さらにそのあとで会話の量そのものが減っていった、という順序です。引用のすぐ後ろでは、思春期以降は必要最低限の会話しかしない「ネクラなやつ」になったと続きます。その呼び名は、いちばん外側に見えていたものにすぎません。同じ記事の後半では、当事者会に出会って居場所を見つけたところまで書かれています。ここで確かめておきたいのは、性格が先にあったのか、という一点です。就学前の子どもでそれを実際に測った研究があります。

出典: 体験談 3.40代男性(広島言友会)(台帳: V0202)

その研究は、就学前の吃音のある子どもの自然な会話を録って、話す速さと4種類の言いよどみの頻度・長さを測り、保護者が答える質問紙で調べた気質(生まれつきの反応のしやすさや、注意の切り替えやすさ)と突き合わせました。有意な関係が見つかったのは、話す速さと音の引き伸ばしの長さ、話す速さと吃音特有の言いよどみの頻度の2つだけで、気質と吃音の特徴のあいだには関係が見つかりませんでした論文は、この結果は特定の気質を吃音の直接の要因とみなす考え方を支持しない、と述べています。

就学前の吃音のある子ども19人(平均3歳9か月)の自由な会話で測ったピアソンの相関係数の一覧。有意だったのは、話す速さと引き伸ばしの平均の長さが−0.584(p<0.01)、話す速さと年齢が0.557(p<0.01)、話す速さと吃音特有の言いよどみの回数が−0.488(p<0.05)の3つ。有意でなかったのは、話す速さとかたまりの長さ−0.562、話す速さと音・音節の繰り返しの長さ−0.342、話す速さと語をまるごと繰り返す長さ−0.168、話す速さと引き伸ばしが占める割合0.104、引き伸ばしの長さと気質・抑制の制御−0.334、外向性/活発さ0.154、否定的な情動0.128、自分で抑える力−0.064、注意の集中0.008。気質は保護者が答える質問紙で測ったもので、「有意でない」は関係が無い証明ではなく19人では確かめられなかったという意味。
図3: 測った関係のうち、気質とのものはどれも有意ではなかった。出典: Tumanova, Zebrowski, Throneburg & Kulak Kayikci (2011) Journal of Communication Disorders. 表4・表5。

では気質は無関係なのかというと、著者らはもう一歩踏み込んだ見方を示しています。もし気質が関わっているとしても、それはその子のどもり方という細かい特徴に現れるのではなく、自分の吃音にどう反応するかというもっと全体的なところに効いているのではないか、という解釈です。たとえば反応しやすく注意を切り替えにくい子は、特定の話す場面や人の集まる場面を避けるようになるかもしれない、と続けています。性格が原因なのではなく、経験の受け止め方の違いとして現れる、という書き分けです。

不安についても同じ向きの整理ができます。吃音のある成人では、人前で恥をかいたり否定的に見られたりすることへの強い恐れを中心とする社交不安障害が高い割合で見られる、という研究が積み上がっているとされています。吃音のある成人と、年齢と性別の比をそろえた吃音のない成人を比べた研究では、その時点での社交不安障害の割合が吃音のある人で少なくとも40%と推定されています。数字としては大きいのですが、これは不安が先にあって話せなくなったことを示すものではありません。

話し方の様子だけで決められないのは、なぜか

ここまでの材料を、見分けの手順として並べ直します。まず、一度会っただけでは足りません。ガイドラインは、幼児の吃音は変動があり、ごく短い期間で消えることもあるので、相談したときの年齢と症状を確かめながら、半年程度以上にわたって症状が見られていることを条件とすることがあるとしています。同じ理由から、短い時間の診察では症状が出ないことが多いので、安易に「吃音なし」「心配なし」と決めつけないよう医師に注意が向けられています。

次に、その人がどんな言葉で話しているかによっても見え方が変わります。スペイン語と英語を話す吃音のない子どもたちを調べた研究では、全員がスペイン語で話しているときのほうが吃音に似た言いよどみを多く出していました。この研究は、二つの言語を使う子どもの言いよどみは、その複雑さを踏まえて慎重に検討されるべきだと結論しています。話す言語が変わるだけで数え上がる量が動くなら、一回の会話の印象はなおさら物差しになりません。

そして、専門職が見ているのは話し方だけではありません。ガイドラインは、指導や支援につなげるには、発話の症状だけでなく、ことばの力、社会的な側面、気質や情緒の側面まで多面的・包括的に評価する必要があるとしています。実際の評価は、保護者からの情報収集、本人との面談、検査、観察を組み合わせて行われ、一緒に起きている問題の兆候を見逃さないよう調査票に項目を加えることも求められています。ここまでを踏むのが「見分ける」という作業で、話し方の印象を一つ見ることとは別のものです。

気になったとき、どこへ行けばいいのか

年齢によって、勧められている進め方が変わります。幼児では、発症率がおよそ8%、自然に治る割合が70〜80%と考えられており、発症から3〜4年までに大半(7〜8割)が自然に治る一方で、人口比で1%前後の子は学齢期かそれ以降まで続くとされています。この自然に治る割合の高さがあるため、月2回以上の積極的な介入を始める時期は、3歳児クラス(年少組)までは経過観察を基本、4歳児クラス(年中組)では開始を検討、5歳児クラス(年長組)では開始を推奨、と区切られています。早すぎれば自然に治ったはずの子に不要な介入を行うことになり、遅すぎれば就学までに十分な改善を得られない子が出てくる、という両側の理由が書かれています。

「では待っている間は何もしないのか」というと、そうではありません。経過観察の期間にすることとして、保護者が心配しすぎないように資料を渡しながら吃音の知識と関わり方を伝えること、定期的な面談を行うこと、家庭で日々の症状を記録してもらい、その記録をもとに変化を評価することが挙げられています。1年が経つ中で悪化が認められる場合は言語聴覚士につなぐ、という区切りも示されています。3歳から3歳半の健診の時期は発症から半年から1年程度の変動の大きい時期にあたることが多く、「様子を見ましょう」と言われることが多い、という事情も説明されています。記録が残っていれば、その次の面談で見せられるものが増えます。

相談先として挙げられているのは、幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学の教育学部に付属する発達やことばの相談室です。地域の児童発達支援センターには言語聴覚士が在籍する場合が多く、相談窓口になっているとされています。就学後は小学校の通級指導教室である「ことばの教室」などが指導にあたり、就学前の相談を受けている地域もあります。ひとつ注意として、相談に対応している機関の多くは治療には対応できないことも多いと書き添えられています。大人になってから気になった場合も、出発点は同じで、言語聴覚士のいる医療機関が窓口になります。

話し方から見分けようとするとき陥りがちな3つの落とし穴

落とし穴1 − 一度の場面の印象で決めてしまう

症状には変動があり、ごく短い期間で消えることもあるため、半年程度以上にわたって見られていることを条件とすることがある、とされています。短い時間の診察では症状が出ないことが多いという注意も、医師に向けて書かれているほどです。場面緘黙が良くなったあとに吃音が表面化した子の報告では、練習の場面と母親との遊びの場面で重症度の評定の動きが違いました。一度見た様子は、その場面のその日のものにすぎません。

落とし穴2 − 「内気だから話さない」と原因の向きを決める

吃音のある子が集団の場で声を出して参加するのをためらったり、できなかったりすることが、内気・引っ込み思案という受け取られ方につながり、そのことが仲間関係の難しさやいじめの標的になりやすさにつながるのではないか、と指摘されています。就学前の子で測った研究でも、気質と吃音の特徴のあいだに関係は見つかりませんでした。「そういう性格だから」で説明を終えると、順番が逆のまま固定されます。

落とし穴3 − 見分けようとするだけで、記録も相談もしないまま終わる

吃音は診断名をあてる遊びではなく、支援につなげるための入口です。経過観察の期間にすることとして、家庭で日々の症状を記録してもらい、その記録をもとに変化を評価する、という具体的な中身が示されています。相談先も、言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体のリハビリテーションセンター、大学付属の相談室、児童発達支援センター、就学後のことばの教室と一覧になっています。気になったなら、名前を決めるより先に、いつ・どんな場面で起きたかを書き留めるほうが次につながります。

よくある質問

アニメや漫画の登場人物の話し方から、その人物が吃音かどうかは分かりますか?

分かりません。吃音の判断は、音や言葉の繰り返し・音の引き伸ばし・声が出ないまま詰まることという中核症状が、検査で100文節あたり合計3以上あるかどうかで行われています。作品の中の話し方は作り手が選んだ描写であって、検査で数えられたものではありません。作り手が自分から公表している設定があるなら、そこまでは設定として読めます。

小さい声でしか話さないのは、吃音の症状ですか?

声の大きさは吃音の判断に使われている物差しには入っていません。ただし、自分の声を聞かれないように普段から小さい声で話していた、と書いている当事者の記録はあります(台帳: V0144)。声量そのものが症状なのではなく、話しにくさへの対処として小さい声が選ばれていることがある、という関係です。

吃音と場面緘黙は、どう違うのですか?

場面緘黙は、幼児期に発達性吃音と見分けが必要な状態のひとつとして挙げられています。日本耳鼻咽喉科学会会報の総説も、見分けが必要な状態として場面緘黙を挙げています。両方が関わることもあり、場面緘黙で指導を受けた子が、場面緘黙の改善後に吃音の問題が表面化した経過の報告もあります。どちらかに決めるより、専門職に見てもらうほうが確実です。

人見知りな性格だと、吃音になりやすいのですか?

就学前の吃音のある子どもで、気質と言いよどみの型・長さの関係を測った研究では、気質と吃音の特徴のあいだに関係は見つかりませんでした。この結果は特定の気質を吃音の直接の要因とみなす考え方を支持しない、とされています。一方で著者らは、気質がどもり方そのものではなく、自分の吃音にどう反応するかという全体的なところに効いている可能性を挙げています。

気になったとき、どこに相談すればいいですか?

幼児の吃音の治療経験がある言語聴覚士のいる病院やクリニック、自治体の(小児)リハビリテーションセンター、大学の教育学部に付属する発達やことばの相談室が挙げられています。地域の児童発達支援センターも相談窓口になっていることが多く、就学後は小学校の「ことばの教室」などが指導にあたります。相談に対応している機関の多くは治療には対応できないことも多い、という注意も添えられています。

まとめ

  • 吃音の判断に使われているのは、音や言葉の繰り返し・音の引き伸ばし・声が出ないまま詰まることという中核症状と、その頻度(検査で100文節あたり合計3以上)であって、声の大きさや口数ではない。
  • 「言葉が出ない」ように見える状態は複数ある。幼児期に見分けが必要な状態として、場面緘黙、チック、自閉スペクトラム症、知的障害、薬の副作用などが一覧になっている。場面緘黙の改善後に吃音が表面化した経過の報告もある。
  • 無口・内気に見えることは、結果として起きている場合がある。声を出して参加しにくいことが内気と受け取られ、そのために仲間関係が築きにくくなるという筋道が指摘されている。就学前の子で測った研究でも、気質と吃音の特徴に関係は見つかっていない。
  • 一度の場面では決められない。症状には変動があり半年程度以上の期間を条件とすることがあり、話す言語が変わるだけで言いよどみの量が変わることも報告されている。評価は話し方だけでなく、ことばの力・社会的な側面・気質や情緒の側面まで含めて行われる。
  • 幼児では年少組までは経過観察、年中組で検討、年長組で推奨と時期が区切られており、待つあいだは家庭で日々の症状を記録して面談で評価する。相談先は言語聴覚士のいる病院・自治体のリハビリテーションセンター・大学付属の相談室・児童発達支援センター・ことばの教室。

参考文献

  1. 「発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」研究班「幼児吃音臨床ガイドライン(第1版)2021」(plaza.umin.ac.jp/kitsuon-kenkyu)II-1 定義/III Q1・Q2・Q3・Q4・Q5・Q15・Q17・Q22・Q23
  2. 森浩一(国立障害者リハビリテーションセンター)「吃音 (どもり) の評価と対応」日本耳鼻咽喉科学会会報 123巻9号(2020年)
  3. 宮本昌子ほか(2021)「吃音を伴う場面緘黙児童への介入経過 — Lidcombe Program を適用した効果の検討」障害科学研究 45(1)(J-STAGE)
  4. Byrd et al. (2015) The disfluent speech of bilingual Spanish-English children: considerations for differential diagnosis of stuttering. Lang Speech Hear Serv Sch.
  5. Tumanova, Zebrowski, Throneburg & Kulak Kayikci (2011) Articulation rate and its relationship to disfluency type, duration, and temperament in preschool children who stutter. Journal of Communication Disorders.
  6. Davis, Howell & Cooke (2002) Sociodynamic relationships between children who stutter and their non-stuttering classmates. J Child Psychol Psychiatry.
  7. Iverach & Rapee (2014) Social anxiety disorder and stuttering: current status and future directions. Journal of fluency disorders.
  8. Blumgart et al. (2010) Social anxiety disorder in adults who stutter. Depression and anxiety.

当事者の声の出典: V0144(NPO法人日本吃音協会 SCW のメディア「吃音の体験談」)/ V0223(愛媛言友会「吃音当事者からのメッセージ」)/ V0201(同 SCW のメディア「吃音の体験談」)/ V0202(広島言友会「体験談」)。いずれも公開記事。引用は原文どおり。仮名の可能性が指摘されている姓は引用範囲に含めていない。

更新履歴: 2026-09-12 公開/2026-09-12 S0066 の繰り返し頻度の語を原典どおりモーラに訂正・引用値であることを明示